〈リタイアメントプラン〉①リタイア後のプラン、まずは把握したい3つのポイント
配信日: 2017.12.19 更新日: 2019.03.12
執筆者:福島えみ子(ふくしま えみこ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
マネーディアセオリー株式会社 代表取締役
リュクスセオリーFPサロン 代表
大学卒業後、都市銀行に入行。複数の銀行、法律事務所勤務中に、人生の悩みは結局のところお金と密接に関係することを痛感、人生をより幸せで豊かにするお手伝いがしたいとファイナンシャルプランナーに。FP会社にて勤務後、独立。これまで500件以上の個人相談を担当すると共に、セミナー、執筆と幅広く活動。相続・資産運用・住宅相談・リタイヤメントプラン等を得意とし、個人相談にも力を入れる一方で、セミナーや企業研修、執筆を通じてわかりやすくお金の知識を発信することに注力している。
まずは、この3つのポイントの把握から
“リタイア=定年退職”が間際に迫ってからあわててリタイア後のマネープランを立てるのではなく、できるだけ前もって、じっくり家族とも話し合ったうえでリタイアメントプランを組んでおきたいもの。リタイアがすぐそこに見えてきてからの準備では、間に合わないことも多いからです。
リタイアメントプランを立てるそもそもの第1歩ともいうべきが、以下の3つの把握です。
≪リタイア後に≫
① 入ってくるお金
② 出ていくお金
③ もしものときのためのお金
リタイア後に「入ってくるお金」は?
リタイア後に「入ってくるお金」をしっかり把握しきれている人は、意外に多くはありません。老後入ってくるお金といえば、公的年金や退職金をまずイメージしがちですが、例えば各種企業年金や確定拠出年金、国民年金基金などの各制度に加入履歴があっても受け取る手続きを忘れてしまっている人も時おり見られます。リタイア後のマネープランのご相談にいらしてご一緒に確認していると「ああ、そういえば」というお金が結構あるのです。また、不動産の家賃収入などの副収入も忘れずプランに入れておきたいところです。
そして、ここで、「入ってくるお金」が意外に少ないことがわかったら、リタイア後も何らか働いて収入を得る方法を考えることも必要です。
出ていくお金、自分の場合は?
「老後にかかるお金、普通はどれくらいなの?」とはよく聞かれる質問ですが、じつは人によって差の出る部分です。また、よくお聞きするのが、「定年後は生活費も落としてつつましく生活するから大丈夫」という言葉ですが、何百といったご家庭の家計を見てきた実感でいえば、それができるご家庭ばかりではありません。お金の使いどころや価値観、金銭感覚はリタイアしたからといって、急にはなかなか変わりません。例えば、食費ひとつとっても、お醤油などの調味料を上質なものを使う習慣のあるような、ちょっといいものを口にしてきたようなご家庭が、急にそれらをランクダウンしても長続きしないことも往々にしてあります。現役時代をベースに生活費を見込んでおくか、もしくは現役時代のうちに徐々に金銭感覚をシフトしておくのがコツです。
ほかには、「リタイア後は現役時代と違ってスーツ代もいらないし、おつき合いのお金も減るから大丈夫」という言葉もよくお聞きしますが、たしかにそれらはいらなくなっても、また違う種類のお金がかかってくるのがリタイア後です。年齢を重ねると何かと身体に不調が出てくる人も少なくありません。持病で何らか病院や接骨院通いをしたり、健康食品にお金がかかったり。そして、時間はたっぷりあるので、リタイア世代同士のおつき合いや習い事にお金がかかるという場合もありえます。
また、昨今は晩婚化の影響で、自分は定年退職したけれど子どもはまだ大学生という家庭も見られます。そうなると、すでに子どもの手が離れた家庭とは、生活費が大きく違ってきます。さらには、持ち家なのかそうでないかによっても、家賃分、生活費に差が出ます。こういった具体的なイメージで、「出ていくお金」を把握していかないと、いざリタイア生活が始まってからのマネープランが狂ってしまうのです。
もしものときのお金が抜け落ちている
さらに、リタイア生活のお金を考えるときに、「もしものときのお金」が抜け落ちていらっしゃる方が少なくありません。例えば、病気になったとき、介護状態になったとき、さらにはお葬式のお金などです。特に介護状態になったときのお金は、いざ介護状態になったときに施設での介護を望むのか、自宅介護を望むのかでも、見込んでおくお金は異なってきます。
ちなみに、昨今は、リタイア生活を海外でというご希望も多いのですが、海外でのゆったりした生活は思い描いても、海外で病気になったら海外でどこまで治療を受けるのか、日本に帰国して治療を受けるのか、そして最期の時は?それらにかかる費用は?まで見込んでいらっしゃる方ばかりではありません。これらを見込んでいないと、いざというときに進退極まる、つまりお金的に行き詰ってしまうこともあるのです。
ご自身の場合はいかがでしょうか?これらの3つのポイントをふまえながら、まずは「自分の場合は?」と、リタイア後の生活を具体的にイメージしておきたいものです。