更新日: 2021.10.05 介護

家族が認知症になったときのために、どんな備えが必要?

執筆者 : 仁木康尋

家族が認知症になったときのために、どんな備えが必要?
家族が認知症になったとき、どんな制度を利用できるのでしょうか。認知症の方やそのご家族が利用できる支援制度などを紹介します。
仁木康尋

執筆者:仁木康尋(にき やすひろ)

日本FP協会CFP(R)認定者、国家資格キャリアコンサルタント

人事部門で給与・社会保険、採用、労務、制度設計を担当、現在は人材会社のコンサルトとして様々な方のキャリア支援を行う。キャリア構築とファイナンシャル・プランの関係性を大切にしている。

介護保険制度による支援

65歳以上の人は介護が必要と認定された場合、40歳から64歳までの人の場合は介護保険の対象となる特定疾病により介護が必要と認定された場合に、介護サービスを受けることができます。要介護認定は市区町村(保険者)が実施します。認定の区分によって利用できるものは異なりますが、下記のサービスを受けることができます。
 

1.介護保険サービスの利用にかかわる相談やケアプランの作成
2.自宅で受けられるサービス(訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、訪問入浴介護など)
3.施設で受けられるサービス(デイサービス、通所リハビリテーション、ショートステイなど)
4.施設で生活するサービス(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設など)

 
介護保険サービスを利用した場合、介護サービスにかかった費用の利用者負担は1割です(一定以上所得者の場合は2割または3割)。居宅サービスを利用する場合は、要介護度別に1ヶ月あたりに利用できるサービスの上限(支給限度額)が決められています。上限を超えてサービスを利用した場合は、超えた分は全額自己負担となっています。
 
サービスを利用するためには、まずは「要介護認定の申請」をします。申請先はお住まいの市区町村の窓口か地域包括支援センターです。
 
(出典:介護サービス情報公表システム(※1))
 

資産管理を支援する「成年後見制度」

「成年後見制度」とは、認知症によって判断力が十分でなくなった方が不利益を被らないよう、財産や生活を守るための制度です。2種類あります。
 

【任意後見制度】

現在判断能力がある方が、将来に備え信頼できる支援者を自分の意思で「後見人予定者」として決めておく制度です。ご本人の判断力が低下した際は「後見人予定者」が代理で財産管理等の支援を行います。
 

【法定後見制度】

判断能力が十分でなくなってしまった方のために、家庭裁判所が支援の程度によって「補助人(財産の管理・処分で援助が必要な際に、支援する人)」「保佐人(財産の管理・処分で援助が常に必要な際に、支援する人)」「成年後見人(財産の管理・処分ができない人の代理として支援する人)」を選ぶ制度です。弁護士や司法書士などの専門家が選ばれることもあります。
 
いずれの場合も住んでいる地区の家庭裁判所に必要書類を持参して申請します。
 

日常生活自立支援事業による支援

認知症によって判断力が十分でなくなった場合に、「日常生活自立支援事業」によるサポートを受けることができます。判断能力の低下はあるものの支援してもらえば自立した生活ができる場合など、特に一人暮らしの方には頼りになる制度です。
 

●福祉サービス、医療サービスの情報提供や利用にあたっての相談
●日常生活の中での金銭管理に関する支援(公共料金の支払い手続きなど)
●事務手続きに関する支援(公的書類の届け出など)
●通帳などの保管の支援

 
実施主体は都道府県・指定都市社会福祉協議会ですが、窓口業務等は市町村の社会福祉協議会等が行っていますので、地域包括支援センターか社会福祉協議会に申請をします。
 
(出典:全国社会福祉協議会「日常生活自立支援事業パンフレット」)
 

精神障害者保健福祉手帳

精神障害者保健福祉手帳を持っていると、次のようなサービスを受けることができます。
 

●NHK受信料の減免
●所得税や住民税、相続税の控除
●自動車税・自動車取得税の軽減(手帳1級) 
●生活福祉資金の貸し付けなど

 
その他、鉄道、バス、タクシー等の運賃割引など、地域や事業者によって行われるものもあります。
 
申請は、市町村の担当窓口で行います。家族や医療機関関係者等が代理で行うこともできます。申請すると、審査が行われ、認められると手帳が交付されます。手帳の有効期限は交付日から2年が経過する日の属する月の末日となっています。2年ごとに更新の手続きを行います。
 
(出典:厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳」(※2))
 

介護休業制度

働きながらご家族の介護をしている方は、「介護休業制度」を利用できます。パートやアルバイト、派遣社員の方でも一定の要件に合致すれば利用できます。介護の対象となる家族は、配偶者 (事実婚を含む) 、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫までですが、対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業できます。
 
(出典:厚生労働省「介護休業制度」(※3))
 

まとめ

親や身近な人、あるいは自分自身が認知症になったときの備えとして、各種支援制度について知り、それを家族と共有しておきたいですね。その他、民間の保険についても、必要に応じて必要な範囲で活用していただければと思います。一時金や年金を受け取れる治療保障タイプの保険や、認知症の方がトラブルを起こした際の損害補償タイプの保険などもあります。民間の保険が必要だと感じた場合は、自分や自分の家族に合った保険を検討しましょう。
 
出典
(※1)厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索」
(※2)厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳」
(※3)厚生労働省「介護休業制度」
 
執筆者:仁木康尋
日本FP協会CFP(R)認定者、国家資格キャリアコンサルタント

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