更新日: 2022.09.07 定年・退職

定年後の離婚。退職金や年金は分割できる?

定年後の離婚。退職金や年金は分割できる?
夫の定年退職を機に、いわゆる熟年離婚を決断するご夫婦がいらっしゃいます。
 
その場合、夫が受け取った退職金やこれから受け取る年金はどうなるのでしょうか? 分割ができ、妻ももらうことができるのでしょうか?
飯田道子

執筆者:飯田道子(いいだ みちこ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト

金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。
どの金融機関にも属さない独立系FPです。

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知っておきたい、離婚時の財産分与

まず、おさえておきたいことは、離婚をするとき、妻はどのような財産を分与してもらえるのかです。
 
財産分与は、離婚をした者の一方が他方に対して財産の分与を請求することができる制度のことであり、離婚してから2年という期間制限が設けられています。つまり離婚後2年過ぎてしまうと、家庭裁判所に申し立てられなくなります。
 
財産分与の意味は、

(1) 夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配
(2) 離婚後の生活保障
(3) 離婚の原因を作ったことへの損害賠償の性質

があると解されおり、その中でも、(1)の夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配をすることが基本であると考えられています。
 
また、分与する財産は単独名義、共有名義を問わず、夫婦の協力によって形成された財産が分与の対象となります。金額は(1) ~ (3) を考慮して、話し合いによって決めていきます。話し合いで決まらないときには、家庭裁判所に調停または審判を申し立てることができます。
 
家庭裁判所の審判では、共働き・片働き等の夫婦の働き方に関わらず、夫婦の財産を2分の1ずつに分けるよう、命じられることが多い傾向にあるようです。
 

退職金は分与できる?

退職金は給与の後払いであるという考えがあることから、離婚時の財産分与の対象になる場合があります。ただし、無条件にすべての金額が対象になるわけではなりません。
 
基本的に、上記(1)夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配という考え方から、働いていた期間と、結婚していた期間が重なった期間に応じた金額が対象です。そして、この対象になるのは、すでに退職金を受け取っている場合です。そのため、退職金の受け取りが「まだ」のときには、財産分与の対象にはならない可能性があります。
 
その他にも注意すべき点があります。退職金を受け取って手元に残っているときには、財産分与の対象ですが、すでに使ってしまって手元に残っていないときには、財産分与の対象になりませんので注意してください。
 

夫の年金は誰のもの?

離婚をするとき、配偶の年金がもらえる制度のことを「(離婚時の)年金分割」といいます。この制度では、無条件に配偶者の年金がもらえるのではなく、分け合うことができるというものです。
 
このときの対象となる年金は、将来受け取ることが予想される受給見込額ではありません。対象となる年金は、厚生年金や共済年金のみです。いわゆる国民年金は対象になりません。
 
この制度は、男女間の格差をなくすために創設されたものです。最近では働き続ける女性は少なくありませんが、以前は、結婚すると家庭に入ることが多く、妻の年金は国民年金のみしかありませんでした。これでは、離婚したときには、妻の生活が立ち行かなくなる可能性があるためです。
 
年金の分割の請求には期限があります。

(1) 離婚したとき
(2) 婚姻の取り消しをしたとき
(3) 事実婚関係にある人が、国民年金の第3号被保険者資格を喪失し、事実婚関係が解消したと認められる日

離婚のときから2年以内に請求しなければ権利はなくなります。また、対象なるのは、婚姻期間のみに相当する厚生年金額や共済年金額のみです。
 
分割するときには、双方の話し合いによる「合意分割」。国民年金の第3号被保険者(例えば妻)からの請求により、平成20年4月1日以後の婚姻期間中の第3号被保険者であった期間に、相手の厚生年金の保険料納付記録(対象期間標準報酬総額)を2分の1ずつ分割できる「3号分割」があります。
 
なお、「3号分割」は、双方の合意の必要はありません。どちらか一方からの請求があれば、強制的に分割されます。
 
離婚時に配偶者の退職金や年金を分割するのは、権利です。とはいえ、細かいルールがありますので、自分で判断するのは危険です。まずは、弁護士などの専門家に相談をすることをお勧めします。
 

出典

法務省 財産分与
 
執筆者:飯田道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト

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