更新日: 2022.06.25 定年・退職

定年後の「再就職」と「再雇用」は何が違うの? お金の面での違いはある?

定年後の「再就職」と「再雇用」は何が違うの? お金の面での違いはある?
人生100年時代といわれ、リタイア後の生活が長くなる時代です。リタイア後に特に予定がなければ、長く働き収入を得ることも視野に入れていく時代だと考えます。そこで、今回は定年後の働き方について「再就職」と「再雇用」の比較をしてみたいと思います。
 
上山由紀子

執筆者:上山由紀子(うえやま ゆきこ)

1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者

1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者 鹿児島県出身 現在は宮崎県に在住 独立系ファイナンシャル・プランナーです。
 
企業理念は「地域密着型、宮崎の人の役にたつ活動を行い、宮崎の人を支援すること」 着物も着れるFPです。
 

再就職とは? 再雇用とは?

「再就職」とは、今まで働いてきた職場を退職し、別の職場で新しい仕事に就くことです。「再雇用」とは、今まで働いてきた職場で引き続き働くことです。
 

「再就職」と「再雇用」のメリット、デメリットは?

再就職と再雇用、どちらも一般的に給与は下がりますが、それは働く会社の方針で変わると思います。では、ほかにどんなメリット・デメリットがあるか考えてみましょう。

〇再就職

メリット
●好きな仕事に就ける可能性がある
●65歳になっても働ける可能性がある
 
デメリット
●新しい仕事を覚える必要がある
●仕事を探すのは容易ではない

 

〇再雇用

メリット
●慣れた職場で仕事が続けられる
●新しい仕事を探さなくてよい
 
デメリット
●今までの部下の下で働くことになる
●今までの部署ではなく、別な仕事をすることになるかもしれない

 
このように、一般的に考えられるメリット・デメリットを上げてみました。これらのメリット・デメリットを踏まえ、あなたの職場ではどのくらいの賃金になるのかなど、早期に調査しておくことをお勧めします。
 

「再就職」と「再雇用」、もらえる給付金は?

再就職と再雇用において、もらえる給付金があります。再就職には「再就職手当金」と「高年齢再就職給付金」があり、この2つは併用できません。一方再雇用には「高年齢雇用継続基本給付金」があります。これらを説明します。なお、高年齢再就職給付金と高年齢雇用継続基本給付金は「高年齢雇用継続給付」に該当します。
 

再就職手当金とは?

会社を辞めたときには、長年掛けてきた雇用保険が受けられます。一般的に、この雇用保険から失業保険(以下、基本手当)の手続きをして次の就職につないでいきます。
 
基本手当をもらいながら仕事を探し、就職が決まったときに基本手当の残っている日数により再就職手当金がもらえます(※1)。
 

(1)所定給付日数の3分の1以上残して再就職した場合は支給残日数の60%
(2)所定給付日数の3分の2以上残して再就職した場合は支給残日数の70%

 
例えば、Aさんが基本手当日額4000円で所定給付日数が210日だった場合を考えてみましょう。
 
(1)受給資格決定日以後130日目に就職した場合は、支給残日数が88日(待機期間7日の翌日からの日数)
 4000円×88日×60%=21万1200円
 
(2)受給資格決定日以後60日目に就職した場合は、支給残日数が158日(待機期間7日の翌日からの日数)
 4000円×158日×70%=44万2400円
 
以上が再就職手当金の額となります。
 
また、再就職手当金を受けた人で、再就職先に6ヶ月以上雇用されその間の賃金が離職前の賃金よりも低い場合には、基本手当の支給残日数の40%を上限として低下した賃金の6ヶ月分を支給するものもあります(※2)。
 

高年齢雇用継続給付とは?

上記のとおり、高年齢雇用継続給付は2つの種類があり、再就職の場合は高年齢再就職給付金、再雇用の場合は高年齢雇用継続基本給付金が、要件を満たすと支給されます(※3)。
 
それでは、支給要件等をそれぞれ確認してみましょう。
 

高年齢再就職給付金とは?

