年金制度の概要を理解しよう 将来のために支払う年金保険料と、受け取れる年金について解説
配信日: 2022.04.29
この記事では、年金制度を支えるために「支払う年金保険料」と、年金制度の受益者としての「受け取る年金」に分けて、年金制度の概要を解説します。
保険料の未払いや年金の請求漏れを防ぐために、基本的な制度内容を理解しましょう。
執筆者:西岡秀泰(にしおか ひでやす)
社会保険労務士・FP2級
日本の年金制度
日本の公的年金は、「2階建て」といわれます。会社員や公務員は、「国民年金」と「厚生年金」の2つの制度に加入しているという意味です。
自営業者や専業主婦・主夫が加入するのは国民年金のみで、2階部分の保障は受けられません。
日本に住む満20歳以上60歳未満のすべての人は、国民年金に加入しなければなりません。未加入期間が長いと、必要な給付が受けられないこともあります。
将来受け取る年金のために支払う保険料
国民年金の加入者は、就労形態などによって次の3種類に分類されます。
●第1号被保険者:自営業者、学生など
●第2号被保険者:会社員、公務員など
●第3号被保険者:専業主婦など
種類ごとに保険料の金額や納付方法が異なります。
第1号被保険者
第1号被保険者は、「国民年金保険料」を支払います。
保険料は、収入に関係なく一律で月額1万6590円(2022年度)です。口座振替や銀行からの振り込みなどの方法で、保険料を納付します。
厚生年金加入者以外は、20歳になると自動的に第1号被保険者になるため、口座振替の手続きや学生納付特例の申請などを除くと、手続きは不要です。
しかし、勤め先を退職したなどの理由で第1号被保険者に変更する場合は、市区町村役場で手続きが必要です。
第2号被保険者
第2号被保険者は、会社員や公務員などの厚生年金加入者です。
保険料は、「厚生年金保険料」として、満70歳になるまで給与や賞与から天引きされます。保険料は収入によって異なります。
加入・脱退手続きや保険料の引き去りは勤務先の会社が行うため、自分でする必要はありません。
第3号被保険者
第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養される配偶者です。保険料の納付は不要です。
第2号被保険者全体で、第3号保険者の分の国民年金保険料に相当する金額を負担するからです。
第3号被保険者に加入するには、配偶者の勤務先での手続きが必要になるため、忘れずに届け出をしましょう。
受け取れる年金
公的年金に加入して所定の保険料を納付すれば、必要が生じたときにさまざまな給付が受けられます。主な給付は、老齢年金と遺族年金、障害年金の3つです。
老齢年金
老齢年金には、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の2つがあります。
老齢基礎年金は、年金制度加入者全員が受け取れる年金です。厚生年金に加入した人は、
老齢基礎年金に加えて、老齢厚生年金も受け取れます。最低10年以上の保険料納付が必要で、支給開始年齢は原則満65歳です。
老齢基礎年金の満額、つまり国民年金保険料を40年納付したときに受け取れる額は、年額で77万8000円(2022年度)です。
老齢厚生年金の金額は、厚生年金の加入期間や収入によって異なります。1年間に受け取る年金の額が100万円を超えることもありますが、加入期間が短ければ数万円の場合もあります。
遺族年金
遺族年金は、公的年金に加入している人(または加入していた人)が死亡した場合、その遺族に支給される年金です。「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2つがあります。
遺族基礎年金の支給対象者は、死亡した人の「子どものいる配偶者」または「子ども」です。子どもとは、満18歳になった年度の3月31日までにある人や障害等級1、2級に該当する20歳未満の人です。
厚生年金加入者(または加入していた人)が死亡したときに支給される遺族厚生年金の支給対象者は、配偶者や子どものほか、父母、孫、祖父母と広範囲です。
支給対象者には優先順位が決まっていて、支給対象者が複数いる場合、優先順位の高い人が受給します。
障害年金
障害年金は、病気やけがで生活や仕事などが制限されるようになった場合に、支給される年金です。
加入していた年金制度や障害の程度に応じて、「障害基礎年金」や「障害厚生年金」の一方、または両方が支給されます。
障害の程度は原則、病気やけがの初診日から1年6ヶ月後の日(障害認定日という)以降の状態で判断されます。
つまり、初診日から1年6ヶ月以内は、原則として障害年金はもらえないということです。
年金制度の概要を理解して、不足する保障を自助努力で準備しよう
公的年金は、年を取って働けなくなったときや生計を担っている人が、死亡したり障害を負ったりする場合に備えるためのセーフティーネットです。
ただし、加入手続きや保険料の納付を怠ると年金がもらえない場合もあります。
年金制度の概要を大まかにでも理解することで、公的年金でカバーできないリスクの存在を把握しましょう。その場合は、自助努力による備えが必要となります。
出典
日本年金機構 公的年金の種類と加入する制度
日本年金機構 老齢年金
日本年金機構 遺族年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 障害年金
執筆者:西岡秀泰
社会保険労務士・FP2級