「要介護1と2の保険外し」とは何を意味するのか。その内容と背景を解説
配信日: 2022.12.15
「保険外し」は言葉として語弊はあるものの、現状の提案は介護サービスの質の低下や人員削減などが懸念される内容です。
本記事では、財務省の資料を参照しつつ、介護保険制度の見直し案について解説します。
執筆者:北川真大(きたがわ まさひろ)
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保険外しではなく総合事業への移行
「要介護1と2の保険外し」はあくまで造語であり、正しくは総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)への移行の検討を進めている段階です。
端的にいえば、これまで国が支援していた部分を市町村が運営する地域支援事業(の中の総合事業)へ移すという内容です。総合事業への移行は財務省が積極的に検討しており、「令和5年度予算の編成等に関する建議」では以下のように述べています。
「地域支援事業の利点は、地域の実情に合わせ、訪問介護・通所介護をニーズに応じて工夫できる点である。その利点を生かせば、各保険者が要介護者の満足度を高めるように介護サービスを独自に企画・実施でき、そうした懸念を払拭できるはずである。
さらに、多様なサービスを活用することで、各利用者の状態を踏まえながら、介護職員がより専門性の高いサービスに注力することが可能となる。こうした努力をする前から、地域支援事業への移行をためらうべきではない。」
すでに要支援者に対する訪問介護・通所介護は総合事業への移行を完了しており、財務省としては同じ要領で移行したいとの意向が見られます。
なぜ保険外しだと問題視されているのか
要介護1と2は歩行の介助や日常生活動作におけるケアが必要で、こうした介護が必要な状態である以上、軽度者とみなすのは早計です。また財務省の資料からは、国の負担を軽減させたい意向が見て取れます。
介護サービスを受ける人や介護従事者から見れば、総合事業へ移行させることによるサービス低下を懸念するのは当然のことでしょう。地域によって財政状況にも格差があるため、地域による介護サービスの格差拡大も不安視されています。
「保険外し」は語弊がある表現だとしても、利用者や介護従事者が介護保険制度の改正に不安を抱いているのは事実です。
要介護1と2の保険外しという表現は不信感の現れ
「要介護1と2の保険外し」という言葉が広がった背景には、国(財務省)が検討している介護負担の増加に対する国民の不信感が見え隠れしています。
財務省の資料の中には、総合事業への移行が保険外しと問題視されているにもかかわらず、介護保険サービスの利用者負担を原則2割とすることも検討内容として盛り込まれています。
あくまで検討案ではありますが、負担増ばかりを要求する財務省の姿勢に対して国民の不満が募るのは無理もない話です。
要介護1と2に対する措置については、「地域の実情に合わせ、訪問介護・通所介護をニーズに応じて工夫できる」などといった地域(市町村)に責任を丸投げするような説明ではなく、利用者や介護従事者が納得できるような説明が必要でしょう。
出典
財務省 令和5年度予算の編成等に関する建議
執筆者:北川真大
2級ファイナンシャルプランニング技能士・証券外務員一種