(支給を受けることができる人)

基本手当を受給した後、60歳以降に再就職して、再就職後の各月に支払われる賃金が基本手当の基準となった賃金日額を30倍した額の75%未満となった人で以下の要件を満たした人
 
〇基本手当について算定基礎期間が5年以上あること
〇再就職した日の前日における基本手当の支給残日数が100日以上あること
〇安定した職業に就くことにより被保険者となったこと

 

(支給を受けることができる期間)

〇再就職した日の前日における基本手当の支給残日数で異なります
・200日以上の場合は、再就職日の翌日から2年を経過する日の属する月まで
・100日以上200日未満の場合は、再就職日の翌日から1年を経過する日の属する月まで

 
ただし、65歳に達した場合は上記の期間にかかわらず65歳に達した月までとなります。また、各暦月(支給対象月)の初日から末日まで被保険者であることが必要です。

 

高年齢雇用継続基本給付金とは?

(支給を受けることができる人)

〇被保険者であった期間が通算して5年以上ある被保険者
〇60歳到達後も継続して雇用されていること
〇60歳以後に各月に支払われる賃金が原則、60歳到達時点の賃金月額の75%未満であること

 

(支給を受けることができる期間)

〇被保険者が60歳に到達した月から65歳に達する月まで
〇各暦月(支給対象月)の初日から末日まで被保険者であることが必要

 

高年齢雇用継続給付の支給額は?

高年齢雇用継続給付の支給額は、原則として60歳時点と比較して、60歳以後の賃金が60歳時点の75%未満となっていることが必要です。
 
支給額は支給対象月ごとに、その月に支払われた賃金の低下率に応じて計算式が変わります。
 
低下率の計算式は次のとおりです。
低下率(%)=支給対象月に支払われた賃金額÷賃金月額×100
 
例えば、Bさんの賃金月額が35万円だった場合で計算してみます。
 
(1)支給対象月に支払われた賃金が31万円の場合
88.57%=31万円÷35万円×100
賃金が75%未満に低下していないので支給されません。
 
(2)支給対象月に支払われた賃金が25万円の場合
71.43%=25万円÷35万円×100
低下率が71.43%で61%を超えていますので、金額を以下の計算式に当てはめて計算します。
 
支給額=-183/280×支給対象月に支払われた賃金額+137.25/280×賃金日額
 
8170円=-183/280×25万円+137.25/280×35万円
 
(3)支給対象月に支払われた賃金が20万円の場合
57.14%=20万円÷35万円×100
低下率が57.14%で61%以下のときは以下の計算式になります。
 
支給額=支給対象月に支払われた賃金額×15%
3万円=20万円×15%
 
(4)支給対象月に支払われた賃金が1万円の場合
2.86%=1万円÷35万円×100
低下率が2.86%で61%以下なので、(3)の計算式に当てはめます。
 
支給額=支給対象月に支払われた賃金額×15%
1500円=1万円×15%
となりますが、最低限度額の2016円以下であるときは支給されません。
 
このように対象月に支払われた賃金によって支給される金額が異なります。支払われる賃金が分かれば計算してみるとよいでしょう。
 

まとめ

リタイア後の生活が長くなる時代です。できるだけ長く働くように考えておきたいものです。今回は退職して再就職の場合と引き続き同じ職場で再雇用の場合で、働き方を考えるときのお金の面での比較をしてみました。これを参考に、再就職か再雇用かの判断に活用してみてはいかかでしょうか。なお、再就職の場合は給付に申込期限などがありますので、早めの手続きをお勧めします。
 
また、特別支給となる老齢厚生年金の支給を受ける人が高年齢雇用継続給付も受ける場合、標準報酬月額の6%相当の年金額が支給停止になることもありますので、詳しくは年金事務所にお問い合わせください。
 

出典

(※1)厚生労働省・都道府県労働局・公共職業安定所(ハローワーク)・地方運輸局 雇用保険受給資格者のみなさまへ 再就職手当のご案内
(※2)厚生労働省・都道府県労働局・公共職業安定所(ハローワーク)再就職手当を受給した皆さんへ 再就職後の賃金が、離職前の賃金より低い場合には「就業促進定着手当」が受けられます
(※3)ハローワークインターネットサービス 高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続きについて

 
執筆者:上山由紀子
1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者
 

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