更新日: 2021.06.27 定年・退職
中小企業と大企業について、企業年金・退職金で比較するとどうなる?
執筆者:宿輪德幸(しゅくわ のりゆき)
CFP(R)認定者、行政書士
宅地建物取引士試験合格者、損害保険代理店特級資格、自動車整備士3級
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退職給付制度がある企業は約8割
厚生労働省の調査によると、退職給付ある企業は80.5%です。19.5%の企業は退職給付がありません。また、労働者が少ない方が、退職給付がある割合も低くなっています。
労働者数 | 調査産業計 | 1000人以上 | 300~999人 | 100~299人 | 30~99人 |
---|---|---|---|---|---|
退職給付有 | 80.5% | 92.3% | 91.8% | 84.9% | 77.6% |
※厚生労働省 「平成30年就労条件総合調査 結果の概況 退職給付(一時金・年金)制度」より筆者作成
1992年には退職給付ありの割合が92%ですので、10%以上低下しています。
出典:市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
上図は、全業種での学歴別の平均退職給付額の推移ですが、全体として退職給付が減少していることが分かります。
退職給付制度の内容
(1)退職一時金の算定
20年ほど前までは、退職一時金を計算するときのベースは退職時の給与とするのが主流でした。しかし、現在では給与とは別建ての計算をする企業が増えており、大企業ではポイント制が主流になっています。
ポイント制では、勤続年数や資格等級などでポイントを計算し、これに一定の単価を掛けて退職金を算出します。この制度では、中途採用などで勤務年数が短い場合でも、会社への貢献度が高い社員に対して退職金の額を増やすことができます。「長く勤めれば退職金が高くなる」から「貢献度が高ければ退職金が高くなる」となりますので、社員のモチベーションアップが期待されます。
しかし、公平な評価や管理が必要となることがネックとなり、中小企業ではポイント制の導入が多くありません。
■退職一時金のベース
退職時給与 | 別テーブル | ポイント | 定額 | その他 | |
---|---|---|---|---|---|
大企業 | 17.9% | 13.0% | 67.9% | - | 6.8% |
中小企業 | 37.6% | 6.3% | 13.5% | 22.6% | 16.9% |
※中央労働委員会 「令和元年退職金、年金及び定年制事情調査」
(2)退職年金
以前は、企業が生命保険会社や信託銀行などに積み立てる「適格年金」と、特別法人を設立して運営する「厚生年金基金」が主流でしたが、制度の廃止などによりほとんどが「確定給付年金」と「確定拠出年金」に移行しています。
■退職給付制度の採用状況(複数回答)
厚生年金基金 | 確定給付年金 | 確定拠出年金 | 自社年金 | |
---|---|---|---|---|
大企業 | - | 81.1% | 66.2% | - |
中小企業 | 13.7% | 44.5% | 45.1% | 0.5% |
※中央労働委員会 「令和元年退職金、年金及び定年制事情調査」、東京都産業労働局 「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」より筆者作成
このように、
●退職給付は全体としては減少傾向
●勤続年数より貢献度を評価
●転職した場合でも年金資産を移管しやすい確定拠出年金が増加
など、終身雇用を前提としない制度設計に移行しつつあるようで、特に大企業はその傾向が顕著になっています。
老後の生活設計に重要な意味を持つ退職給付ですが、フィデリティ退職・投資教育研究所による「高齢者の金融リテラシー調査」(2019年2月)によると、退職金の給付額を把握した時期について、約3割が「退職金を受け取るまで知らなかった」、約2割が「定年退職前半年以内」と回答しています。
まずは早めに勤め先の制度を確認し、自分がどれだけ退職給付を受け取れるのかを確認しましょう。定年間際になってからでは、老後の生活設計には間に合いません。
出典
厚生労働省 「平成30年就労条件総合調査 結果の概況 退職給付(一時金・年金)制度」
金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」
中央労働委員会 「令和元年退職金、年金及び定年制事情調査」
東京都産業労働局 「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」
資産運用ナビ 「第119回 自分の退職金の金額を知っていますか?」
執筆者:宿輪德幸
CFP(R)認定者、行政書士