更新日: 2022.04.19 セカンドライフ

増加する1人暮らしの高齢者、元気なうちに終活に備えを!

執筆者 : 黒木達也 / 監修 : 中嶋正廣

増加する1人暮らしの高齢者、元気なうちに終活に備えを!
家族の形態やライフスタイルが変化する中、1人暮らしの高齢者は増加傾向にあります。比較的自由な生活を享受できる半面、いざというとき身近に頼れる人がいない、経済的に破綻しないか心配だ、といった悩みもあるでしょう。
黒木達也

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

中嶋正廣

監修:中嶋正廣(なかじま まさひろ)

行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

長野県松本市在住。

1人暮らしの高齢者・それぞれの事情

これまでずっと未婚だった、子どもがおらず配偶者に先立たれた、子どもがいても遠方におり疎遠、などの事情で、1人暮らしをする高齢者は増加傾向にあります。
 
2020年(令和2年)の国勢調査を見ても、65歳以上の高齢者のうち、男性の約15%、女性の約21%にあたる人、約670万人が1人暮らしをしています。65歳以上の人口の約20%にあたります。ここ30年以上にわたり、増加傾向にあります。
 
1人暮らしの方が高齢になるにつれ、どのような心構えが必要でしょうか。それは、自分がどんな老後を迎えたいか、ついのすみかをどのようにしたいか、を考えておくことにもなります。
 
特に大切なことは、重い病気になる、認知症を発症する、といった精神的・肉体的な変調が起こる前に、情報をできるだけ集め、可能な限り自分で判断し、準備を進めることです。
 
他人を全面的に頼りにできない以上、自分の意思で決め、それに沿った行動をとることが求められます。また、そのことが安心感にもつながるかもしれません。
 

住まいをどうするかの選択

身体的な衰えが進むことを考慮して、住まいをどうするかは、元気なうちに決めておくことです。具体的には、まず現在の住まいに住み続け、必要に応じて介護サービスなどを受けるという選択肢があります。
 
その場合は、住まいがバリアフリーになっているかが問題です。比較的体が自由に動けるときはまったく気にならなかったことが、腰が痛い、膝が痛いといった症状が出てくると、生活面での自由が利かなくなってきます。
 
特に自宅の居間や廊下の段差をなくす、風呂場やトイレなどに手すりをつける、といった最低限のリフォームはしておきたいものです。その費用を事前に見積もっておきましょう。
 
老人ホームなど高齢者施設への入居も、選択肢になると思います。現在は入居可能な施設も多数あり、入居費用もかなり幅があります。介護度によりさまざまな施設も選択可能です。自分が何年生きるかも問題になりますが、入居施設の検討も重要です。
 
その際、自由に行動できるうちに、実際に施設を見学し、ある程度入居後の生活を実感しておくことをぜひともお勧めします。
 
その際、設備やサービスが同レベルでも、都心部の施設は高額で、郊外の施設ほど安く入居できる傾向があります。特に身内の来訪が少ないのであれば、郊外の施設に入居するのも良い選択になるかもしれません。
 

90歳までの収支計算をしてみる

自分が何歳まで生きるかの判断は、なかなかできません。しかし少なくとも90歳、可能であれば100歳まで生きる前提で、生活資金の予定収支表を作成しておきたいものです。
 
そのためには、現在持っている金融資産額、受け取り可能な年金額など収入面と、食費・住居費などの生活費、薬代を含む医療費、高齢者施設への入居費、自宅の修繕費など、これから予想される支出面を、具体的数字を書き入れてみましょう。
 
可能であれば、年代を追った収支の流れを点検し、何歳くらいまで手元の資金が持つのかを検討します。もし80歳前に預貯金が底をつき、年金収入だけで暮らすことになるのであれば、すぐにでも現在の生活プランを見直し、支出を抑えた生活スタイルに変更する必要があります。
 

病気、特に認知症へ備える

慢性の基礎疾患の悪化や、骨折など不慮の事故への備えも、想定しておく必要があります。高齢になるにつれ、医療費は確実に増加します。できればこうした経費も、考慮しておきたいものです。元気に活動できるときにこそ、将来に対するリスク管理を考えましょう。
 
最も気をつけたいのが、認知症対策です。病気に対する対応ももちろんですが、本人としてはあまり自覚がないうちに進行する危険があります。何よりも困ることは、お金の管理や不動産の契約などが、自分ではできなくなる可能性があります。
 
自分が認知症を発症することを前提に、遺言状の作成、成年後見人制度の利用などを念頭におき、準備したいものです。ただし、成年後見人制度を利用するには費用がかかります。成年後見人には、弁護士、司法書士などの専門家が選定されるケースが多いのですが、長期間にわたると経費もかなりかかります。
 
そのため最近では、単身者向けに、財産管理、身元引受業務から死後の手続きに至るまでを、代行してくれるNPO法人や民間事業者もあります。費用を含め良心的に対応してもらえるのかを、身近な知り合いや行政の協力を得て、契約をしておくと安心です。
 

人づき合いを欠かさず趣味も生かす

お金や病気の心配ばかりしていると、家に閉じこもる機会が多くなり、ますます気力、体力が低下してしまいます。
 
コロナが終息せずに、人と会う機会が制限されるかと思いますが、それでも、心の健康を維持するためには、親しい人と会う機会をつくる、1人で外出する機会をつくることは大切です。
 
親しい人との会話はもちろん、人と会う目的がなくても、外出することで地域の人との触れ合いや、街の変化から刺激を受けます。このことが認知症の予防にもかなり役立ちます。
 
例えば70歳の方は、自分が60歳のときと比較して、体力的な衰えは実感できるはずです。膝が痛い、腰が痛いといったことが日常的に起こります。コロナを恐れ外出を自粛することもあります。
 
だからといって気持ちも弱くなり、外出を控える、心配性に陥ることは避けたいものです。年齢が高くなるにつれ、体力の衰えは当然起こると考え、自分の趣味にさらに磨きをかけるなど、日常の中でできるだけ楽しみを見つけることが大切です。
 

出典

総務省統計局 令和2年国勢調査
 
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
 
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

ライターさん募集