更新日: 2022.03.17 定年・退職
日本と韓国の定年年齢は違うって本当? 退職後の生き方、日韓でどう変わる?
日韓における定年や退職後の生き方について比較してみます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
日本と韓国の定年制の違い
日本においては現在、60歳未満の定年は法律によって禁止されています。また、60歳で定年としている会社においては、本人の希望に応じて定年後も65歳までの再雇用や勤務延長制度が義務づけられています。
過去、定年といえば60歳というイメージの時代もありましたが、現在では定年制そのものの廃止や、65歳を定年とする企業も出てきており、社会の流れのなかで実質的に定年が65歳となりつつあります。
また、2022年4月1日からは希望者に対して定年の引き上げ、定年制の廃止や再雇用などで70歳まで就業機会を確保する努力が義務づけられています。
現段階では努力義務ではありますが、これを機に定年の廃止や年齢を引き上げる企業も出てくることが想定され、日本は今後70歳定年制に近づいていくことが予想されます。
一方お隣の韓国では、2015年12月までは60歳までの雇用は努力義務にとどまっており、60歳未満を定年とする企業が大多数でした。最も多い定年の年齢は55歳で、統計上4割近い企業が55歳定年となっていたようです。
図表1
出典:ジェトロセンサー 2014年4月号 AREA REPORTS 韓国 60 歳定年時代が到来
しかし、2013年5月になされた法改正により、韓国においても従業員300人以上の事業者においては2016年1月から、2017年1月からは全ての事業者において定年を60歳以上とすることが義務づけられました。
ただ、年功序列の賃金形態が色濃い韓国において定年の引き上げは人件費が高騰することにもつながってくる問題であり、事業主の経営に大きな影響を及ぼします。
さらに、健康上の問題もあり、定年が60歳へと引き上げられた後の2018年においても希望退職や退職の勧告などから、退職者の平均年齢は57歳と定年の年齢である60歳を下回っている状況が続いているようです。
定年退職後の生き方は?
ディップ総合研究所の調査によると、日本においては、60~64歳の間を除き、定年後半数以上の人たちが、特に70歳以降は実に7割以上の人たちが働くことをやめているようです。これには、公的年金が65歳から給付されるため、そのタイミングを計って就業を取りやめるという意図がうかがえます。
定年後の生き方は人によって異なりますが、多くの方が公的年金やそれまで形成してきた資産との組み合わせでつつましやかに生活しています。日本においては老後破産などに不安を抱く方が多いものの、現状多くの高齢者にとって、日本はある程度老後を安心して過ごせる国となっているようです。
一方で韓国は高齢者の貧困率が問題となっており、定年後に高齢者が身内からの仕送りなどで生計を立てている方は決して少なくはないようです。
国民年金受給者の42.3%は74.7歳頃まで飲食店の経営など、自営業や就業するなどして何らかの形で就業しているというデータもあります。ニッセイ基礎研究所によれば40%を超える高齢者が貧困状態に陥っているようで、日本と比べて定年後の生活事情は厳しい状況にあるといえます。
日本と韓国では定年や老後の生活に違いがある
定年の年齢や老後をどのように過ごしているのかは国によって大きく異なります。隣国である日本と韓国であっても、定年や老後の生活状況については異なっているくらいです。世界には韓国以上に日本と異なる国もあることでしょう。
自身の老後について考えるとき、諸外国の制度や様子も踏まえて考えると、新たな視点からの発見があり、老後の計画に役立つかもしれません。
出典
厚生労働省 高年齢者雇用安定法改正の概要
ジェトロセンサー 2014年4月号 AREA REPORTS 韓国 60 歳定年時代が到来
ディップ総合研究所 “定年後、働きたかった”シニアのうち、6割以上が今も就業!これから仕事探しをする可能性は1割強に留まる
朝日新聞 GLOBE+ 韓国人が希望する退職年齢は65歳。でも、実際には平均57歳に
ニッセイ基礎研究所 なぜ韓国の高齢者貧困率は高いのですか?
執筆者:柘植輝
行政書士