更新日: 2022.05.27 セカンドライフ

増える40代~50代の「おひとりさま」。将来のリスクやかかる費用はどのくらい? その対策は?

執筆者 : 藤丸史果

増える40代~50代の「おひとりさま」。将来のリスクやかかる費用はどのくらい? その対策は?
最近は結婚を選択しない人が増え、まわりに40代~50代のおひとりさまも増えたと感じる人もいるのではないでしょうか。
 
いわゆる「生涯未婚率」は、50歳時点で一度も結婚していない人の割合を指しますが、内閣府の「令和3年版 少子化社会対策白書」では、この生涯未婚率が2040年には男性で29.5%、女性で18.7%になると予測されています。
 
もちろん、結婚するかしないかは個人の自由で、その選択は尊重されるべきことですが、シングルの人生を選んだ場合に起こり得るリスクや、その対策について知っておくことは大切でしょう。
 
そこで今回は、現在40代~50代のおひとりさまの老後で想定されるリスクや、必要となる費用を確認してみたいと思います。
藤丸史果

執筆者:藤丸史果(ふじまる あやか)

ファイナンシャルプランナー

相続、投資信託など、身近なファイナンスを中心に活動している。

おひとりさまの現状

まずは40代~50代のおひとりさまの状況について、男女別の未婚率の推移や時代背景などから考えてみます。
 

40代~50代の未婚率とその要因

近年の国勢調査によると、40代前半で未婚の人は、2000年(平成12年)では男性で18.4%でしたが、2020年(令和2年)には32.2%になっています。女性は2000年で8.6%だったのが、2020年には21.3%になっており、その他の年齢でも40代~50代の未婚者は以前より増えています。
 
理由はさまざまですが、高度成長期前に多かった見合い結婚が減り、その後に増えた職場結婚も1990年代頃から減少しました。最近はマッチングアプリなどで出会う人も増えているようですが、出会いの場は全体的に減っているのかもしれません。
 
女性の場合、以前は結婚によって生活の安定を図ることが一般的と考えられていましたが、最近では就業率が高まり、結婚を選択しなくても自立して生きられる人が増えたことも要因の1つといえるでしょう。
 

経済力の低下も未婚率増加の原因か

一方、男性については高収入や安定した収入を得ている人もいますが、近年は非正規労働者も増加し、未婚率も高くなっています。
 
正社員であれば、50代に向けて上昇する年功賃金で住宅ローンも組みやすく、子どもの教育費なども賄えますが、非正規雇用では賃金の上昇が見込みにくく、結婚したくても踏み切れないといった現状が指摘されています。
 
現代では自由に生きることを重視して、積極的に結婚しない選択をする人も増えています。しかし未婚率とともに、親と同居するシングルが以前より増えているというデータもあり、親の介護などの事情もあるにせよ、未婚者の経済力の低下は結婚を遠ざける一因と考えられています。
 

シングル世帯で今後に想定されるリスクと費用

では、おひとりさまが今後も1人で生活する場合、どういった備えが必要になるのでしょうか。具体的に考えられるケースと費用について確認していきます。
 

病気やケガをしたとき

高齢になると、親など頼れる親族がいなくなることが多いため、病気やケガをした際にヘルパーを利用する費用、入院時の保証人や身元引受人の委託費用などがかかります。
 
ヘルパーなどの看護に伴う費用は月額で平均5万円程度、保証人・身元引受人の委託費用は35万円~100万円程度を見込んでおく必要があります。
 

認知症への備え

認知症になると介護費用がかかるだけでなく、お金の管理などを自分で行うのが難しくなるので、任意後見制度を利用して任意後見人を選んでおき、あらかじめ契約した内容について支援を受ける、さらには施設に入居する手続きに同伴してもらうための費用などがかかります。
 
任意後見人の契約料は10万円強ですが、月額の報酬で1万円~6万円ほどがかかり、施設入居の手続きの同伴の費用は5万円~10万円ほどです。また、在宅介護では、リフォームや設備を整えるための一時的な費用の平均で50万円以上、月額の介護費用で4万円~5万円がかかります。
 

葬儀、お墓、遺品整理に必要なお金

頼める親族がいない場合は、万が一に備えて葬儀費用などのほか、死後に行う事務手続きについて第三者に委託することも考えておきましょう。
 
例えば、自宅葬にかかるお金は40万円~100万円程度ですが、お墓・納骨の費用についてはお寺によって幅があり、数万円~数十万円がかかります。それに加え、永代供養には20万円~50万円、さらに管理料が年1万円~3万円ほど必要になります。
 
また、遺品などの処分を業者へ依頼した場合の費用は、内容にもよりますが10万円~100万円ほどで、これらを後見人に依頼する場合には数万円以上の謝礼も用意しておきます。
 

老後の生活に備えて今からできる対策

家族がいる人に比べ、将来のリスクに対する備えを多く見積もっておく必要もあるシングル世帯ですが、40代~50代の現役世代の人は、必要となる費用や今後の生活で注意しておきたい点を知っておき、健康に留意して長く働き続けることで貯蓄を増やすなど、老後の準備や対策ができれば心配は減らせるかもしれません。
 

副業など働き方の工夫で収入や貯蓄を増やす

非正規雇用の人などで、老後に向けて40代以上から収入や貯蓄を増やしたいと考える場合は、正社員を目指すことはもちろん、副業や兼業で複数の収入源を確保するのもいいのではないでしょうか。
 
例えば、現在は趣味や特技を生かしたスキルをインターネットで売ることもできますし、クリエーターやライターなどフリーランスという働き方をする人も増えています。
 

シングルのまま高齢になったら住まいの確保は重要

シングルの人が他に気をつけるべきこととして、老後の住まいが挙げられます。現在は会社勤めなどで賃貸住宅に住んでいる場合、老後も今と同じように家賃を払い続けることができるのか、今後のライフプランや収入の見込みを基に試算しておきましょう。
 
また、賃貸では「空室があっても高齢の単身者には貸さない」と考える大家が多いことも知っておいてください。
 
住まいを確保する対策として住宅の購入を検討する場合は、頭金を払っても当面の予備費用として400万円以上の貯蓄が手元に残るか、65歳までには住宅ローンを完済可能か、突然の病気などのリスクも考慮し、無理なく購入できるかどうかよく考えることが重要です。
 

孤立しやすい老後のシングル男性

一人暮らしの男性は女性に比べて孤立しやすく、悩みがあっても誰にも相談できないと感じている人が多いといわれています。
 
高齢者の自殺者数では女性より男性が多くなっており、老後にお金のことなどで不安を抱え、孤独感を深めることのないよう、人的ネットワークを意識して作っておくことも頭に入れておく必要があります。
 
学生時代の友人や共通の趣味をもつ人との交流のほか、地域の活動やボランティアに積極的に参加してみるなど、近隣の人間関係にも気を配っておくと老後の生活の安心にもつながるのではないでしょうか。
 
また、自治体の中には男性向けの各種の相談窓口を設置しているところがあり、おひとりさまの終活を支援する取り組みなども行われています。
 

まとめ

今回は40代~50代のシングルの人にとって、老後に考えられるリスクと対策についてお伝えしました。
 
早い段階から必要な費用などを知っておけば、それだけ対策もしやすくなります。安心して老後を迎えるために、今からしっかりと考えておきたいですね。
 

出典

内閣府 少子化社会対策白書
総務省統計局 令和2年国勢調査 人口等基本集計結果 結果の概要
 
執筆者:藤丸史果
ファイナンシャルプランナー

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