更新日: 2022.05.17 セカンドライフ
定年後に再雇用されたけど…。下がった分の給料を補填してくれる高年齢雇用継続基本給付金ってどんな制度?
パーソル総合研究所の資料「HITO REPORT(2021年11月号)」の『再雇用後の処遇の実態』によれば、年収が定年前より「50%より下がった」と回答した人が27.5%、「50%程度下がった」と回答した人が22.5%で、平均すると定年前よりも44.3%の年収の低下がみられる結果となっています。
こうした給料の低下をカバーしてくれるのが、高年齢雇用継続基本給付金です。今回は、この制度について詳しく解説してみます。
執筆者:堀江佳久(ほりえ よしひさ)
ファイナンシャル・プランナー
中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。
高年齢雇用継続基本給付金とは?
高年齢雇用継続基本給付金とは、60歳到達等時点に比べ、賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける60歳以上65歳未満の、一定の一般被保険者の人に支給される給付金の1つです。
この給付金の目的は、高年齢者の就業意欲の維持および喚起と、65歳までの雇用の継続を援助および促進、としています。
支給内容
(1)支給対象者
基本的には、賃金が低下した人へ支給される制度ですが、以下の3つの要件をすべて満たすことが必要です。
1. 60歳以上65歳未満の一般被保険者であること
2. 雇用保険を5年以上払っていた期間がある人
3. 雇用継続を受けた後の賃金が以前の75%未満になる人
(2)支給期間
支給対象となる人が60歳となった月から、65歳のなる月までが支給期間です。
(3)支給額
基本的に支給額は、60歳に到達する前6ヶ月間の平均賃金である「賃金月額」に対して、支給対象月の支払われた賃金額の低下率によって決まってきます。
低下率は、次の計算式で算定されます。
低下率(%)=支給対象月に支払われた賃金額÷賃金月額×100
1. 低下率が61%以下である場合
支給額=支給対象月に支払われた賃金額×15%
2. 低下率が61%を超えて75%未満である場合
支給額=(137.25/280)×賃金月額 +(183/280)×支給対象月に支払われた賃金額
(4)支給限度額と最低限度額
1. 支給限度額
支給対象月に支払われた賃金が36万584円以上の場合には、給付金は支給されません。
また、支給対象月に支払われた賃金額と算定された支給額の合計が36万584円を超える場合には、36万584円からその賃金を差し引いた額が支給されます。
2. 最低限度額
算定された支給額が2061円以下であるときは、給付金は支給されません。
(5)賃金月額が30万円である場合の支給額の例
1. 賃金が26万円に低下した場合
低下率(%)=26/30×100≒86.7%となり、賃金が75%未満に低下していないので、支給金は支給されません。
2. 賃金が20万円に低下した場合
低下率が66.7%となり、61%を超えて75%未満であるため、支給額=(137.25/280)×30万円 +(183/280)×20万円=1万6340円です。
3. 賃金が18万円に低下した場合
低下率が60%であり、61%以下であるため、支給額=18万円×15%=2万7000円です。
4. 賃金が8000円に低下した場合
低下率が2.67%であり、61%以下であるため、支給額=8000円×15%=1200円ですが、最低限度額の2061円以下ですので、支給金は支給されません。
(6)申請手続き
高年齢雇用継続基本給付金の申請手続きは、本人が希望する場合は、申請手続きを行うことも可能ですが、再雇用をする勤務先で行ってくれます。
会社で申請をしてもらえれば、細かい手続きを自分自身ですることは必要ありませんので、会社に任せておけば問題ありません。
詳細内容を知りたい人は、勤務先の担当部門に確認するとよいでしょう。
出典
パーソル総合研究所 「HITO REPORT(2021年11月号)」より 再雇用後の処遇の実態(P.8)
厚生労働省 高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続きについて
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー