更新日: 2019.01.08 セカンドライフ
老後のその先「墓じたく」の入り口で考えておくべきこと
「自分のお墓はどうしよう」と考え始める時が「墓じたく」の入り口。その時期は人それぞれなのでしょうが、いずれはやって来ることになります。そんな時にどんなことを考えておくべきでしょうか。
Text:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士
不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。
「墓じたく」のことを考えるのはいつ
「墓じたく」、つまり「自分のお墓はどうしよう」と考え始める時期は、人それぞれです。例えば、還暦を迎えたことがきっかけになるかもしれませんね。
でも、ひと昔前の60歳といえば随分と年寄りくさいイメージもありましたが、いざ自分がその年回りになってみるとそのような実感は全然湧いて来ないという方が多いのではないでしょうか。「人生100年時代」からすると、人生の折り返し点からほんの少し先程度の位置だからなのかもしれません。
一方で日本の平均寿命は、男性80.98歳、女性87.14歳(2017年7月 厚生労働省発表)です。還暦を迎えた人であれば、男性で約21年、女性で約27年が残された時間という計算にもなります。
さらに、健康上の理由で日常生活が制限されることなく過ごせる「健康寿命」となれば、男性72.14歳、女性は74.79歳(2018年3月 厚生労働省発表)なので、残りの時間は一段と短いのです。
ひと言に「墓」といっても、形態・仕様はさまざま・・・
そんな「墓じたく」の視点をいったん持つと、いろいろな墓の紹介や宣伝が日常的にあふれていることを改めて発見し、雑誌やテレビでも折々に墓や葬式に関する特集が組まれていることに気付きます。
それらをくまなく網羅して列挙することは難しいと思われますが、代表的なものは次の通りです。
(1) 墓石を建てる墓
・同族墓 ・家墓 ・個人(夫婦)墓
(2) 屋内型納骨堂
・ロッカー形式 ・自動搬送機形式
(3) 永代供養(合祀)墓
(4) 樹木葬
(5) 海洋葬
(6) 手元供養
それぞれのタイプの違いは、祀る対象が個人単位なのか多数で一緒なのか、また祀る期間が長いか短いかなどです。
さらに上記の[(1)墓石を建てる墓]を詳しく見ると、その敷地によって寺院墓地・公営霊園・民間霊園と一層細分化されることになります。ひと言に「墓」といってもさまざまな形態や仕様が存在することを再認識させられますね。
おカネは、どうなるの?
もちろん、費用がどうなるのかも気になるところです。これもお墓の形態・仕様と場所によってマチマチです。先ほどの[(1) 墓石を建てる墓]では永代使用料・墓石代・工事費のイニシャル費用総額で200万円程度がひとつの目安といわれています。
一般的には、樹木葬や永代供養(合祀)墓は数十万円程度のものからあります。屋内型納骨堂(自動搬送機形式)は100万円前後が多くなっていますが、中には「特別参拝室(完全個室)」のように500万円ほどかかるものもあるようです。
このほかに、お墓のタイプによっては管理費・維持費・護持会費等々の名目で毎年の費用が別途必要となる場合もあります。現世の「住宅」と同列視するわけにはいきませんが、お墓もおカネの面ではとても幅広い金額帯が存在することがわかります。
墓じたくの入り口で考えておくべきことは
「先祖代々の墓」が一般的であるかのような思い込みがあるかもしれませんが、日本で庶民レベルまで墓が普及するのは江戸時代中期以降で、墓石まで建立するような形になったのはせいぜい江戸時代後期以降のようです。
「どんな墓でも永久に残るわけではない」と聞いたこともあります。
また、「そもそも墓が必要だとは思わない」とか「親と一緒の墓である必要はない」、場合によっては「夫(妻)と一緒の墓である必要はない」といった声も以前より増えているようです。
既存の価値観や形態に必ずしもこだわらず、またあまり肩肘を張らずに、自身や家族にとって何が良いのかの視点を総論とし、あとは人それぞれで異なる事情(予算面のことも含めて)を各論にして、「墓じたく」を考え始めるのはいかがでしょうか。
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。