退職金に「確定申告」は必要? 申告で「お得」になるケースも!
配信日: 2023.01.16
本記事では、退職金と確定申告の関係や確定申告するメリットについて解説します。
執筆者:佐々木咲(ささき さき)
2級FP技能士
退職金の確定申告は不要
退職金は源泉徴収が済んだ金額が支払われるため、すでに納税は済んでいます。そのため、原則として確定申告の必要はありません。また、退職金は長年の勤労に対する報償的給与であることから、勤続年数に比例して決まる「退職所得控除額」によって、税負担が軽くなるように配慮がなされています。
退職所得の具体的な計算方法
では実際に、勤続年数20年の人が退職金1000万円を受け取った場合を例にとり、所得税を計算してみましょう。退職所得は以下の算式で計算します。
(退職金-退職所得控除額)×1/2=退職所得
勤続年数による退職所得控除額の計算方法は図表1のとおりです。
図表1
勤続年数※ | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数 |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
出典:国税庁「退職金と税」より筆者作成
※1年未満の勤続年数は1年とします。例えば、就職から退職まで1年と7日だった場合の勤続年数は2年となります。
次に、退職所得に乗じる所得税率は図表2のとおりです。今回のケースでは5%に該当します。
図表2
出典:国税庁「退職金と税」より引用
これらを踏まえた結果、退職所得は以下の算式で計算できます。
(1000万円-800万円)×1/2=100万円
100万円×5%=5万円
1000万円もの退職金を受け取っても、退職所得は5万円しかかかりません。1つの会社で定年まで働いた場合であれば、退職所得は0となり所得税はかからないという場合も多いでしょう。
退職所得控除額の適用には「退職所得の受給に関する申告書」が必要
退職金は退職所得控除額が考慮された源泉徴収が行われるため、退職金の金額にはよりますが、所得税は0または少額で済む場合が多いです。ただし、この退職所得控除額の適用を受けるためには、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなければならない点に注意しましょう。
提出がない場合には、退職金の額面金額に一律20.42%の所得税および復興特別所得税が源泉徴収されます。つまり、退職金1000万円に対して退職所得の受給に関する申告書を提出していない場合には、所得税が5万円から204万2000円に増額することになります。
ただし、退職所得の受給に関する申告書はほとんどの場合、会社側から記入の指示があるため過度に心配する必要はありません。もし会社側から指示がなければ、担当者に確認してみましょう。
退職金の確定申告をした方がお得な場合
退職金に源泉徴収された所得税がある場合には、確定申告することで還付を受けられる可能性があります。還付が考えられるケースは次のとおりです。
●退職所得の受給に関する申告書を提出していない
●退職後に支払った国民年金保険料、任意継続による厚生年金保険料などの社会保険料控除がある
●医療費控除がある
●ふるさと納税をした
●住宅ローン控除がある
など
「退職所得の受給に関する申告書を提出していない場合」以外は、事業所得や給与所得など一般的な確定申告でも還付になる代表的なケースです。「退職金だから」というわけではなく、確定申告で還付を受けられる通常の条件と同様であると理解してください。
退職金は確定申告不要だが還付の可能性もある
退職金は大きなまとまったお金を受け取ることになるため、税金が懸念されます。しかし、退職金はすでに源泉徴収された金額が支払われることから、原則として確定申告は不要です。ただし、所得税の還付を受けられる場合もあるため、退職金を受け取った年分の所得控除には注意を払っておきましょう。
出典
国税庁 退職金と税
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士