更新日: 2021.10.21 介護

入居一時金が不要な「特別養護老人ホーム」入所条件や費用、選ぶときのポイントは?

入居一時金が不要な「特別養護老人ホーム」入所条件や費用、選ぶときのポイントは?
老後を過ごす場所としての「老人ホーム」は、大きく分けると民間施設と公的施設の2通りがあります。
 
ここでは公的施設である「特別養護老人ホーム」とはどのような場所なのか、入居条件、費用・支払い方法、選ぶ際にチェックするポイントなどを、わかりやすく解説します。
岩永真理

執筆者:岩永真理(いわなが まり)

一級ファイナンシャル・プランニング技能士

CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/

「特別養護老人ホーム」は入居一時金不要! 入所対象者とは?

特別養護老人ホーム(以下「特養」)は、介護保険法上の類型では介護老人福祉施設と呼ばれる要介護高齢者のための生活施設です。
 
国が定めた基準にのっとり、地方自治体が主体となって設置された公的な施設です(運営は外部へ委託されている場合もあります)。公費で賄われているため、その地方自治体において、必要度の高い人から入所できる仕組みになっていることが大きな特徴です。
 
民間の介護付き有料老人ホームでは、一時入居金を支払った上で月々の費用を支払い方法と一時入居金を支払わずに月々の費用を多めに支払い方法などが一般的ですので、経済的な負担が大きくなる場合もあります。
 
一方、特養では一時入居金が不要で、一時入居金を払わないことで月額利用料が増える心配もありません。
 
入所対象者は、介護保険の要介護3から要介護5と認定された人で居宅において介護を受けることが困難な人、あるいは要介護1や要介護2でも家族の虐待が疑われる人など施設への特例的な入所の要件に該当する人、とされています。要支援1・2の人は利用できません。
 

入所順位はどう決定されるのか?

こうした経済的メリットから、特養に入所を希望する人は各地方自治体の定員を超えていることが多くあります。
 
入所に関する透明性と公平性を保つために、各地方自治体では入所の必要性を評価する基準を設け、その基準を点数化することによって、入所順位を決める方法が近年普及しています。
 
地方自治体によって、評価基準とする項目や点数化の方法は異なりますが、その地方自治体において、いかに必要な人に優先的に入ってもらえるかを検討した結果と考えられます。
 
例えば、茨城県は以下の評価基準を採用し、点数(総点数200点)の高い順に入所希望者のランク付けを行っています。
 


 

特養の月額費用はいくらかかる? 支払い方法は?

介護保険料の負担割合が1割の人の目安(横浜市)は下表のとおりです。
 


 
費用は居住する部屋の種類によって大きく異なります。また同じ地方自治体であっても、施設の提供するサービスや利用者が選択するサービスによって費用が追加されますので、興味を持った施設に個別に問い合わせるとよいでしょう。
 
収入が少ないなど住民税非課税の人には、軽減制度があります。詳しくはお住まいの地方自治体に問い合わせてみましょう。支払い方法は、施設によって異なりますが、ひと月ごとの精算で、主に現金払い・指定口座へ振り込み・口座引き落としなどがあります。
 

選ぶ際のチェックポイントとは?

費用負担が可能な範囲でいくつか候補が絞った上で、家族が行きやすい立地にあることは、重要な要素です。家族が頻繁に顔を出せると、入所者の精神的な安定にもつながります。家族の面会可能時間や外泊の可否なども、ニーズに合っているか確認しましょう。
 
現在はコロナ禍で見学受け入れを制限しているところが多いですが、受付で資料をもらうだけでもその施設の雰囲気がわかる場合があります。
 
国の定めたスタッフの配置基準(入所者3人に対して介護職員または看護職員が1人以上)があるので、スタッフの人数割合は、どこの特養も一定割合以上は確保されているはずです。そのため、可能であれば、スタッフがどのように利用者と接しているかを確認することが大切です。
 
生き生きと明るく仕事をしている介護スタッフがいるところは、入所しても快適に過ごせるかもしれませんね。受付で資料をもらう際に、介護スタッフが通りかかれば、きちんとあいさつをしてくれるかどうか、利用者にやさしく接しているかなど、気を付けてみるとよいでしょう。
 
直接介護スタッフと会うことが難しければ、資料やホームページに掲載されている内容などから、介護スタッフの教育や訓練が定期的に行われているか等を確認できます。
 

まとめ

公的な施設である特養は、要介護度が高い、身近に介護者がいない、など必要性の高い人が利用しやすいように配慮されています。また、費用面でも住民税非課税の人などは、一定の軽減措置があるなど、利用者の属性に対応してくれるところも利点といえます。
 
ただし、特養の申請者数は定員数を超えることが多く、横浜市の場合、市内全体の入所待機者数は、令和3年4月1日現在、6037人(うち要介護3以上は5323人)となっています。すぐに入所できる施設を探す必要がある人には、狭き門になる可能性があることも特徴の1つです。
 
出典
茨城県「特別養護老人ホーム利用情報の提供について(つくば圏域)」
茨城県「茨城県特別養護老人ホーム入所指針」
横浜市「特別養護老人ホームを利用している方・利用したい方」
 
執筆者:岩永真理
一級ファイナンシャル・プランニング技能士

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