更新日: 2021.06.25 その他老後
年金が毎月いくらあれば、「年に一度の旅行」を実現できる?
現役世代の中には、いずれリタイアした後に旅行を楽しもうと考えていらっしゃる方も多いかもしれませんが、では一体、年金がどの程度あれば年に一度の旅行を実現できるのでしょうか?
本記事では、その点を掘り下げてみようと思います。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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旅行にいくらくらい使っているの?
まずは旅行をするに当たって、一体どの程度お金をかけているのかを見てみます。
観光庁が発表している「旅行・観光消費動向調査」(2020年)によると、性別・年代別の旅行の平均回数と、1回当たりの費用の平均(国内旅行)は以下のとおりとなっています(海外旅行については2020年のデータがないこと、それ以前の年においても旅行平均回数が少ないことから国内旅行のみに焦点を当てていきます)。
なお、2020年は新型コロナウイルスの影響を受けており、2019年のデータと比較すると旅行平均回数が1回程度、旅行平均単価が1万円程度減少しています。今後の状況によって、また以前に近い水準に回復するか、2020年と同じような傾向が続くかは不明確ですので、しばらくは情勢を見ていく必要があるでしょう。
性別・年代 | 旅行平均回数(回/人) | 旅行平均単価(円/人回) | ||
---|---|---|---|---|
宿泊旅行 | 日帰り旅行 | 宿泊旅行 | 日帰り旅行 | |
男性60代 | 1.4171 | 1.5522 | 5万4981円 | 1万7569円 |
女性60代 | 1.0832 | 0.9650 | 5万4512円 | 1万6457円 |
男性70代 | 0.8730 | 1.1236 | 5万5173円 | 1万6390円 |
女性70代 | 0.7078 | 0.8599 | 4万8819円 | 1万6968円 |
男性80代以上 | 0.3842 | 0.7203 | 4万6667円 | 1万6442円 |
女性80代以上 | 0.2897 | 0.3776 | 4万6330円 | 1万7890円 |
※観光庁 「旅行・観光消費動向調査」より筆者作成
年金受給世代となる年代のみ抜粋しましたが、80代以上となると平均回数が大幅に下がることから、やはり体力的に旅行に行くことが難しくなってくる方も多くなると推定されます。また、この調査には業務での出張についても含まれており、平均回数において男性の方が多いのは、定年後も何らかの形で出張も含む仕事に従事されている方がいるためと考えられます。
60代、70代のみでさらに平均をとってみると、
平均回数:1.07回
平均単価:3万5108円
となります。
夫婦2人での旅行とした場合、
3万5108円×2人×1.07回=約7万6000円
となるので、約8万円あれば年1回、国内の宿泊旅行または日帰り旅行に行けると仮定してみます。
老後に必要な毎月の生活費は?
次に、老後に必要な生活費はいくらくらいなのか確認してみましょう。
公益財団法人 生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」(令和元年度)によると、老後に夫婦2人で必要とされる最低日常生活費は月額平均で22万1000円となっています。
年金をいくらもらえれば毎年旅行ができる?
年金の受給額がいくらあれば毎年旅行ができるのでしょうか?
貯蓄や退職金などを除いて単純に試算した場合、夫婦2人が老後に最低限必要な生活費を22万1000円×12ヶ月=265万2000円、年に1回の旅行費用を8万円とすると、合計で年間273万2000円が必要です。この金額を基に年金の受給額について見ていきます。
国民年金の受給額は、1年当たりの満額で78万900円(令和3年度)となっています。夫婦ともに国民年金を満額受給できるとして、上記の生活費に年1回の旅行費用を加えた273万2000円から78万900円×2人分を引くと、厚生年金の受給額として年額117万200円が必要になってきます。
年額117万200円を月額にすると9万7516円になります。「厚生年金保険・国民年金事業年報」(2019年度調査)によると、厚生年金を月額10万円以上受給している人の比率は76.3%となっていることから、75%程度の人は毎年1回の国内旅行ができる程度の年金受給額になっているといえます。
また、厚生年金の平均受給額について厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」(令和元年度)で確認すると、月額14万6162円、年額では175万3944円です。この平均受給額でも毎年旅行するには十分な額といえるでしょう。
まとめ
以上、簡単ではありますが、各種統計から老後に年1回の旅行に行くために必要な年金額を試算してみました。
今後は年金額の減少、定年年齢の延長などが推進されることも想定されます。年金額の試算も毎年アップデートされていきますので、その都度どのようになるか調べてみる必要があるでしょう。
出典
観光庁 「旅行・観光消費動向調査」
公益財団法人 生命保険文化センター 「老後の生活費はいくらくらい必要と考える?」
日本年金機構 「令和3年4月分からの年金額等について」
e-Stat 政府統計の総合窓口 「厚生年金保険・国民年金事業年報 総括表(厚生年金保険) 厚生年金保険(第1号) 年金月額階級別受給権者数」
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部