更新日: 2022.12.09 定年・退職
公務員の役職定年制度とはどんな制度? 60歳以降の収入への影響は?
役職定年制度は、公務員の定年延長にともなう60歳以降の働き方や収入に影響のある制度です。
本記事では、公務員の役職定年制度の概要や60歳前と後の収入の変化、退職金への影響について解説します。ぜひ参考にして、自身の60歳以降の働き方を想像してみてください。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
公務員の「役職定年制度」とは
公務員の「役職定年制度」とは、国家公務員および地方公務員の管理監督職に勤務上限年齢を設ける制度で、令和5年4月1日の施行が決まっています。
この制度が施行されると、管理監督職についている職員が上限年齢に達した場合、管理監督職以外の役職に異動しなければなりません。上限年齢は例外となる役職はあるものの原則60歳と定められており、60歳の誕生日からその後最初にくる4月1日までに、異動を完了することになっています。
2024年6月1日に60歳になる人⇒2024年6月1日~2025年4月1日までに異動
2025年3月30日に60歳になる人⇒2025年3月30日~2025年4月1日までに異動
ただし、役職定年によってその人を異動させると公務の運営に大きな支障がでると考えられるケースについては、60歳を超えても引き続き管理監督職にとどめられるという特例が設けられています。
この制度は、公務員の定年引き上げにともない年長者が60歳以降も一定のポストに在職し続けることで、若年・中堅層の職員の昇進ペースが遅れて士気が低下する懸念を解消するために提言されたものです。
60歳以降の役職定年制度による給与への影響
役職定年制度の対象である管理監督職員の場合、60歳以降の基本給(俸給月額)は60歳前の7割を基準に設定することとなっています。なぜ7割かというと、民間の事業所における60歳を超える従業員の給与水準が、多くの場合60歳前の7割程度であるという調査結果があるためです。
仮に異動後の基本給が異動前の7割水準に満たない場合は、差額が役職定年調整額として支給されます。
ただし、異動前の基本給の7割水準になるよう調整された金額が異動後の職務で設定されている給与の最高額(最高号俸の俸給月額)を超える場合は、異動後の職務の最高額を超えないように役職定年調整額が減額される決まりです。
また、基本給は7割水準で調整されるものの、管理監督職以外に異動することで、管理職手当にあたる俸給の特別調整額が支給されなくなります。このことなどにより、60歳以降の給与は60歳前の5~6割になる場合もあるでしょう。
役職定年制度が適用されると退職金はどうなる?
役職定年による異動により基本給(俸給月額)が減額される場合の退職金については、「ピーク時特例」が適用されることとなっています。
■ピーク時特例とは
正式には「俸給月額の減額改定以外の理由により俸給月額が減額されたことがある場合の特例」といい、在職期間中に降格や俸給表間異動などで基本給が下がったことがある場合に適用される特例です。
この特例では、退職日の基本給の額が減額前の基本給のピークよりも下がっているときに次のaとb、2つの合計額を基本額として退職金を算定します。
(a)減額日前日に実際の退職理由と同様の理由で退職した場合に、減額日前日までの勤続期間と減額前の基本給の額をもとに算定した基本額
(b)退職日の基本給の額に「退職日に退職日までの勤続期間と退職日の基本給の額をもとに退職手当を算定した場合の支給割合」から「(a)の算定で使用した支給割合」を差し引いた支給割合を掛けて求めた額
簡単にいうと、役職定年で異動する前と後に分けて退職金が算定されるため、役職定年によって60歳定年の場合と比べて退職金の金額がマイナスになることはありません。
ただし、定年が後ろ倒しになることで退職金の支給時期も後ろ倒しになるため、60歳以後の資金計画には変更が必要となる可能性があります。
公務員の役職定年制度で60歳以降は減収でも、生涯年収は上がる
公務員で役職定年制度の対象となる場合、60歳以降の給与は60歳前の給与と比べて下がります。60歳以降の給与の目安は、基本給が異動前の7割、給与全体では5~6割程度です。しかし、現役で働ける期間が長くなるため、その分だけ生涯年収は上乗せされることになります。
また、退職金に関しても、60歳前と後に分けて計算するルールのため、役職定年で移動後に給与が下がっても悪影響はありません。
出典
内閣官房 第201回 通常国会 国家公務員法等の一部を改正する法律案の概要
総務省 国会提出法案 地方公務員法の一部を改正する法律案の概要
東京都 法令改正等に伴うもの(地方公務員法等の改正関係)
人事院 人事院の意見の申出 定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出
人事院 国家公務員の60歳以降の働き方について(概要)
人事院 平成30年度 年次報告書 第1編 人事行政 第1部 人事行政この1年の主な動き 第1章 適正な公務員給与の確保等 3 定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出
人事院 第3章 定年後の収入と支出
※2022/12/9 記事に一部誤りがあったため、修正いたしました。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部