更新日: 2019.08.07 その他暮らし

〈リタイアメントプラン〉②銀行の“退職金プラン”はおトク?

〈リタイアメントプラン〉②銀行の“退職金プラン”はおトク?
人によって金額こそ違うものの、「退職金」は、今までになくまとまった金額のお金が手に入る機会です。
 
少しでもそのお金を有利に長持ちさせたいという思いで、まずは銀行へ足を運ぶ人も多いようですが、その際にはコツや注意しておきたいことがあります。
 
福島えみ子

執筆者:福島えみ子(ふくしま えみこ)

CFP(R)認定者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士
マネーディアセオリー株式会社 代表取締役
リュクスセオリーFPサロン 代表
大学卒業後、都市銀行に入行。複数の銀行、法律事務所勤務中に、人生の悩みは結局のところお金と密接に関係することを痛感、人生をより幸せで豊かにするお手伝いがしたいとファイナンシャルプランナーに。FP会社にて勤務後、独立。これまで500件以上の個人相談を担当すると共に、セミナー、執筆と幅広く活動。相続・資産運用・住宅相談・リタイヤメントプラン等を得意とし、個人相談にも力を入れる一方で、セミナーや企業研修、執筆を通じてわかりやすくお金の知識を発信することに注力している。

http://mdtheory.co.jp/

銀行の退職金プランには様々なプランがあります

名前こそ多少違うものの、多くの銀行で“退職金プラン”といった退職金を受け取った人専用のプランが用意されています。パンフレットや案内を見ると、この低金利時代にはめったにお目にかからなくなったような高めの定期預金金利が目を引きますが、こうしたプランは本当におトクなのでしょうか?
 
“退職金プラン”といっても定期預金のみのプランから、投資信託や他のサービスと組み合わせたプランまでさまざまですが、普段お受けするご相談で、銀行の窓口で「こんな退職金プランをすすめられました」とパンフレットや資料をご相談者がお持ちになる最近の定番が、定期預金と投資信託を組み合わせたプランです。
 
こうした定期預金には、1%や2%、ときには5%や6%など、思わず目を疑うくらいの魅力的な金利がつけられています。ただし、“投資信託をあわせて購入するとこの金利を適用”といった文言が添えられているものが多いようです。
 
一例をあげると、このようなプランです。
 


 

手数料の”金額”に注意

■定期預金の金利
まずは、こうしたプランの魅力的な定期預金金利で気をつけたいことがあります。このような金利は、年利、すなわち年単位の表示ですが、よく見るとプランの定期預金の預入期間は3ヶ月や4ヶ月等になっていることが多いのです。
 
つまり、実際に得られる利息は、預入3ヶ月であれば、実質、年利表示の4分の1というわけです。そして、有利な金利が適用されるのは3ヶ月だけで、その後は通常の金利がずっと適用となります。
 
■投資信託にかかる手数料
次に留意したいのが、プランにセットされた投資信託にかかる手数料です。こうした投資信託商品には販売時の手数料がかかるものが多いのですが、この手数料が意外と無視できない金額なのです。よくある販売時手数料の料率は2%~3%程度。
 
上記のプラン例の販売時手数料を“金額”でご覧いただくと、もうお気づきでしょうか? プラン例では、定期預金で有利な利息を得ても、結局投資信託の購入時手数料の額の方が上回るため、自分の支払う手数料の方が多くなってしまっています。
 
ちなみに、投資信託では、こうした購入時手数料だけではなく、運用している間かかり続ける信託報酬という手数料も必要です。
 
■金額をきちんと把握
こうした手数料のコストは、銀行でおすすめされたときにきちんと把握できている方ばかりではありません。ご相談の現場でご一緒にプランを確認していくと、驚かれることも少なくないのです。そして、例えば、「3%の手数料がかかりますよ」とお伝えしたときは特に反応がない方でも、「3%の手数料というのは、100万円投資信託を購入すると最初に3万円手数料を引かれるということです」と具体的な金額でお伝えすると、「えっ、そんなに引かれるんですか?じゃあ、この投資信託は買うのをやめます」とおっしゃる方もいらっしゃいます。「%表示」だと具体的に支払う金額を実感できていないことも往々にしてあるようです。

定期預金だけを利用する限りはたしかに有利

では、こうした“退職金プラン”利用しないほうがいいのか?といえば、そうではありません。“定期預金だけ”を利用するなら、3ヶ月だけの定期預金とはいえ、通常よりも金利は高くおトクといえます。これらプランの利用条件を“退職後1年以内”としている銀行も多いことから、上手に利用すれば、3ヶ月満期終了後にまた別の新しい銀行に退職金を移してもう一度、金利の高いプランに預け入れということも可能です。
 
ただ、それを実行する際、気をつけたいのが、金融機関の選択と退職金の移動です。退職金の移動、つまり振込で振込手数料がかかってしまうと、その金額と適用金利によってはせっかくの利息分が思ったほどのうま味がないという場合もあり得ます。
 
では、現金で引き出して新しい銀行へ預け入れようと思っても、最近はATMで一日に現金が引き出せる金額に上限がある場合もあります。また、銀行の場所によっては交通費もかかるかもしれません。そうした費用や手間の方が高くなってしまっては本末転倒ですので、気をつけたいところです。
 
このように、退職時だけ利用できる“退職金プラン”は、使いかたによっては有利となりますが、セットで勧められる投資信託やその他商品が自分の場合は本当に必要なものなのかどうかを比較・吟味して上手に利用したいものです。
 

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