定年後に働くと受け取れる年金額は減る? 年金が減らない働き方とは?
配信日: 2022.10.17
定年後も働き続ける場合と、働かずに年金を受け取る場合ではどちらがお得なのでしょうか?
本記事ではどんな場合に年金が減額されるのか、減額される場合や減額されない方法を解説します。定年退職が近い方や年金の減額に対処したい方は、ぜひご一読ください。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
定年後に年金が減額するケース
定年後に働くことで年金額が減額される可能性があるのは、厚生年金にかぎられます。国民年金については減額されることはありません。つまり、自営業やフリーランスなどの個人事業主は、60歳以上に働き続けても減額の心配は不要です。
それでは会社勤めの方はどのようなケースで減額されるのか解説します。
減額される年金と条件
年金受給は原則として65歳以上ですが、繰り上げによって60歳から支給を受けることが可能です。また、男性は昭和36年4月1日以前、女性は昭和41年4月1日以前に生まれた人は、60歳から特別支給の厚生老齢年金を受け取れます(特別支給の老齢厚生年金)。
しかし、60歳で定年退職の時代はすでに終わりを告げました。現在は国によって企業は以下のいずれかの方法によって60歳以上も働ける措置を講じることが義務付けられています。
・定年制の廃止
・定年の引き上げ
・継続雇用制度の導入
従業員が31名以上の企業では、令和3年で99.7%の企業が上記のいずれかの措置を講じています。つまり、定年後に働き続けると年金額が減少する可能性があるのは、60~65歳までにもらう年金になります。この減額される年金制度を「在職老齢年金」とよんでいます。
定年後に働き続けて年金が減額される可能性があるのは、以下の条件のすべてを満たした場合です。
・60歳以上で年金を受給している
・社会保険に加入しながら働いている
・一定額以上の収入がある
月額の収入が多すぎると年金は減額される
年金額と給与収入を含めて月間47万円までであれば、年金額が減額されることはありません。令和4年3月までは減額される金額の計算式は金額によって5種類ありましたが、令和4年4月以降は以下の計算式に統一されています。
・ 基本月額と総報酬月額相当額の合計額が47万円以下……減額なし
・基本月額と総報酬月額相当額の合計額が47万円以下……次の計算式による
支給停止額(年間)=(総報酬月額相当額+基本月額-47万円)× 1/2 ×12
基本月額と総報酬月額相当額については、以下のとおりです。
・基本月額:加給年金を除く老齢厚生年金の月額
・総報酬月額相当額:(当月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12
例えば、年金額が月20万円、月収が30万円の場合の支給停止額(年間)は以下のとおりです。
(50万円-47万円)×1/2×12=18万円
上記のとおり、総報酬月額相当額にはその月以前1年間の標準賞与額の1/12も含まれるので、賞与も計算に入れることを忘れないよう注意をしましょう。
定年後も損をしない働き方
定年退職してからも働き続けて同時に年金も全額受給する場合は、月収が合計で47万以内に納める必要があります。もし減額されても47万円を超える月収があるとすれば、減額を考慮して働き方を変える必要はありません。
それでは、働きながら年金を減らされずにすむにはどうすればよいでしょうか。以下で説明しますので、チェックしてみてください。
収入を調整する
月の年金額が20万円の場合、年金が減額されない分岐点は下記のとおりです。
(20万円+27万円-47万円)×1/2=0円(合計収入47万円)
合計収入47万円の分岐点を超えると年金額は以下のように減額されます。
(20万円+28万円-47万円)×1/2=5000円(合計収入47万5000円)
(20万円+29万円-47万円)×1/2=1万円(合計収入48万円)
(20万円+37万円-47万円)×1/2=5万円(合計収入52万円)
分岐点に届かない収入の場合は、給与収入を時間外労働などで可能なかぎり分岐点に近づける調整をしましょう。すでに超えてしまっている場合は、給与収入を減らすと合計収入が下がるので損をしてしまいます。
年金額の減額は47万円を超えた部分の2分の1にすぎないので、収入が大きく減るわけではありません。上記の計算では収入が1万円増えるごとに、年金額が5000円減額されています。
しかし、今まで支払ってきた年金保険料を考慮し減額されたくないと考えるのであれば、合計収入が47万円に近い場合にかぎり、給与収入の調整によって47万円以下を保ちましょう。
年金の受け取り時期を遅らせる
ある程度高い収入が見込めて生活するのに支障がなければ、年金の受け取り時期を繰り上げずに、むしろ繰り下げることで将来の受取金額を増やせます。65~75歳まで、繰越月数×0.7%(最大84%まで)の増額が可能です。
ただし、60~65歳まで受け取ることができる特別支給の老齢厚生年金は繰り下げの対象外です。また、この期間中に給与収入があり年金額が減額されたときは、減額された金額は繰り下げによる割増の対象にはなりません。
繰り下げによる増額は生涯続きます。安定した収入を得ることができて、健康にも不安がない場合は検討してみましょう。
退職後に自分がどれだけ収入を得られるのかによって対処方法が違う
退職後に継続雇用などで働きながら年金も受け取る場合には、月額47万円を超える部分の2分の1が年金額から減額されます。そのため、年金と給与収入の合計が47万円を大きく下回る場合は、年金の減額に関しては気にする必要はありません。
47万円を大きく超える場合は、無理に収入を減らしても年金の減額はなくなりますが、全体の収入が大きく下がるので損をすることになります。
47万円の月収を少し超える方で減額になって今までの年金保険料を無駄にしたくないと考えるのであれば、収入を調整して減額を避けましょう。
出典
日本年金機構 在職老齢年金の支給停止の仕組み
厚生労働省 令和3年「高年齢者雇用状況等報告」集計結果
日本年金機構 特別支給の老齢厚生年金
日本年金機構 令和4年4月から65歳未満の方の在職老齢年金制度が見直されました
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
日本年金機構 年金の繰下げ受給
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部