定年退職、60歳・65歳・70歳でどう待遇が変わる? 退職金や年金の受給額は?
配信日: 2022.12.18
今回は定年退職の年齢が待遇などにどういった影響を与えるか解説します。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
定年後、大抵の場合給与が下がってしまう
定年退職の年齢は企業によってさまざまですが、多くの場合、60歳を定年としており、希望者に対しては再雇用によって65歳まで雇用を延長しています。それ以外の場合では、定年を65歳と定めています。
そして、定年を迎えると再雇用によって同じ会社で働き続けたとしても大抵の場合それまでと比較して待遇が変化します。
出典:日経ビジネス 給料4~6割減が過半、生活のためが6割、定年後再雇用の厳しい現実
日経ビジネスが行った「定年後の就労に関する調査」によれば、多くの場合、定年後の再雇用において勤務時間や日数に変化はないが、業務量と年収が減少してしまっているようです。
特に年収の減少具合は著しく、定年前と比べて半数近い方が、4割から6割の給与水準となってしまっています。ここから、定年を迎えると給与面から見た待遇は低下すると考えた方がよさそうです。
また、全体の半数以上の方が定年後について責任ある地位から外れたとされています。
出典:日経ビジネス 給料4~6割減が過半、生活のためが6割、定年後再雇用の厳しい現実
そのため、給与が減少する理由は責任ある地位から外れることなど業務内容が軽くなることに起因することが想定されます。
これらを考えていくと、定年によって待遇が変わる理由は何歳で定年するかというよりも、定年退職を迎えているか否かに起因するところが大きそうです。また、再雇用ではなく定年を延長する形であっても、会社によっては役職に年齢制限を設けていたり配置転換による業務内容の変更などで、責任が軽くなったり給与が減少することもあります。
定年の年齢や時期によって待遇がどう変わるかは会社によって異なります。定年の年齢や定年後の待遇については勤務先の会社へご確認ください。
定年の年齢が退職金に与える影響
会社の退職金規定によっても異なりますが、退職金については定年の年齢が先になればなるほど支給金額が大きくなるのが一般的です。また、退職金には退職所得控除という優遇された独自の控除があります。この控除が大きいほど退職金の手取り額も大きくなります。
退職金控除の金額は下記のように勤続年数が長ければ長いほど有利になるようになっています。
出典:国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
そのため、定年退職年齢が60歳よりも65歳、65歳よりも70歳と遅くなった方が退職金の支給額はより大きくなると想定できます。
年金の受給額は?
1980年5月10日生まれの方が22歳から働き、年収が500万円だと仮定した場合、受給できる厚生年金の金額は定年退職の年齢によって下記の表のように変化していきます。受給開始時期は原則65歳とし、65歳以降に定年を迎える場合は定年の翌年から受給開始としています。
定年退職時の年齢 | 年金の受給開始年齢 | 年金の額(年換算) |
---|---|---|
60歳 | 65歳 | 178万円 |
65歳 | 66歳 | 215万円 |
70歳 | 71歳 | 304万円 |
※厚生労働省 公的年金シミュレーターより筆者作成
上記表を確認すると、60歳を定年とするのと70歳を定年とするのでは、受給できる年金の額に1.7倍ほどの差がつきます。年収など諸条件にもよりますが、定年退職の年齢が70歳に近づけば近づくほど、将来の年金受給額も大きなものになっていきます。
何歳で定年を迎えるかは待遇など諸条件を鑑みて検討しましょう
定年退職を迎えると年齢に関係なく責任の程度や仕事内容が変わり、給与自体は減少する可能性が高いでしょう。しかし、定年退職の年齢が60歳や65歳、70歳と後ろ倒しになるほど、退職金や年金の面ついては有利になることが想定されます。
ライフプランの設計にあたり定年退職の年齢は重要になります。定年について考える際は、定年後の待遇や退職金、年金といった問題まで含めて考えると、よりしっかりとしたライフプランが立てられることでしょう。
出典
日経ビジネス 給料4~6割減が過半、生活のためが6割、定年後再雇用の厳しい現実
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
厚生労働省 公的年金シミュレーター
執筆者:柘植輝
行政書士