更新日: 2022.11.06 介護
親の介護で休業しても給付金がもらえる? 介護が迫ると知っておきたい「介護休業給付金」とは?
介護などの理由で離職してしまうと、経済的に困窮する恐れが高まります。このような経済的なリスクを減らす方法のひとつとして、介護休業給付金の制度があるのをご存じでしょうか?
この記事では、介護休業給付金の受給要件、注意点などについて解説していきます。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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介護休業給付金とは
「介護休業給付金」は、家族を介護するため介護休業を取得した後に支給されるお金です。また、「介護休業」とは、要介護状態の家族を介護するために休暇を取得できる制度をいいます。
この項では介護休業と介護休業給付金の金額について解説します。
介護休業とは
令和4年版高齢社会白書によると、介護保険制度における要介護又は要支援の認定を受けた人(以下「要介護者等」という)は、令和元年度で655.8万人(図表1)、また、要介護者等は、第1号被保険者(65歳以上)の18.4%を占めているそうです。
【図表1】
出典:内閣府 令和4年版高齢社会白書 健康・福祉
要介護者等から見た主な介護者の続柄は、同居している人が54.4%で、その主な内訳は、配偶者が23.8%、子が20.7%、子の配偶者が7.5%となっています。
【図表2】
出典:内閣府 令和4年版高齢社会白書 健康・福祉
令和元年の、同居している主な介護者が1日のうち介護に要している時間を見ると、要介護 4では45.8%、要介護5では56.7%がほとんど終日介護を行っているのが分かります(図表3)。
【図表3】
出典:内閣府 令和4年版高齢社会白書 健康・福祉
このように、介護は介護者にとって大きな負担となります。
たとえ対象者の要介護度が軽くても、一日中つきっきりでお世話が必要なケースもあります。協力者がいる場合は、時短出勤などで対応するのも可能かもしれませんが、1人で介護する際には、仕事を休まざるをえない事態にもなりえます。
このように、家族の介護をするために休業をすることを介護休業といい、要介護状態の家族を介護する目的で休暇を取得できる制度が「介護休業制度」です。
この場合の「介護休業」とは、2週間以上にわたって常時介護(歩行、排泄、食事などの日常生活に必要な行為に対する介護)を必要とする家族を介護するために取得する休みのことをいいます。
介護休業給付金の金額は?
介護給付金としてもらえる正確な金額は 「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」の「就業開始時賃金日額」で決まりますが、基本的には『休業を開始する前にもらっていた賃金(日額)の67%』の金額です。
計算式は、<休業日開始賃金日額×支給日数×67%>となります。
支給日数の上限は、『介護が必要な家族1人につき93日間まで』です。この日数の範囲内であれば、3回まで分割して受け取ることも可能です。
介護休業給付金の取得条件とは
介護休業給付金をもらうためにクリアしなければならない要件を解説します。
雇用保険の被保険者であることが大前提
介護休業給付金を受け取るには、前提として雇用保険に加入していて、職場に復帰予定であることが必要です。
雇用保険に加入している非正規雇用の人(派遣労働者、パート、アルバイトなど)も、条件を満たせば介護休業給付金の支給対象になりえます。
しかし、雇用保険に加入している人が全て介護休業給付金を受け取れるわけではありません。
介護休業給付金の受給資格は、介護休業を開始する直近2年間に被保険者期間が12ヶ月以上あることが必要となります。「被保険者期間12ヶ月」とは、11日以上就業した月を1ヶ月として計算します。なお、12ヶ月の間に本人の疾病等があった場合、条件が緩和される可能性もあります。
有期雇用労働者の場合は、介護休業開始予定日から93日経過した後、6ヶ月以内に労働契約期間が満了すると決まっていない人、という条件もあります。
家族が2週間以上、常時要介護状態である
介護休業給付金を受け取れるのは、要介護状態にある家族のために休業したときに限られています。介護休業給付金制度では、介護をする対象家族が以下のように定められています。
・配偶者
・父母
・子
・配偶者の父母
・祖父母
・兄弟姉妹
・孫
配偶者には、戸籍上は夫婦関係ではない事実婚も含まれます。
要介護状態とは身体上、あるいは精神上の障害により、2週間以上常時介護を必要とする状態をいいます。ここでいう2週間以上と「対象家族が介護を必要としている程度」を表したものです。
入院や介護施設等に介護を託した場合、家族が常に介護している状態には該当しません。もし10日間の介護後に要介護者が入院した場合には、10日間のみ介護休業を取得できます。このケースでは、10日分の介護休業給付金をもらうことが可能です。
介護休業給付金の注意点
介護休業給付金の受給にはいくつか注意すべきポイントがあります。
介護休業中に給付金はもらえない
介護休業給付金は休業を終えてから申請するため、介護休業中は給付金を受給できません。
介護期間中の費用として給付金をあてにしていると、金銭的に予定が狂うことがあるので注意が必要です。介護休業給付金が支給されるまでに時間がかかる点は理解しておきましょう。
制度利用は原則1回
介護休業給付は「同一の介護対象者」に対して1回までしか申請できません。対象となる介護休業は最大で93日間です。要介護度が変わっても、申請回数、日数の変更はありません。
ただし、3回までの分割取得が可能です。「93日分使い切っていない」、「3分割してない」という場合には、介護休業給付金を申請することができます。
例えば、要介護3の父の介護のため50日分連続で介護給付金を受け取っていた場合、要介護度が4に変わったとしても、介護休業給付を受けられるのは、残り43日分までとなります。
なお、介護対象者が変わったら、再度93日間の介護休業の取得が可能です。例えば父の介護で93日間の介護休業を取った後に母の介護が必要になった際は、改めて93日間の介護休業の申請が可能になります。
育児休業給付と介護休業給付の併用不可
介護休業給付金は、ほかの給付金と併用ができないため、「育児休業」「産前産後休業」などを同時にもらうことはできません。介護休業中に新たに別の休業が始まると、新しい休業開始日の前日で介護休業が終了します。
例えば、祖母の介護休業中に子どもの育休を取得した場合には、介護休業から育児休業に変更されるため、その日以降の分は介護休業給付金の支給対象にはなりません。
まとめ
家族の介護は経済面だけでなく、心身にもかなり負担のかかるものです。
入院・介護などの施設にお任せできるようであれば、適宜利用するといいでしょう。また、介護休業が必要になった際は、速やかに職場に報告しましょう。会社によっては介護休業に関する相談窓口をはじめ、独自の給付金、お見舞金制度を設けている企業もあります。
事前に会社の福利厚生を調べておくことをおすすめします。
出典
厚生労働省 Q&A~介護休業給付~
内閣府 令和4年版高齢社会白書 健康・福祉
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部