更新日: 2022.06.07 定年・退職

「60歳」で定年するのと「65歳」ではどう変わる? 考えたいお金のこと

「60歳」で定年するのと「65歳」ではどう変わる? 考えたいお金のこと
60歳は還暦といわれるように、人生において、さまざまな意味で区切りをイメージする年齢です。会社員の定年もその1つですが、高年齢者雇用安定法の改正により、これからは定年が65歳以降になるケースも増えてくるでしょう。
 
60歳で定年するのと、65歳で定年するのとでは、お金の面でどのような違いが出てくるのでしょうか。働き方や年金、家計の面から考えていきます。
伊達寿和

執筆者:伊達寿和(だて ひさかず)

CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員

会社員時代に、充実した人生を生きるには個人がお金に関する知識を持つことが重要と思いFP資格を取得。FPとして独立後はライフプランの作成と実行サポートを中心にサービスを提供。

親身なアドバイスと分かりやすい説明を心掛けて、地域に根ざしたFPとして活動中。日本FP協会2017年「くらしとお金のFP相談室」相談員、2018年「FP広報センター」スタッフ。
https://mitaka-fp.jp

60歳定年と、その後の働き方

高年齢者雇用安定法の改正(令和3年4月1日施行)では、それまでの65歳までの雇用確保(義務)に加えて、70歳までの就業機会の確保(努力義務)が追加されました。65歳までの雇用確保(義務)については、次のとおりです。
 

・60歳未満の定年禁止

定年を定める場合は、年齢を60歳以上としなければなりません。
 

・65歳までの雇用確保措置

定年を65歳未満に定めている事業者は、以下のいずれかの措置を講じなければなりません。


(1)65歳までの定年引き上げ
(2)定年制の廃止
(3)65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入(適用者は原則として希望者全員)

現在勤めている会社が60歳定年の場合、その後の働き方としては次の選択肢があります。


・60歳で退職して働かない。または働いてもアルバイト程度にする
・65歳までの継続雇用制度の適用を希望して働き続ける
・60歳で退職し、再就職や独立開業をする

定年までのキャリアなどが役に立つことを考えると、同じ会社で継続雇用を希望するケースが多いでしょう。一方で、これまでのスキルや人脈を生かして新たな仕事にチャレンジする人もいるかもしれません。
 

60歳で定年するケース

60歳で定年するケースでは、それ以降の収入について考える必要があります。定年以降はそれまでと異なり、収入面で不確定な要素が増え、家計が不安定な状況になる可能性もあります。
 
60歳で定年退職してから再雇用となる場合でも、それまでとは給与などが大きく変わることが想定されます。例えば、出勤日数の減少や給与水準の低下などによって条件が悪くなるケースもあるでしょう。
 
また、再就職や独立開業を考えている場合は、新しい就職先が見つかるかどうか、開業した事業が収益を上げられるかなどの心配もあります。
 
老後の安定収入として期待できるのが公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)ですが、受給できるのは原則65歳からで、受給開始まで5年間待つことになります。60歳で定年するケースでは、この収入の不安定な時期への対応がポイントになります。
 
定年時のまとまった収入として退職金がある場合、退職金を含めた貯蓄を計画的に取り崩す方法があります。取り崩す金額は、年金の受給が始まる65歳以降に取り崩す分を確保した上で決めるのがいいでしょう。
 
もし5年間で貯蓄を使い切ってしまうと、65歳以降は年金の範囲で生活することになってしまうからです。また、勤務先に企業年金があり、定年後にその受給が始まるケースや、確定拠出年金の年金受給を選んだ場合は、公的年金にプラスできる定期的な収入となります。
 
そのほかにも公的年金の繰上げ受給という選択肢もありますが、60歳で繰上げ受給をすると本来の年金額より24%の減額になってしまいますので、慎重に判断しましょう。
 

65歳で定年するケース

65歳で定年するケースでは、60歳以降に給与が減ることも考えられますが、雇用や定期的な収入という面では比較的安定するでしょう。65歳で定年すると、ちょうど年金の受給が始まるタイミングとなるので、収入の空白期間がなくなる点でも安心です。
 
また、60歳から65歳まで会社員である場合は、引き続き厚生年金に加入するため、給与に応じて将来の厚生年金の受給額が増加するメリットもあります。定年が65歳のケースで注意したいのが退職金です。
 
これまで60歳での定年と同時に退職金が支給されていた会社では、定年が65歳に延長される場合、退職金がいつ支給されるのかは重要なポイントです。退職金の制度は会社によって異なりますので、制度に変化がないか確認しておきましょう。
 
近年の晩婚化により、60歳でもまだ高校生、大学生のお子さまがいるご家庭や、住宅ローンの返済が続いているケースもあります。教育資金や住宅資金について、退職金でまとめて支払うことを考えている場合は注意しましょう。
 
退職金の支給が、これまでどおり60歳であれば問題ありませんが、65歳で定年することによって支給時期がシフトした場合は、想定していたタイミングで期待したお金が入ってこないことになります。この場合、例えば教育資金の工面のためにローンなどを利用する必要に迫られるかもしれません。
 

60歳から65歳までの収支について考えておきましょう

年金の受給は原則65歳からとなるので、特に60歳で定年する場合は、65歳までのお金のやりくりが重要になります。
 
まずは定年後に収入がどれぐらい見込めるか、支出がどれぐらいかかるかを考え、収支を計算しましょう。その上で、退職金や貯蓄の取り崩しでカバーできるのか確認しておくと、定年後の働き方や生活を考える参考になるでしょう。
 

出典

厚生労働省 高年齢者雇用安定法 改正の概要
日本年金機構 年金の繰上げ受給
 
執筆者:伊達寿和
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員

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