おひとりさまの老後資金、定年前にいくら準備しておくのが妥当?
配信日: 2022.03.29
おひとりさまの老後の支出状況なども併せて紹介します。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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おひとりさまの割合ってどのくらい?
厚生労働省の資料(※1)によると、2030年に生涯未婚率は男性で27.5%、女性は18.8%と、男性では約4人に1人、女性では約5人に1人がおひとりさまになるといわれています。
2010年時点では男性が20%、女性が10%程度だったことを考えると、男性は約1.5倍、女性は約2倍に増えることが予想されています。
ちなみに、おひとりさまを把握する指数として「生涯未婚率」が用いられますが、この生涯未婚率とは、50歳時点で一度も結婚をしたことのない人の割合を指します。
■単身世帯数の年齢も高齢化している
また、年齢階級別の単身世帯をみると、20歳から29歳までの単身世帯よりも、80歳以上の単身世帯の方が多くなることが予想されています。
2010年と比べると約2倍になることが予想されており、特に女性の単身世帯が増えることが注目されています。これは、女性の平均寿命が男性よりも長いことが関係していると思われます。
単身世帯の家計状況
総務省が発表している2020年の家計調査(※2)によると、65歳以上の高齢単身者世帯の収支状況は、可処分所得が約12万5000円であるのに対し、支出が約13万3000円と、毎月約8000円の赤字となっています。
また、2020年の簡易生命表(※3)によると、65歳での平均余命は男性が約20年、女性は約25年となっていることから、単純に公的年金のみで生活していくにあたり、男性の場合は毎月の不足額×20年分である(約8000円×12ヶ月×20年)、約192万円、女性だと25年分の240万円は最低でも用意しておかなければなりません。
ただし、2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、比較的支出が抑えられていたのかもしれません。
実際に、その前年の同資料(※4)をみると、65歳以上の家計の収支は毎月約2万7000円の赤字となっています。これが平均寿命まで続くと考えると、男性の場合648万円、女性の場合は810万円です。
また、いずれのケースでも、介護の費用などが追加で掛かる可能性も考えておく必要があるでしょう。
生命保険文化センターの資料(※5)によると、毎月平均して約8万円の介護費用が、5年間分必要となっています。そうなると、480万円の介護費用も準備しておかなければならないといえるでしょう。
おひとりさまに必要な老後資金額は?
前述の内容を鑑み、介護費用も含めた1100万円から1300万円程度は、定年前に用意しておくことが望ましいといえます。
ただ、これはあくまでも平均値であり、老後をどのように過ごすかで異なります。自分の趣味などに使う資金を確保しておきたいならば、さらに余裕を持たせておくべきでしょう。
単身世帯の貯蓄状況は?
金融広報中央委員会の発表(※6)によると、単身世帯の金融資産保有額の平均は約1000万円であり、70歳未満に限定すると約900万円となっていることが分かります。
この結果から見ると、70歳以上の貯蓄額の割合が全体よりも多いことが伺えます。
ただこの数字だと、おひとりさまが老後を過ごすために必要な額からみると、若干不足している感じは否めません。現在よりもさらに老後資金の確保への意識を高める必要がありそうです。
将来に対する不安
同じ金融広報中央委員会の資料によると、老後に対して不安を持っている単身者の割合は、「多少心配している(33.5%)」と「非常に心配している(42.9%)」を合わせると、約76%にも達することが分かります。そして、その理由として挙げられるのが「十分な金融資産がない」ことが挙げられています。
また、年金で日常生活をまかなうのは非常に困難だと意識している割合も多く、約半数の単身者がそのように答えています。
このような背景からも、老後は公的年金だけでは生活していくことが難しく、働いて収入を得ようという考え方を持つ人が多くみられています。
まとめ
おひとりさまだと、夫婦で暮らすよりも毎月の支出は少なくてすみますが、公的年金による収入額が夫婦世帯よりも少なくなることから、その差額がどのくらいになるのかを早めに把握し、不足分については自助努力で形成する必要があります。
iDeCoなどの運用を取り入れることはもちろん、定年後も働けるうちは働く考えを持ち、どのような働き方をするかによって、必要なスキルを取得することも大切です。
また、介護が必要になったことを考え、どのような介護サービスを受けたいのか、そしてそれにはどれくらいの費用が掛かるのかも把握しておきましょう。
いずれにしても、老後資金の形成は早めに取り組むこと必要がある点をしっかりと認識しておくことが大切です。
出典
(※1)厚生労働省 第1回地域共生社会推進検討会 令和元年5月16日 参考資料1
(※2)総務省統計局 家計調査報告(家計収支編) 2020年(令和2年)平均結果の概要
(※3)厚生労働省 令和2年簡易生命表の概況より「1 主な年齢の平均余命」
(※4)総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2019年(令和元年)家計概要より「II 総世帯及び単身世帯の家計収支」
(※5)生命保険文化センター 介護にはどれくらい費用・期間がかかる?
(※6)金融広報中央委員会 「家計の金融行動に関する世論調査2021年」(単身世帯調査)
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員