更新日: 2022.02.10 定年・退職

定年退職する日によって、税負担が違う…? 損しないのは何年何ヶ月?

執筆者 : 柘植輝

定年退職する日によって、税負担が違う…? 損しないのは何年何ヶ月?
定年退職する日によって税負担が異なることをご存じですか?
 
税負担で大きく損をしないタイミングは、勤続何年、さらに何ヶ月目での定年退職なのでしょうか。退職日が税負担に関係することを知らずに損をしてしまわないよう、定年退職と税金について考えてみます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

定年退職するなら勤続20年以上

定年退職する日によって税負担が大きく変わるものに、退職金があります。
 
退職金は税金の面で優遇されており、退職所得控除といって、通常の給与に適用される控除よりも大きな枠の控除が適用されます。
 

出典:国税庁 「退職金と税」
 
退職所得控除は、勤続年数によって控除枠の大きさが違います。
 
勤続年数が20年未満では、「40万円×勤続年数」が控除額となりますが、20年を超える場合、「800万円+70万円×(勤続年数-20年 ※勤続年数に1年未満の端数があれば1日であっても1年として計算)」となります。
 
特にこの20年というタイミング、そして1年未満の端数は1日であっても1年とされる点には着目すべきでしょう。1日ずれることで控除の枠が大きく変化することもあるからです。
 

具体的な差はどれくらい出る?

具体的に検証してみましょう。
 
例えば、勤続19年12ヶ月目で定年退職した方の場合、勤続年数は20年として計算されるため、退職所得控除の金額は40万円×20年で800万円となり、800万円までは退職金に税金がかかりません。
 
一方、例えば勤続20年と1日目(1ヶ月目)で定年退職した場合では、計算上の勤続年数は21年で、退職所得控除額は800万円+70万円×(勤続年数21年-20年)で870万円となり、こちらは870万円までは退職金に税金が課税されないことになります。
 
勤続19年12ヶ月目で定年退職した場合と、20年と1日目で定年退職した場合では、1日しか違わないのにも関わらず、退職所得控除額の計算上の勤続年数の違いから、控除枠が70万円も異なるのです。これを知らずに退職してしまうと、退職金の金額次第では損をする可能性もあります。
 
この点について、さらに詳しく見ていきましょう。
 
退職金の支給額がちょうど870万円の人が、勤続18年12ヶ月、すなわち勤続19年として計算されるタイミングで退職すると、退職金から退職所得控除額の760万円を引いた110万円に2分の1を乗じた金額55万円が課税の対象となり、2万7500円の所得税(所得税率5%、所得控除なし)と、5万5000円の住民税(住民税率10%)が発生します。
 
しかし勤続20年と1日のタイミングで退職した場合、勤続21年で退職金と同額の870万円の退職所得控除が受けられ、税金がかからないということもあるのです。
 
また、勤続19年12ヶ月目の末日に退職した方と、翌日まで勤務して勤続20年と1日目で退職した方とでは、たった1日の違いで退職所得控除額の計算が異なるため、退職金の控除に70万円もの差が出ます。
 
さらに、同じ勤続20年未満であっても、12ヶ月目の末日に退職した場合と、翌月の初日に退職した場合とでは、たとえ1日でも端数の切り上げによって計算上では1年の違いとなり、退職所得控除額に40万円の差が生じます。
 
つまり定年退職をするなら、退職金の金額と勤続年数による退職所得控除額について把握しておき、年数が切り上げられるタイミング、そして20年を超えるタイミングに合わせて退職日を設定すると、より退職所得控除の恩恵を受けられ、退職金の金額と勤続年数次第では税金を抑えられるということなのです。
 

退職金を受け取れる場合は控除の計算方法を知っておこう

退職金には退職所得控除という税制で優遇された控除が適用されます。
 
この控除の計算においては、勤続1年未満の端数となる日数は1年に切り上げられるほか、勤続20年を超えるタイミングで大きく控除額が増えます。
 
そのため、1日あるいは1年、退職のタイミングが早かったために税金を多く支払わなければならないこともあります。
 
せっかくの退職金で悔しい思いをしなくてもいいように、可能であれば、退職時期は自身の退職金の金額と控除の枠に合わせて調整することをおすすめします。
 
出典
国税庁 退職金と税
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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