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更新日: 2021.04.21 老後

認知症になった時の財産管理。成年後見人か、家族信託か。

執筆者 : 黒木達也 / 監修 : 中嶋正廣

認知症になった時の財産管理。成年後見人か、家族信託か。
自分が年をとるにつれ、財産管理がきちんとできるかどうか、不安になります。金融機関まで出掛けたとしても、手続きの方法がわからなくなったら大変です。不動産の売却や購入もできなくなります。
 
そのような事態になる前に、財産管理を信頼できる人に任せることが重要になってきます。
 
黒木達也

執筆者:

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

中嶋正廣

監修:

監修:中嶋正廣(なかじま まさひろ)

行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

長野県松本市在住。

黒木達也

執筆者:

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

中嶋正廣

執筆者:

監修:中嶋正廣(なかじま まさひろ)

行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

長野県松本市在住。

誰もが認知症になるリスクがある

70歳を過ぎても、預金の管理や所有株式の売買を、問題なくできる人は多いと思います。しかし認知症は本人の気づかないところで徐々に進行し、他人から見れば明らかに判断能力に欠けていることが明白になってきます。そのような状態になると、自分の財産管理が、人の手助けなしにはできなくなります。
 
特に認知症と診断された場合は、金融機関での預金の引き出しや、所有する不動産の売却などの経済行為ができなくなってしまいます。銀行預金などの引き出しもできず、死後の遺産相続まで待たなければならないケースも考えられますし、本人が老人ホームなどに入居するために自宅を売却しようとしても、契約できません。
 
こうした事態にならないために、事前に対応する必要があります。高齢化の進行は速いスピードで進んでおり、社会全体としての課題です。具体的には次のような対応が考えられます。
 

成年後見人制度の仕組み

この「成年後見人制度」は、各種の契約業務の代行者を決める制度で、本人が認知症を発症後に選任できます。家族などが家庭裁判所に申請し、裁判所が成年後見人を選任します。成年後見人は本人に代わって、預金の引き出しや不動産の売買といった契約行為を実行します。
 
その場合に、あくまで本人の利益を最優先と考えるため、本人の利益に合致すると確認されない限り、預金引き出しや不動産売買はできません。認知機能が衰え始めた段階に契約業務の支援を目的に締結する保佐人、補助人という制度もあります。
 
成年後見人は家庭裁判所が選任するため、家族がその任にあたることを希望しても、なれない場合が多いのが実態です。通常は裁判所から信任の厚い専門家である弁護士、税理士、司法書士といった人がなるケースが多く、選任された後見人が、本人の財産を原則管理します。
 
この制度では、例えば本人の自宅を売却し、その資金をもとに老人ホームへ入居するといった行為が、本人の利益とも合致すると判断されれば、実行できるようになります。認知症と判断された時点で凍結されていた預金も、引き出すことが可能です。
 
また、往々にして家族が必要と感じて預金を引き出そうとしても、成年後見人が本人の利益にかなっているかの判断するため、家族との間で意見が対立しトラブルになります。家族が本人の相続財産を減らす目的でする行為は、大きく制限されると考えておきたいものです。
 
本人の利益と家族が考えた株式投資や賃貸アパートの建設も、成年後見人はリスクがあり、通常は本人の利益とは認められません。
 
一度選任された成年後見人は、家族と意見が対立したとしても、家族の意向で解任することはできず、契約は本人が亡くなるまで続きます。委託された資産規模に応じて、月に1万円から6万円程度の費用がかかります。長期のおよんだ場合は支払額も多くなるため、家族から不満が出てくることも見られます。
 

家族信託制度の仕組み

「家族信託制度」は、成年後見人制度とは異なる民事信託の1つです。本人が認知症になった後では締結することはできず、意思能力があるうちに契約を結びます。この点は、成年後見人制度とは異なります。
 
例えば、父親(委託者・受益者)と長男(受託者)など、家族間で信託契約を結ぶことが一般的です。ただし家族以外の人が受託者になることも可能です。この信託契約を結ぶことで、父親が認知症になり老人ホームへ入居する際にも、父親の預金を長男が代わりに引き出すことができます。
 
財産管理の範囲も、すべてではなく一部に限定もできます。例えば、不動産は対象外にして、死後法定相続にするという契約も可能です。受益者(父親)の利益に合致すると受託者(長男)が判断すれば、節税対策を目的としたアパート建設なども可能です。相続を意識した不動産の名義変更も可能になるため、親族にとっては自由度が高まります。
 
しかし、子どもが数人おり仲が悪い場合は、1人の子どもと信託契約を結ぶと、ほかの子どもとの間でトラブルになることが多く、子ども全員との合意が必要になります。
 
家族信託を結ぶにあたっては、弁護士や司法書士などに相談し、受託者を誰にするかを決め、信託内容を決定し契約内容を公正証書とし作成する必要があります。専門家への相談、証書の作成には一定の費用がかかります。
 
しかし、契約が完了すれば、その後は定期的に発生する費用はありません。本人が認知症になってからはできませんが、家族の自由度が成年後見人に比べて高いため、高齢化が進むなか、今後普及していくと思われます。
 

ケースに応じてどちらかを選択

本人の認知機能が衰えていない状態で、成人した子どもがいる場合は、家族信託を選択する人が増えると思われます。そのメリットとして、

(1)家族が必要と思えば預金などが引き出せる
(2)親族同士なので相互の信頼関係が築ける
(3)家族の判断で資産運用や不動産売買が可能

といったことが上げられます。
 
デメリットとしては、

(1)親族同士が不仲な場合はトラブルになりやすい
(2)親しい親族がいないと受託者が見つけにくい
(3)認知症の発症後ではこの仕組みが利用できない

などがあります。
 
一方、成年後見人制度のメリットは、

(1)認知症が発症した後でも申請できる
(2)家族関係が複雑な場合は他人への委託でトラブルを防げる
(3)支出が厳しく制限されるため資産が長持ちする

などがあります。
 
デメリットとしては、

(1)家族でも預金の引き出しが制限される
(2)後見人に対する支払いが最後まで続く
(3)後見人とトラブルになっても解任できない

などがあります。
 
どちらにするかは、諸事情を考慮しての判断になりますが、早い段階ならば家族信託のほうが使い勝手が良い、と思われます。
 
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
 
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

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