更新日: 2022.06.30 セカンドライフ

「もうすぐ60歳です」60歳以降はどう働くべき? 「高年齢雇用継続給付」は受給できる?

執筆者 : 勝川みゆき

「もうすぐ60歳です」60歳以降はどう働くべき? 「高年齢雇用継続給付」は受給できる?
長い人生、働くことは生きていく上で必要不可欠なことであり、働き方は多くの人の悩みです。
 
特にセカンドライフを見据えた60歳以上の人は、「何歳まで働いたら良いのか」「60歳以降どんな働き方をしたら良いのか」と考えるでしょう。
 
本記事では、雇用保険に加入している60歳以上の労働者に関係する「高年齢雇用継続給付」について解説するとともに、60歳以降の働き方について考えます。
勝川みゆき

執筆者:勝川みゆき(かつかわ みゆき)

ファイナンシャルプランナー2級・AFP

高年齢雇用継続給付とは

高年齢雇用継続給付とは、雇用保険に入っている人が受けられる制度であり、「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の2つがあります。
 
2つの違いは、「高年齢雇用継続基本給付金」は、雇用保険の基本手当を受給していない人が受給する給付金であり、「高年齢再就職給付金」は雇用保険の基本手当を受給し再就職した人が対象となる給付金です。
 

受給要件

受給するためには、次の要件を満たす必要があります。

・60歳以上65歳未満の一般被保険者である
・被保険者であった期間が5年以上ある
・賃金が60歳時点の賃金と比べて75%未満となっている
・「高年齢再就職給付金」の場合、再就職の前日における基本手当の支給残日数が100日以上ある

 

支給額

支給額は対象月ごとに、その月に支払われた賃金の低下率に応じて計算されます。低下率は、次のように求められます。

支給対象月に支払われた賃金の額÷60歳に到達する前6ヶ月の平均賃金(60歳以降に受給資格が確認された場合は、その日前6ヶ月の平均賃金)×100


低下率が61%以下の場合は、支給額は支給対象月に支払われた賃金額×15%です。低下率が61%超75%未満の場合は、その低下率に応じて、支払われた賃金額×15%に満たない額が支給されます。
 
ただし、みなし賃金で算定される場合や支給限度額以上の場合、最低限度額以下の場合には、支給額が減額されたり、支給されなかったりすることがあるため、注意が必要です。
 

支給期間

・「高年齢雇用継続基本給付金」
被保険者が60歳になった月から65歳になる月まで支給を受けることができます。ただし、対象となる月の初日から末日まで被保険者であることが必要です。
 
・「高年齢再就職給付金」
再就職した日の前日における基本手当の支給残日数が200日以上のときは、再就職日の翌日から2年を経過する日の属する月までとなり、100日以上200日未満のときは、再就職日の翌日から1年を経過する日の属する月までの支給となります。
 
ただし、被保険者が65歳に達した場合は、期間にかかわらず65歳になる月までの支給です。また、対象となる月の初日から末日まで被保険者である必要があります。
 

今後の方向性

「高齢者等の雇用の安定等に関する法律」の一部改正により、2025年4月1日以降、新たに60歳となる労働者への、高年齢雇用継続給付の給付率が、最大15%から10%に縮小されます。
 
これは、高年齢者の雇用確保措置の進展を踏まえて行われるものです。「年金制度改正法」(2020年6月5日公布)が成立し、60歳以降に働きながら年金をもらう場合でも、年金額が減額されにくくなりました。さらに、65歳以降も厚生年金に加入しながら働き続けた場合、もらえる年金額が毎年1回定時に改定され、すぐに反映されるようになりました。
 
また、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の一部改正(2021年4月1日施行)により、70歳までの就業機会の確保が事業主の努力義務とされています。
 
これらの制度改正により、高年齢者の労働環境の確保が進められています。高年齢者もできるだけ長く働き続けられることが求められているため、今後、高年齢雇用継続給付はさらに縮小されていく可能性はあります。ただ、60歳を過ぎても、雇用の機会や働く場所は増え、雇用環境は良い方向に整備されていくと考えられます。
 

60歳以降の働き方を考える

総務省統計局の労働力調査によると、2022年4月の60歳~64歳の就業率は男性で84.7%、女性で61.0%です。年ベースで見ますと、60歳~64歳の就業率は年々増加しています。65歳以上の就業率(2022年4月)は、男性で33.5%、女性で18.0%となっています。
 
60歳以降の働き方として考えられるのは、働いていた会社でそのまま働き続ける、もしくは転職し新しい会社で働く方法です。さらに、副業で収入を増やす働き方もあります。
 
65歳まで働き、その後は年金生活とするのか、65歳以降も年金をもらいながら、または繰り下げ受給し働き続け年金額を増やすのか、選択肢はさまざまです。65歳以降も厚生年金に加入し会社員を続けるのであれば、受け取れる年金額は増えていきます。
 
どのような働き方を選ぶにせよ、大切なことは、老後の生きがいとなるような働き方をすることではないでしょうか。高年齢者も働くことが求められるこれからの時代、60歳以降、何のために働くのか、どのように働くのかを定年前から考え、早くから備えておくことが、老後の安定した幸せな生活につながるでしょう。
 

出典

厚生労働省 雇用継続給付について 高年齢雇用継続給付についてのリーフレット
厚生労働省 雇用保険制度 高年齢雇用継続給付の改正と新助成金の概要について
厚生労働省 高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~
厚生労働省 年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました
総務省統計局 労働力調査(基本集計) 2022年(令和4年)4月分結果
 
執筆者:勝川みゆき
ファイナンシャルプランナー2級・AFP

ライターさん募集