更新日: 2022.11.29 定年・退職
定年退職したら考えよう。介護に向けての準備
寿命から健康寿命を引いた、男性は約9年間、女性は約12年間、この年月は1人で自分のことをすべてできると言い難い時期を過ごすことになりそうです。
今回は、健康寿命から寿命までの過ごし方、それに向けての準備について考えてみたいと思います。
執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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目次
健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」
健康寿命の定義について確認しておきましょう。2000年に世界保健機関(WHO)が提唱した健康寿命は現在広く知られ、使われるようになりました。定義は「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」で、平均寿命と健康寿命の差が「健康的ではない期間」となります。
必ずしも介護が必要であるとは限りませんが、厚生労働省の資料や加齢を考慮すれば、72歳を過ぎるまでに、少なくとも介護状態になったときの準備は必要になりそうです。
健康なうちに介護施設を調べて、収支を考えておくこと
具体的にどのような準備をすればよいのでしょうか。
いざ介護が必要になってからでは遅いので、健康な状態のうちに、どのような施設があるのか、料金や施設の設備や料金、医療行為をどの程度までカバーしてもらえるのか、という具体的なサービス内容を確認し理解しておくことです。
また、料金についても高額な一時金が必要でかつ月額の支払いも高額であるのか、一時金の負担は大きいが月額は年金で賄うことができるのか、変わってきます。
施設についてもどの程度のプライバシーが守られるのか、アクティビティは自分の嗜好(しこう)に合っているのか、入居者の介護度はどの程度なのか、などパンフレットやインターネットでの印象ではわからないことが多いので、実際に見学して、優先ポイントを若いうちから見極めておくことが大切です。
これらは慎重に進める必要があります。退職後、できるだけ早いタイミングで一度じっくり検討しておきましょう。
かかりつけ医と良好な関係を築いておくこと
退職したばかりですと、まだまだ現役世代と健康状態は変わらない方も多いでしょうが、加齢とともに内臓疾患や腰痛などといった慢性病に罹患(りかん)する可能性も高くなってきます。「まだ大丈夫」と思わずに、自分と合う、話をしやすいかかりつけ医を決めて良好な関係を築いておくことも大切です。
いざ、深刻な状態になったときには、自分でこまめに動くことは難しいです。そんなときに総合病院への紹介が早期にでき、診療情報提供書などの書類事務手続きもスムーズです。
また、加齢とともに感情の抑えが効かなくなるケースがあります。我慢ができずに自分の要求を是が非でも通すことに固執してしまうと、その後の応対に支障をきたすかもしれません。若いうちから信頼関係を築いておきましょう。
加齢とともに知力やコミュニケーション能力が落ちてしまうことを自覚する
周りの人は、外見で明らかに判断できる状態などについては、状況が理解しやすいのでトラブルになりづらいものです。しかし、知力、記憶力、コミュニケーションがうまくできなくなる、あるいは認知症が進行するという状態は、一見わかりづらいだけに「言った、言わない」「伝えた、聞いていない」といった誤解を招き大きなトラブルに発展しがちです。
そのような症状が認められても、本人に自覚がないケースでは解決も難しいです。周りに子どもがいてサポートを受けることが期待しづらい現代では「自分の最期も覚悟して、退職後、まとまった時間がとれる早いうちから準備を進めておくことが必要になります。
出典
厚生労働省 健康寿命の令和元年値について
厚生労働省 2 平均寿命と健康寿命をみる
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者