更新日: 2022.07.13 定年・退職

シニア人材の定年退職後の労働実態 労働時間も基本給も定年退職時より大幅減?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

シニア人材の定年退職後の労働実態 労働時間も基本給も定年退職時より大幅減?
人口が減少して超高齢化社会に入った日本では、元気であればリタイア後のシニアも働き続ける必要性が高まってきています。企業にもシニア人材の雇用の機会が求められるようになりました。
 
しかし、その労働実態はどうなっているのでしょうか。この記事ではシニア人材は定年退職時に比べ、その労働時間や基本給がどのように変化しているかについてのデータについて詳しく解説します。
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シニア人材の定年退職後の働き方

まず「高年齢者雇用安定法」について説明します。この法律の正式名称は「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」で、初めは1971年に少子高齢化に備えて高年齢者が働く環境整備のため「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」の名称で制定されました。
 
その後1986年に現在の名称に変更されています。その内容は2012年に改正され、労働者が希望すれば65歳まで働ける環境が整いました。
 
また、2021年4月1日に施行された「改正高年齢者雇用安定法」は、企業に70歳までの高齢者の就業機会の確保を努力義務化する法律です。このように法律も制定され、働くことを希望すれば定年退職後のシニアが再雇用や再就職によって働ける間口はかなり広くなっているといえるでしょう。
 
少子化によって働き手の減少しつつある時代、シニア人材は企業側にとっても人手不足を解消するための手段となるはずです。
 

シニア人材の労働時間・基本給など、待遇の実態とは

では、定年退職後に同じ会社に再雇用された場合、その実態はどのようになっているのでしょうか。定年退職時と再雇用後の労働時間と基本給の変化を比較してみます。再雇用であれば同じ会社で引き続き勤務ができるため、新しく仕事を探すことなくこれまでのスキルやキャリアをいかして働くことができます。
 
そうなると、退職前と同じ待遇を期待してしまいがちですが、残念ながらほとんどのケースで期待通りにいくことはありません。というのも、再雇用制度があっても企業側が正社員として雇用しなければならないという決まりがないため、嘱託社員、契約社員、パート扱いでの雇用が一般的になっているのです。
 
そのため、仕事内容に関しても定年前よりも責任が軽くなる人が多く、それに伴って基本給も定年前の水準より低くなることが多くなります。中央労働委員会「平成25年・平成27年・平成29年・令和元年 退職金、年金及び定年制事情調査」によれば、シニア人材の定年退職時と再雇用時の労働時間を比較すると、定年退職時と同じである人が全体の78.2%です。
 
しかし、同様に基本給(時間単価)を比較してみると、定年退職時の50%以上80%未満である人が52.9%、定年退職時の50%未満である人が27.6%と、大半の人が定年退職時より少なくなってしまっています。労働時間が下がっているのに基本給が下がっているということは、時給換算すれば賃金が下がっていることになるでしょう。
 

シニア人材は定年退職後、待遇が悪くなりやすい

定年退職後の再雇用制度は、企業とシニア双方にメリットがあります。企業にとっては自社を熟知した人材を継続雇用でき、定年後再雇用に関する助成金や給付金を受けられます。シニア人材にとっても新しく仕事を探して覚える負担なく年金が支給されるまでの収入を得られます。
 
ただし、シニア人材の待遇は定年退職前と比較すると悪くなりやすい実態があります。シニアからすれば、定年後も若い人に負けず働き続けたいという人もいれば、マイペースに生活のために働いていければいいという人もいます。
 
ただ、若い人に役職の席を譲って降格し、待遇が悪くなれば、どんな人でもやる気が下がるのを避けられないでしょう。実際に加齢のために能力が低下して仕事ができない人もいますが、すべてのシニアに当てはまることではないのです。年齢でひとくくりにするのではなく、個人の能力を評価して待遇に反映するシステムが求められているのではないでしょうか。
 

定年後に向けて、自分なりの生きがい・働きがいを見定めておこう

定年退職後の働き方は、法律の制定によってそれなりに間口は広まってはいますが、再雇用されたとしても待遇が大幅に悪化する可能性はあります。定年後にどんなふうに働きたいかについて、老後をどのように生きていきたいかについても、自分自身で考えておくことが大切です。
 
仕事一筋で生きてきた人は、定年後に同じ働き方がかなわなかったとしても、他の生きがいを見つけておけば生活を豊かにできる可能性があるでしょう。
 

出典

厚生労働省 高年齢者雇用安定法 改正の概要 令和3年4月1日施行
国税庁長官官房企画課 令和2年分民間給与実態統計調査調査結果報告
PR TIMESシニア人材の労働実態に関する最新調査――シニア人材の労働時間単価は定年退職時の80%未満に減少することが判明
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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