更新日: 2022.01.17 セカンドライフ
年金の支給停止額の引き上げで、シニアの働き方が変わる?
これによって働きながら受け取る年金の支給停止額が引き上げられることとなり、シニア世代の働き方が変わるとの期待もされています。
年金の支給停止額の引き上げがどうシニアの働き方を変えていく可能性があるのか、考えてみます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
就労しているシニアの年金の支給停止が問題に
厚生年金には在職老齢年金という制度があります。
在職老齢年金とは、厚生年金に加入しながら働いて給与と年金を受け取っている方について、年金(年金額を12で割った金額)と給与(標準報酬月額+1年間の標準賞与額を12で割った額)の合計額で算出される金額が基準額を超えたときに、本来支給されるべき年金の全額ないし一部が停止される仕組みです。
現行制度において基準額は60歳から64歳の場合は28万円、65歳以上の場合は47万円と設定されています。
60歳から64歳の在職老齢年金の対象となっている人は2022年度末までの推計で、一部支給停止に該当する方が約37万人と全体の51%程度にも上ると推定されています。なお、全額停止に該当する方は約16万人と約22%の方が該当すると推計されています。
このように、現行制度のままでは在職老齢年金を気にして多くのシニア層が働き方をセーブすることが予想されます。実際、既に在職老齢年金にかかるシニア層の中には働き方をセーブしている方も存在しており、シニア世代の就労の選択を狭めてしまっています。
令和4年4月から在職老齢年金の基準額が引き上げに
令和4年4月から、60歳から64歳までの在職老齢年金の基準額が47万円に引き上げられることになります。この47万円という基準額は現役男子の平均月収(賞与含む)を基に設定されています。
これによって一部支給停止対象者は2022年末の推計で約11万人(在職受給者の15%)にまで減少し、全額停止対象者は約5万人(約7%)にまで減少すると予想され、シニア世代の就労の後押しとなることが予想されます。
年金の支給停止額の引き上げがシニアの働き方をどう変える?
年金の支給停止となる基準額が引き上げられたからといって、シニアの働き方において現在と比較して劇的な変化があるかといえば、恐らくそうはならないでしょう。
その理由は、引き上げられるのは60歳から64歳の間の在職老齢年金であること、引き上げられた金額も65歳からの在職老齢年金と同額であるからです。また、厚生労働省も法改正の概要資料内において在職老齢年金の見直しは長期的な財政影響は極めて軽微である、としています。
さらに、あくまでも在職老齢年金は厚生年金独自の仕組みであり、現在も改正後も、国民年金には何ら影響がなく、自営業者であったり、不動産収入のある方など影響が一切ない方もいらっしゃいます。
しかしながら、これまでもっと働きたかったが在職老齢年金を気にして働き方をセーブしていたという一部のシニア層の方の働き方には影響を与えることが想定され、多少なりとも働くシニア世代が増加することでしょう。
年金の支給停止額の引き上げでシニアの働き方に影響する見込み
令和4年4月より、60歳から64歳の間の在職老齢年金の支給停止額の基準額が47万円に引き上げられ、厚生年金に加入しながら働く一部のシニア層の働き方に変化が見込まれています。
しかし、全てのシニア層に影響するものではないため、働き方を劇的に変化させることのないシニア層が大多数であることも予想されます。
現在、在職老齢年金の対象になっている、あるいは将来的に対象になる可能性があると考えている方は、今回の改正を機に、60歳以降の働き方について考えてみてはいかがでしょうか。
出典
厚生労働省 年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました
厚生労働省 年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要
執筆者:柘植輝
行政書士