更新日: 2019.08.27 定年・退職
退職金がない会社は15%も存在 退職金がない中での老後への対策を考える
老後には2000万が必要と金融庁からも発表があり、不安を感じた人も多いのではないのでしょうか。
家計の相談にきた人に「退職金制度はありますか?」と聞くと、わからないと答える人が非常に多いことに驚きます。老後不安をかんじているけれど、退職金や自分の年金受給金額を把握していない人は多いのではないのでしょうか。
また、退職金がない会社なので不利だと感じながら、転職を検討しているという相談もありました。
給与や賞与と違い、退職金は頻繁にもらうものではありません。退職金の実態と、退職金がない家計の対策について考えます。
執筆者:塚越菜々子(つかごし ななこ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
お金の不安を賢く手放す!/働くママのお金の教養講座/『ママスマ・マネープログラム』主催
お金を貯める努力をするのではなく『お金が貯まる仕組み』づくりのサポート。保険や金融商品の販売を一切せず、働くママの家計に特化した相談業務を行っている。「お金だけを理由に、ママが自分の夢をあきらめることのない社会」の実現に向け、難しい知識ではなく、身近なお金のことをわかりやすく解説。税理士事務所出身の経験を活かし、ママ起業家の税務や経理についても支援している。
https://mamasuma.com
退職金がある会社は75%
厚生労働省の調査(※)によると、退職金制度(一時金・年金)がある企業は75.5%です。この数字を見て、多いと感じるでしょうか?
この数値について話すと「えっ、こんなにみんなもらっているの」という反応が返ってくることもよくあります。民間の会社の退職金は法律で決められた制度ではないため、会社の規模や業種によって、制度のあるなしにムラがあるのです。
多くの人が同じ業種での比較していることがないため、退職金がないことが多い業種にいると「ないのが当たり前」になってしまっているのですね。
企業規模別にみると、従業員が1000人以上いる会社の約93%が退職金制度がある一方で、従業員が30~99人になると72%になります。
業種別にみると、電気・ガス・熱供給・水道業は約96%の会社が退職金制度がある一方、医療・福祉の業種では50%の企業しか退職金制度がありません。
そもそも従業員が数人の会社だと「退職金なんてない」「そのときの会社の状態次第」「あるのかないのかもわからない」などというところもあるのが現状です。
(※)厚生労働省:平成25年就労条件総合調査結果の概況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/13/gaiyou04.html
退職金がない=悪い会社、ではない
退職金というのは、会社が退職時にプレゼントしてくれるお金ではありません。
月々払う給料から少しずつ会社に積み立てておき、最後に一括で払うという意味合いが強いです。後払いの給料、とでも考えるとわかりやすいかもしれません。
退職金がないから待遇が悪いのではなく、支払われるタイミングが違うと考えたほうが良いかもしれません。
税制面も含め、長い期間積み立てていけば退職金制度はその分有利ですし、逆に転職や途中退職がある場合は、最終的なリタイア時にまとまってもらえない分、不利なケースもあります。会社自体が倒産などしてしまえば、そもそももらえなくなってしまうリスクもあります。
退職時にはまとまってもらえないけれど、毎月の給与がその分高めになっているのだとしたら、自分で運用していくなどで、会社からもらえる退職金より大きな資産を形成できる可能性もあります。
まずは夫婦それぞれ就業規則や現状を確認
退職金制度がある場合は、会社の就業規則に記載することになっています(退職金の規定について別に定めている場合もあります)。退職金制度があるかないかで、対策の仕方は大きく変わってきます。必ず確認しておくようにしましょう。
あるのならば、どのように計算されるのか、どの程度になりそうかなども合わせてチェックしておきたいところです。もちろん会社の業績などにも左右されますし、今後転職がないかどうかは、今の時点ではわかりませんので見込みで構いません。
そのかわり、老後の暮らし方に大きくかかわってくるものですから「もらえそう」「規則はないけどもらっているみたい」という希望的観測はやめておいたほうがよさそうです。
ハッキリとわからない場合は、当てにならないものとして自分で備える方向にシフトしていきましょう。
退職金がない場合は早めの対策が肝心
夫婦とも同業種で、退職金がないというパターンもよく目にします。その場合は、老後の暮らしぶりに大きく影響する可能性がありますので、早めに手を打っておくことが肝心です。
退職金のチェックと同時に忘れてはならないのは、公的年金のチェックです。こちらは「ねんきん定期便」などを活用することで、今の段階でのおおよその年金額がわかります。そして同時に「我が家の暮らしぶり」のチェックもしておきましょう。
年金で足らない額がどれくらいになるか? 100年生きる時代に年金で足りない分を貯蓄で賄うとしたら、リタイアまでにいくらの財産が必要でしょうか? 退職金がない部分を自分で用意するとしたら、どれくらいの積立額がいるでしょうか?
漠然とした不安を抱えて何もしないよりは、あいまいな数字でもいいので計算してみることで、見えてくることは多いものです。
ただでさえ、リタイア後は格差が生まれやすいものです。そこに退職金のあるなしという大きな金額の違いが出てくれば、ますますその格差が広がってしまう可能性が高いのです。
退職金がないことを嘆くことはおしまいにして、その違いに気づいた今から対策を練っていきましょう。
Text:塚越 菜々子(つかごし ななこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
お金の不安を賢く手放す!/働くママのお金の教養講座/『ママスマ・マネープログラム』主催