更新日: 2021.10.26 介護
民間の介護保険を検討する前に、公的介護保険制度を知っておこう
執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
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サービスを利用するには、申請をして認定を受けることが必要
64歳になったAさんから、「介護保険の加入を勧められているけれど、選び方を教えてほしい」という相談を受けました。定年退職を機に地方にある実家に戻り、子どもたちは独立して東京で暮らしています。
「将来、介護が必要になった時に子どもに迷惑をかけたくない」と考える人はいらっしゃいます。介護離職などの心配は避けたいところです。医療保険なども同様ですが、もしもの時の公的な保障についてまず知っておき、不足と感じる部分を民間の保険で対応することが良策です。民間の介護保険も公的介護保険に連動していることが多いので、公的介護保険について整理します。
公的介護制度は、要介護認定を受けた人が介護サービスを受けることができる制度です。40~64歳(第2号被保険者)は特定された16種類の疾病、65歳以上(第1号被保険者)はそれ以外を含むあらゆる疾病やけがが原因で、介護が必要になった場合に受けることができます。介護保険料は、第1号被保険者の場合は原則年金から天引き、第2号被保険者は医療保険料と一括で徴収されることになっています。
公的介護では、要介護度を体の状態に応じて要支援1・要支援2・要介護1~要介護5の7段階に区分しています。要介護認定されると、その状態に応じたサービスを受けることができます。要介護1・2の目安は以下のとおりです。
食事や排せつなどはほとんどひとりでできるが、ときどき介助が必要な場合がある。
立ち上がりや歩行などに不安定さが見られることが多い。問題行動や理解の低下が見られることがある。この状態に該当する人のうち、適切な介護予防サービスの利用により、状態の維持や、改善が見込まれる人については要支援2と認定される。
食事や排せつに何らかの介助を必要とすることがある。立ち上がりや片足での立位保持、歩行などに何らかの支えが必要。衣服の着脱は何とかできる。物忘れや直前の行動の理解の一部に低下が見られることがある。
民間の介護保険では、保険金給付の要件を要介護1や要介護2に定めていることが多いので、参考になると思います。
公的介護保険で利用できるサービスの目安
介護サービスは、要介護度により1ヶ月に受けられるサービスの限度額が決まっています。限度内であれば1~3割の自己負担額で利用できます。これは地域によって異なる場合がありますが、大田区「みんなの介護保険利用のしかた」記載の「在宅サービスの支給限度」では図表1のとおりです。
自己負担割合は原則1割ですが、一定以上の所得者は2~3割となります。自己負担割合の判定は図表2を参照ください。
生命保険文化センター「ライフプラン情報ブック(2021年2月改定)」によると、要介護認定者の数は、2018年時点で658万人ですが、その中で要支援1~要介護2で約65%を占めています。自己負担1割(所得によっては2~3割)で利用できる在宅サービスの目安は次のようになっています。
1日1回程度のサービス
週3回の訪問介護・週1回の訪問看護・週2回の通所系サービス
1日1~2回程度のサービス
週3回の訪問介護・週1回の訪問看護・週3回の通所系サービス
在宅介護を考えると家族の負担が増え、「迷惑をかけられない」と心配になるかもしれませんが、毎日何かしらのサービスを利用できることが分かれば、かなり安心できます。
自己負担が増えた時は高額介護サービス費が支給される
8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直され、高所得者の部分が新設されました。
1ヶ月の利用者負担の合計が上限額を超えた時は、超えた分は「高額介護サービス費」として支給されます。老夫婦2人で介護サービスを受けている場合は、この制度が助かります。
さて冒頭の相談です。民間の介護保険に加入を検討する前に、「介護状態になったらどういう介護を受けたいのか」なかなか想像しにくいことですが、一度考えてみる必要はありそうです。
もちろん介護の度合いによっても違ってきます。自宅で介護サービスを受けるのか、介護施設に入るのか。公的な介護施設は人気が高く、なかなか順番がまわってこないということもあるかもしれません。高額な介護施設を選ぶのであれば、そのための資金確保の必要があります。
65歳以上が人口の約3割を占めるようになりました。軽度の介護の場合は、今後も在宅介護が中心になっていくと考えられます。あくまで個人的な意見ですが、民間の介護保険に加入することも一案ですが、シニア仕様に自宅をリフォームするなどの老い支度、介護予防にお金を使うことの優先順位も高いように思います。
(※)厚生労働省「令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」
(参考)
大田区 ホームページ
厚生労働省「介護・高齢者福祉」
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士