更新日: 2022.04.29 定年・退職
退職金の相場を比較~会社員と公務員のモデルケース解説~
本記事は、会社員と公務員で退職金がどれだけ違うかを紹介します。
執筆者:川辺拓也(かわべ たくや)
2級ファイナンシャルプランナー
勤続年数と学歴別でみる退職金の相場
まずは退職金を勤続年数別で紹介していきます。当然ですが、勤続年数が長いほど退職金は多く支給されます。
勤続年数 | 大学・大学院卒 | 高校卒 | 高校卒(現業職) |
---|---|---|---|
20~24年 | 1267万円 | 525万円 | 421万円 |
25~29年 | 1395万円 | 745万円 | 610万円 |
30~34年 | 1794万円 | 928万円 | 814万円 |
35年以上 | 2173万円 | 1954万円 | 1629万円 |
出典:厚生労働省 平成30年就労条件総合調査 退職給付(一時金・年金)の支給実態より筆者が作成
厚生労働省が行った2018年の調査によると、勤続年数に応じて支給額が増えていることが分かります。さらに学歴でも高校卒が大学卒に比べて、219万円も退職金が少ないことも明らかになりました。
退職金の相場を紹介~会社員と公務員のケース~
大卒以上で勤続35年以上だと退職金は約2173万円であると明らかになりました。ただ、必ずしも受け取れる訳ではありません。そもそも退職金は勤務先の規模や規定で支給額が変わります。
会社員と公務員の相場をそれぞれ確認していきましょう。
・会社員のケース~注意しておきたい会社の規模~
会社員は企業の規模によって、退職金が変わる可能性があるので注意しましょう。厚生労働省の中央労働委員会は「資本金5億円以上」かつ「労働者1000人以上」の企業に限定して調査を行いました。
勤続年数 | 大学卒 | 高校卒 | 高校卒(生産) |
---|---|---|---|
20年 | 965万9000円 | 719万5000円 | 671万6000円 |
25年 | 1426万9000円 | 1122万4000円 | 1051万5000円 |
30年 | 2012万9000円 | 1537万2000円 | 1401万8000円 |
35年 | 2455万2000円 | 1984万2000円 | 1783万5000円 |
定年 | 2511万1000円 | 2379万2000円 | 2114万円 |
出典:厚生労働省 中央労働委員会 令和元年退職金、年金及び定年制事情調査より筆者が作成
勤続35年で比較しても、退職金は多くもらえる可能性が高いです。一方で、従業員数が299人以下の企業になると、退職金は一気に少なくなります。
勤続年数 | 大学卒 | 高校卒 |
---|---|---|
20年 | 425万円 | 333万2000円 |
25年 | 598万円 | 471万9000円 |
30年 | 785万6000円 | 622万7000円 |
定年 | 1118万9000円 | 1031万4000円 |
出典:東京都産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版) モデル退職金より筆者が作成
このように、退職金は会社の規模や状況で変動するので、同じ会社員でも会社の規模や規定に注意しましょう。
・公務員のケース~定年退職では民間より退職金が少ない場合も~
続いて公務員のケースを紹介していきます。公務員は福利厚生がしっかりしているイメージですが、会社員とどれほど違うか確認しておきましょう。内閣官房の調査で、国家公務員の退職金は35年以上の勤務で約2309万4000円であることが分かりました。
勤続年数 | 退職金額 |
---|---|
20~24年 | 1207万円5000円 |
25~29年 | 1516万円1000円 |
30~34年 | 2043万5000円 |
35年~39年 | 2309万4000円 |
出典:内閣官房 国家公務員退職手当実態調査(令和2年度)より筆者作成
規模が大きい会社員と比較すると、国家公務員の退職金はわずかに少ないです。地方公務員は国家公務員に準じた退職金が支給されるといわれますが、実際はどうでしょうか。
勤続年数 | 退職金 |
---|---|
11~24年の勤務で定年退職 | 1263万2000円 |
25年以上勤務後の定年退職 | 2200万7000円 |
出典:総務省 令和2年4月1日地方公務員給与実態調査結果より筆者作成
国家公務員と地方公務員では、定年退職までの在職期間で大きく金額が変わるといえます。25年以上の勤務で定年退職をすれば、国家公務員とほとんど同じ水準でした。
業種別にみる退職金の違い
退職金を業種別にまとめて紹介します。業種別では「金融・保険業」が最も退職金が多いことが分かります。また「生活関連サービス業、娯楽業」「サービス業(他に分類されないもの)」では、高校卒の退職金の方が上回る結果になりました。
業種別 | 大学卒 | 高校卒 |
---|---|---|
建設業 | 1313万8000円 | 1177万円 |
製造業 | 1148万7000円 | 1080万4000円 |
情報通信業 | 1154万5000円 | 864万9000円 |
運輸業、郵便業 | 893万2000円 | 821万9000円 |
卸売業、小売業 | 1088万4000円 | 1019万4000円 |
金融、保険業 | 1725万5000円 | - |
不動産業、物品賃貸業 | 1353万7000円 | - |
学術研究、専門・技術サービス業 | 1007万1000円 | - |
生活関連サービス業、娯楽業 | 1104万2000円 | 1129万6000円 |
教育、学習支援業(学校教育を除く) | 656万9000円 | - |
サービス業(他に分類されないもの) | 996万円 | 1019万2000円 |
出典:東京都産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版) モデル退職金より筆者が作成
退職金の相場から老後資産をイメージしておきましょう
会社員と公務員の退職金の相場を確認しました。勤続年数が長くなると一般的に退職金も増えます。
しかし、会社の規模や業種によっても大きく退職金は変わります。退職金がいくらもらえそうか、事前に把握しておくことをおすすめします。
退職金の相場を把握したうえで、老後を生活するために必要な資金としてどれだけ使えるのかシミュレーションする参考にしてください。
出典
厚生労働省 平成30年就労条件総合調査 結果の概況 退職給付(一時金・年金)の支給実態
厚生労働省 中央労働委員会 令和元年退職金、年金及び定年制事情調査
東京都産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版) モデル退職金
内閣官房 国家公務員退職手当実態調査(令和2年度)
総務省 令和2年4月1日地方公務員給与実態調査結果
東京都産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版) モデル退職金
執筆者:川辺拓也
2級ファイナンシャルプランナー