更新日: 2022.05.12 介護
親の介護費用はどれくらいかかる? 利用できる制度はある?
また、少しずつ身体能力が落ちて要介護状態となったり、認知症になることも考えられるでしょう。親の介護費用はどれぐらいかかるのか、また介護に当たって利用できる制度についても紹介します。
執筆者:伊達寿和(だて ひさかず)
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員
会社員時代に、充実した人生を生きるには個人がお金に関する知識を持つことが重要と思いFP資格を取得。FPとして独立後はライフプランの作成と実行サポートを中心にサービスを提供。
親身なアドバイスと分かりやすい説明を心掛けて、地域に根ざしたFPとして活動中。日本FP協会2017年「くらしとお金のFP相談室」相談員、2018年「FP広報センター」スタッフ。
https://mitaka-fp.jp
介護にかかる費用と期間
介護にはどれぐらいの費用がかかり、期間はどの程度になるのでしょうか。
公益財団法人生命保険文化センターの「2021(令和3)年度 生命保険に関する実態調査」によると、介護にかかった費用は、一時的な費用の合計が平均74万円、月々の費用が平均8.3万円となっています。また、介護期間については平均で61.1ヶ月(5年1ヶ月)でした。
これらの平均から介護にかかる費用を合計すると約581万円となり、介護費用を考える上での目安となるでしょう。
なお、実態調査の結果では介護期間が4年未満のケースが約5割ですが、逆に4年以上も約5割となり、中には期間が10年以上になる場合もあります。費用について考えるときは、介護が長期間に及ぶ可能性があることにも注意が必要です。
介護に関して利用できる主な制度
2000年に介護保険法が施行されて介護保険制度が始まりましたが、利用できる主なものには介護保険のほか、働き方に関する制度もあります。
介護保険
介護に関して利用できる制度として、まず介護保険があります。介護保険は、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして創設されました。介護保険は社会保険方式で運営されており、被保険者は65歳以上の人(第1号被保険者)と、40歳~64歳の医療保険加入者(第2号被保険者)となっています。
65歳以上の人は、理由を問わず要支援・要介護状態になったときに、40歳~64歳の人は末期がんや関節リウマチなど、加齢による病気(特定疾病)が原因で要支援・要介護状態になったときに介護保険サービスを受けることができます。
介護保険サービスを受ける際、利用限度額の範囲であれば自己負担は原則1割です(65歳以上で一定以上の所得がある人は2割または3割)。また、利用限度額は介護度によって決められており、利用限度額を超えてサービスを利用した分については全額自己負担となります。
・要支援1:5万30円
・要支援2:10万4730円
・要介護1:16万6920円
・要介護2:19万6160円
・要介護3:26万9310円
・要介護4:30万8060円
・要介護5:36万650円
高額介護サービス費
介護保険サービスの自己負担割合は原則1割ですが、それでも自己負担額が高額になることがあります。そのため、所得に応じて負担限度額が決められています。
高額介護サービス費とは、1ヶ月に支払った利用者負担の合計が負担限度額を超えたときに、超えた分の払い戻しを受けられる制度です。医療保険の高額療養費の介護版と考えるといいでしょう。
負担限度額は所得の区分によって異なりますが、市町村民税の課税所得380万円(年収約770万円)未満のケースで4万4400円、世帯の全員が市町村民税非課税のケースで2万4600円となっています。
介護休業
仕事を続けながら親の介護をするには、介護サービスの利用が必要になりますが、介護の相談やサービスの利用手続きのために仕事を休まなければならない状況も発生します。そういった場合に利用したいのが介護休業です。
介護休業は、要介護状態にある家族を介護するための休業制度で、対象となる家族は配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。
利用できる期間・回数は、対象家族1人につき3回まで、通算93日までとなっており、まとめて93日の取得でも、2、3回に分けて取得することもできます。
介護休業期間中は、雇用保険の被保険者で一定の要件を満たす場合、休業開始時賃金月額の67%が介護休業給付金として支給されます。利用するには休業開始予定日の2週間前までに、勤務先へ書面などで申し出ることが必要です。
介護休暇
介護休暇は、要介護状態にある対象家族の介護や世話をするための休暇で、労働基準法の年次有給休暇とは個別に取得ができます。対象家族は介護休業と同じです。
取得できる日数は、対象家族が1人の場合は年5日まで、2人以上の場合は年10日までで、1日または時間単位での取得となっています。利用に当たっては書面などの提出に限定せず、口頭での申請も可能です。
介護休業で取得できる日数は最長93日ですので、自分で家族の介護を行うために利用する場合は日数が不足することが考えられます。そのため介護休暇は、介護サービスについての相談や手続きの際に利用したり、通院の付き添いで利用するなど、介護休業とうまく組み合わせることもポイントです。
相談窓口も確認しておこう
介護に関して利用できる主な制度を紹介しましたが、相談窓口も確認しておきましょう。介護保険関係の相談窓口は、お住まいの市区町村の担当課や地域包括支援センターです。地域包括支援センターは市区町村が運営の主体となっており、所在地も市区町村のホームページなどで確認できます。
早めに情報を収集して、いざ介護が必要になったときに備えておきましょう。
出典
厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システム 介護保険とは
厚生労働省 介護保険施設における食費・居住費と高額介護サービス費の負担限度額が令和3年8月1日から変わります
厚生労働省 介護休業制度
生命保険文化センター 2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査
執筆者:伊達寿和
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員