更新日: 2019.06.28 セカンドライフ
人生100年時代における老後不安を解消する為の準備
しかし、お子さまが独立される時期くらいに、ようやくご自身の老後について考え出す方が多く、老後の準備が大変になってしまうことがあります。
執筆者:吉野裕一(よしの ゆういち)
夢実現プランナー
2級ファイナンシャルプランニング技能士/2級DCプランナー/住宅ローンアドバイザーなどの資格を保有し、相談される方が安心して過ごせるプランニングを行うための総括的な提案を行う
各種セミナーやコラムなど多数の実績があり、定評を受けている
老後に必要なお金は…?
公益財団法人・生命保険文化センターが行った、「老後の生活費はいくらくらい必要と考える?」という調査では、夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考える最低日常生活費は、月額で平均22万円となっています。
厚生労働省が発表している平成29年度の平均寿命は、男性で81.09歳、女性で87.26歳となっています。夫婦2人で生活するのは81歳くらいまでと考えると、定年退職を60歳として、21年間の生活費を準備しなくてはなりません。22万円×12ヶ月×21年間=5544万円が必要になってきます。
また、先の同じ調査で、旅行やレジャー、趣味などのゆとりある生活を過ごすためには、最低日常生活費以外に平均で12.8万円必要とされています。12.8万円×12ヶ月×21年間=約3226万円をさらに準備しなければならないのです
ただ、入ってくるお金もあるので、この額を全て準備する必要はありませんね。入ってくるお金は、公的な年金が柱です。総務省の家計調査によると、高齢者夫婦世帯の可処分所得は18万958円であり、最低必要な月額よりも4万円不足していることになります。
定年退職後の21年間で考えた場合、不足額は4万円×12ヶ月×21年間=1008万円です。ゆとりある生活を送るためには、この不足分を先ほどの約3226万円に足し、合計約4234万円を公的年金以外に準備する必要があるということになりますね。
今後は公的年金の実質的な減額
前述の数字は現在の年金受給額ですが、平成16年に年金制度が改正され、現在はマクロ経済スライドという、その時の社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金給付水準を自動的に調整する仕組みを取り入れています。
現在の日本は少子高齢化で平均余命も伸びています。今後は物価や賃金による年金額の伸びがあっても、「スライド調整率」が引かれ、実質的な年金額の減少になるでしょう。
100年安心の年金で考える
平成26年に厚生労働省が、100年安心の年金制度として打ち出した国民年金および厚生年金に係る見通しを発表していますが、長期の運用利回りの想定を4.2%としています。企業年金も、公的年金と同じような利回りを予定して運用されています。
個人でも同等の利回りで運用を行うことで、物価上昇などを加味した老後資金の準備ができると思います。
準備は早いうちから
多くの方は、子育てやマイホーム購入など目の前の大きな支出にばかり目が行き、ご自身の老後の準備は後回しになってしまっています。
28歳で結婚、51歳の時にお子さまが独立。さあこれからご自身の老後資金を準備しようと思っても、現在の退職制度ではまだ定年が60歳という企業も多く、9年間で前述の額を準備しないといけません。1000万円を9年で貯めるには、年間100万円以上積み立てる必要があります。
一方、30歳から老後の準備を始め、60歳までの30年間で公的年金と同等の4.2%の利回りで運用できるとしたら、毎月約1万5000円の積み立てで1000万円を作ることができます。
個人型確定拠出年金(iDeCo)やつみたてNISAなど、税制面で有利な制度もあります。お勤め先で確定給付企業年金が導入されている方であれば、運用先の見直しなどもなさってみると良いと思います。
人生100年時代を生き抜く知識を早めに
平均寿命は年々延びていますが、健康寿命はそれより短く、現役時代と同じように健康で同等の収入を得られる老後は、なかなか得難いことです。現役を引退した後の30年、40年を安心して過ごせるように、30代のうちから資金計画を立てておきましょう。
(出典元)
生命保険文化センター「老後の生活費はいくらくらい必要と考える?」
総務省統計局「世帯属性別の家計収支(二人以上の世帯)」
公的年金の見通し
執筆者:吉野裕一(よしの ゆういち)
夢実現プランナー