老後の生活費も気になるけど…何歳まで働けば良い?
配信日: 2022.11.22
毎日通勤するのもそろそろ終わりにしたいし、のんびりと旅行を楽しみたいと考える人もいるかもしれませんが、超高齢化社会の日本では老後の生活費についても気になるところです。
60歳以降の働き方について考えてみたいと思います。
執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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支出÷収入=100%以上、つまり慢性的な赤字
生命保険文化センターによる「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」の「老後生活に関する意識」によると、夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考えられている最低日常生活費を見ると、平均額は月額で 23.2 万円となっています。
一方、総務省の家計調査によると、2021年の無職世帯の可処分所得は21万1493円となっています。
なお、ここでいう可処分所得は、収入から税・社会保険料を差し引いた所得のことです。実質的に使える所得ということになります。これに対して消費支出は22万9131円で、おおむね生命保険文化センターの支出額と同じです。
このことから、収入以上の支出を覚悟しなければならないのは否定できないようです。
パートタイムでも就労を続けることのメリット
老後、何歳まで生きられるのかの予測ができないこと、年齢を重ねるにつれて、体力的にも精神的にも就労の可能性が小さくなることから、働けるうちに少しでも赤字状態を最小限に抑える必要があることは論をまたないでしょう。
月々数万円であってもプラスになりますし、実費で支給される交通費など、それまで何気なく見過ごしていたことのメリットの大きさに気づくと思います。
また、就労しないことで余った時間を現役時代のように余暇に充てていると、赤字幅は予想以上に膨らみます。規則正しい生活による健康維持の点からも、どんなに短時間で少額であっても、継続し続ける以外の選択肢はありません。
75歳まで10年間の支給年齢の繰り下げで年金額が84%増に
また、2022年4月からの年金制度の改正によって、老齢年金の支給開始時期の上限年齢が70歳から75歳に引き上がりました。
この改正の対象となるのは、2022年3月31日時点で、70歳未満(昭和27年4月2日以降生まれの人)か、老齢年金の受給権を取得した日から起算して5年を経過していない、つまり受給権が発生した日が2017年4月1日以降の人、の場合です。
仮に、最大75歳まで支給開始年齢を繰り下げた場合、年金受給額は65歳からの支給開始に比べて最大で84%増です。
確かに、75歳まで年金を繰り下げするとなると、その後すぐに寿命が尽きてしまったら意味がないと思うかもしれません。しかし、こればかりは誰にもわかりません。しかし、老後資金の不安を和らげる選択肢の1つになるのではないでしょうか。
出典
生命保険文化センター 2022(令和4)年度 生活保障に関する調査≪速報版≫
総務省 家計調査(2021年)
日本年金機構 令和4年4月から年金制度が改正されました。
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者