高齢者の医療保険 いつまで加入を続けるの?
配信日: 2023.01.18 更新日: 2023.01.19
高齢者の保険加入率は高い
人生100年時代といわれるように、最近では90歳を超えても元気に暮らしている方が多くなりました。しかし年齢を重ねるにつれさまざまな病気になることも多く、医療機関に通院する方も多くなっています。そのため、がんを始めとして心臓疾患などになったときに備え、医療保険を準備することになります。
日本は欧米とは異なり、健康保険制度が完備されており、多少の病気は健康保険でカバーできます。それにもかかわらず、医療保険に加入する目的は、健康保険の対象にならない病気への備えといえます。
80歳台の方の医療保険への加入比率は高い傾向にあります。高齢になるにつれ病気になることへの不安感から、これまで加入していた医療保険に特約を付加するだけでなく、新たに医療保険に加入される方も見受けられます。人生100年時代に備え、多くの高齢者が医療保険に関心をもっていることでしょう。
加入時の年齢により保険料に差が
医療保険の保険料は、若い年齢時点で加入しそれを継続している方と、80歳になってから新たに加入した方とでは大きな差があります。
例えば、医療終身保険で、40歳時点から加入した場合と、80歳になってから加入した場合とでは、保険料が年間で4倍ほどの開きがある商品もあります。40歳から加入している場合の保険料は、80歳を超えても変わりません。テレビのCMなどで「高齢になってからも安く加入できる」とうたっている保険もありますが、中身をしっかりと精査したいものです。
80歳を超えている人のほうが、重い病気にかかる確率も高いわけですから、保険料も高くなります。40歳から加入した人が80歳になる頃には、すでに約40年間払い続けており、保険料が安いのは当然といえます。それでも80歳を超えてから加入しようという人は、思い病気になり多額の医療費がかかるという不安が強いのかもしれません。
健康保険のきかない病気に対する不安から、80歳をすぎて新規に加入した場合の保険料は高くなります。加入する前に、現在の後期高齢者保険でどの程度カバーできるか、一時的な立て替えが必要になりますが、高額療養費制度の保障内容を検討されて後で、加入手続きをされることをお勧めします。
日本の公的保険はかなり充実
日本の健康保険制度は欧米をはじめ世界各国に比べても、かなり充実しています。75歳以上の後期高齢者保険の加入者は、決められた保険料を支払っていれば、所得に応じて、かかった医療費の1割から3割の負担で、病気の診断・治療や必要な薬の提供を受けることができます。
しかし、最新の医療技術による高度先進的な医療サービスの提供や、新規に開発された高額な医薬の投与、さらに入院時の差額ベッド代などについては、通常の健康保険がカバーしていないため、全額自己負担となります。そうした場合に備えて、医療保険に加入される方が多いと思われます。
もう1つの支援策が高額療養費制度です。重篤な病気にかかり、手術や長期入院が必要になった際に、支払う医療費に上限が設定され、それ以上支払った金額が後で戻ってくる仕組みです。高齢者がいるごく一般的な家庭では、手術や入院による医療機関への支払額が、月額5万8000円を超えると、それ以上は支払わなくて済むケースもあります。
ただし毎月医療機関に支払いをする必要があり、上限を超えた分が戻ってくるのには、一般的に3~4ヶ月先になります。仮に医療保険に加入されていなくても、健康保険制度で一定の医療費は、かなりカバーすることができます。
いつまで医療保険に加入を続ける?
80歳を超える年齢になると、日常生活をするにも心身の衰えが目立ってきます。ふとしたことで転倒して、骨折するケースなども多くなります。一方で日常の生活費も、これまで以上に節約したいという事情もあります。
慢性的な病状が続いている方でも、多くは健康保険でカバーできており、医療保険の世話になる機会も、それほど多くないかもしれません。特に年金収入が減少し、預金の取り崩しが進んでいる方は、80歳を超えたある時点で、支払いが続く医療保険の見直しを検討してもよいかもしれません。
終身保障で保険料の支払いが65歳など一定年齢で払い込みが終了した方は、保険料負担なしに保障が受けられるため継続するメリットは大きいといえます。しかし現在は未加入だが、病気への不安から加入を検討されている方は、慎重さが求められます。高齢で加入すると、支払う保険料も高額になり、受けられるサービスとの比較や、長期にわたり支払い続けることへの負担を考えましょう。
また継続的に支払いが発生しても、配偶者や子どもに負担をかけたくないとの理由で、医療保険に加入し続けることは見直してもよいと思います。多少の貯蓄があれば、医療費が増加しても、通常の保険で多くをカバーできますし、何とか日常生活は継続できると思われます。
保険会社は「新規の特約に加入すれば補償が充実して安心」と説明しますが、その分保険料も増加します。その補償が本当に必要なのかを慎重に検討し、加入する保険を限定する、場合によっては解約も選択肢になります。
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。