更新日: 2022.11.30 定年・退職

定年後、現役時代の人脈を生かして「起業」したい場合、「法人」と「個人事業主」のどちらがいい?

執筆者 : 柘植輝

定年後、現役時代の人脈を生かして「起業」したい場合、「法人」と「個人事業主」のどちらがいい?
定年後に現役時代の人脈を生かして起業することも、老後の働き方のひとつの選択肢となり得ます。こうしたケースで起業するのであれば、法人と個人事業主のどちらがいいのでしょうか。それぞれの違いなどから定年後の起業について解説していきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

起業において会社の設立は必須ではない


 
「起業」と聞くと、会社を設立することをイメージされる方もいるかと思いますが、必ずしもそうではありません。
 
例えば個人事業主として起業することも可能で、その場合は税務署に提出する開業届に屋号を記載することで、個人でも事業用の名称(会社名のようなもの)を使用することができます。
 

法人と個人で起業する場合の違いは

まずは起業に当たり、法人と個人でどのような違いがあるのか簡単に解説します。
 
法人の場合、〇〇株式会社や〇〇合同会社というように、会社を設立してビジネスを行うことができます。法人とすることで、資産や権利義務の帰属先について会社と経営者本人の部分が明確に分かれるため、対外的な信用度が増します。
 
世の中には法人としか取引しないと決めている会社や、法人と個人でサービスの内容や価格が違う場合も少なくありません。
 
ただし、法人として株式会社を設立する場合、自分で手続きなどを行っても設立費用の目安として20万円以上がかかります。
 
また、最低でも年間7万円程度の法人住民税が発生するなど、設立後に赤字であっても税金の負担があります。それに加え、法人の決算(個人事業主の確定申告のようなもの)は複雑であり、基本的には税理士に依頼することになるため、そういった費用なども必要となります。
 
それに対して個人であれば、税務署に簡単な開業届を提出することで起業できます。株式会社のような設立費用はかからず、個人事業主で赤字となった場合は所得税や住民税といった税金もかかりません。また、法人の決算に当たる確定申告も、個人なら自分で対応することも十分に可能でしょう。
 
ただし、個人事業主の場合、プライベートの資産と事業資金に垣根がないので、対外的には信用度が低く見られることがあるほか、節税の手段が法人よりも限られてしまうという注意点があります。
 

人脈を生かして定年後に起業するなら法人か、個人か?

定年後に現役時代の人脈を生かして起業するのであれば、基本的には個人事業主がおすすめです。その理由は、起業時や起業後にかかる手間とコストなどにあります。
 
起業に当たって現役時代の人脈を生かすのであれば、ある程度の顧客や信用は得られると思いますが、起業後は現役時代のように収入が安定するとは限らないので、事業を始めるタイミングが定年後であることを考えると、できるだけ初期のコストは引き下げた方が安心できます。
 
個人ではなく法人とした場合、会社設立や決算時の手間がかかり、それらを専門家に依頼するとコストはさらに増えます。
 
そのため、法人でなければ取引できないという相手との仕事が中心となる場合や、現役時代の人脈に加えて新規顧客を積極的に獲得する必要がある状況でなければ、最初は個人での起業で十分といえます。
 
現役時代の人脈が豊富で、起業の初年度から十分な売り上げ(目安として1000万円以上など)が見込めるケースや、顧客を増やして事業を大きくしていきたいという場合は、法人からのスタートでもいいでしょう。
 
法人の方が個人よりも節税対策が広く認められやすく、売り上げや事業規模によっては節税効果が大きくなることや、社会的な信頼度も高くなるからです。
 

定年後の起業については専門家へ相談を

定年後に起業するなら、コストと手間を抑えた個人での起業が無難とはいえるでしょう。ただし、起業には大小さまざまなリスクが生じるため、失敗したときの影響を考えると、定年後では老後の生活に大きな支障が出る可能性も高くなります。
 
定年後の起業については十分に検討し、特に法人での起業の場合は会社設立の手続き、経営や税務・会計、法律関連など、必要に応じて専門家へ相談して決定するようにしてください。
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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