更新日: 2023.01.30 定年・退職
定年後も働いた方が「月3万円」お得?「働き続けた場合のメリット」について解説
本記事では、高年齢雇用継続給付について解説します。高年齢雇用継続給付には「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の2種類があります。では、それぞれ見ていきましょう。
執筆者:田邉史(たなべ ふみ)
二級ファイナンシャルプランニング技能士
高年齢雇用継続基本給付金とは?
まずは、高年齢雇用継続基本給付金についてご説明します。どんな人が対象になるのか、どのくらいの期間受給できるのかについて解説していきます。
受給資格について
雇用保険の被保険者には、失業中の生活の安定を図りつつ求職活動を容易にすることを目的とした基本手当 が支給されますが、その基本手当を受け取らずに働き続ける人が対象です。加えて、以下の条件を満たしている必要があります。
・60歳以上65歳未満で雇用保険の被保険者である
・ 被保険者期間が5年以上ある
・給料が60歳時点よりも75%未満になっている
例えば、60歳の定年でA社を退職した後、基本手当を受け取ることなくB社に再就職した場合も高年齢雇用継続給付金が支給されます。
受給期間について
被保険者が60歳になった月から65歳になる月まで支給されます。60歳に到達した月も65歳に到達する月も、初日から末日まで被保険者である必要があります。
高年齢再就職給付金とは?
次に、高年齢再就職給付金について見ていきましょう。
受給資格について
基本手当を受給した後に、再就職をした人が対象になります。さらに、以下の条件を満たしている必要があります。
・60歳以上65歳未満で雇用保険の被保険者である
・被保険者期間が5年以上ある
・給料が60歳時点よりも75%未満になっている
・再就職した日の前日時点で、基本手当の給付残日数が100日以上ある
受給期間について
高年齢雇用継続基本給付金と同様、受給期間は60 歳に到達する月から65 歳に到達する月までです。
さらに、基本手当の支給残日数によって受給期間が変わります。再就職した日の前日時点で基本手当の支給残日数が100日以上200日未満の場合は1年間、200日以上あれば最大2年間支給されます。
支給額の計算方法
高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金の支給額は、給料の低下率によって決まります。この支給率を、支給対象月(60歳に達した月から65歳に達した月)の給料に掛けて計算します。
60歳到達時点の給料と比較した場合の低下率が61%以下の場合には、最大の15%が支給されます。低下率が61%以上から75%未満の場合は、低下率に応じて支給率が決まります。図表1を参考にしてください。
例えば、支給対象月の給料が20万、60歳到達時よりも60%低下したと仮定しましょう。低下率61%以下のため支給率は最大の15%となり、20万×15%=3万円。つまり、月3万円が支給されるのです。
図表1
厚生労働省 Q&A~高年齢雇用継続給付~より筆者作成
受給以外のメリットは?
支給額は給料の低下率によって変わりますが、先述した例のように月3万円支給されるのはありがたいことです。さらに、給付金以外のメリットについて説明します。
厚生年金への加入が継続できる
60歳以降も継続して働く、または再就職をすることで厚生年金への加入を続けられます。その結果、将来的に被保険者本人が受け取る老齢厚生年金、また被保険者が亡くなった場合に遺族に支給される遺族厚生年金の受給金額が増えます。
課税されない
高年齢雇用継続基本給付金も高年齢再就職給付金も課税対象とはなりません。公的年金も課税対象となる中、非課税というのは大きなメリットといえるのではないでしょうか。
高年齢雇用継続給付を受ける上での注意点
ここまで高年齢雇用継続給付のメリットについて説明してきましたが、受給する上で注意した方が良いことについても触れておきましょう。
年金の一部がカットされる
年金を受け取っている場合には、高年齢雇用継続給付を受けると在職により年金の支給が停止され、年金の一部が減額されます。
60歳以降に厚生年金に加入しながら受け取れる老齢厚生年金を在職老齢年金といいますが、この在職老齢年金が一部、場合によっては全額支給停止になることもあります。
再就職手当との併給は不可
高年齢再就職給付金と再就職手当は同時に受け取ることはできません。従って、シミュレーションを行った上で、どちらを選択した方がお得か考える必要があるでしょう。
介護休業給付
高年齢雇用継続給付と介護休業給付は同時には受けられません。介護休業給付の支給対象になっている月は、高年齢雇用継続給付の対象にならないのです。ただし、初日から末日の全期間ではなく、月の一部だけの場合は対象になります。
まとめ
人生100年時代といわれている今、これからのことを考えると60歳以降も働き続けるという方がより現実的なのかもしれません。
実際に2023年現在 65歳までの雇用確保が義務化され、70歳までの就業確保は企業の努力義務とされています。注意点やデメリットも考慮した上で、高年齢雇用継続給付等の制度の活用をおすすめします。
出典
厚生労働省 Q&A~高年齢雇用継続給付~
厚生労働省 基本手当について
日本年金機構 失業給付・高年齢雇用継続給付の手続きをされた方へ
厚生労働省 高年齢者雇用安定法改正の概要
執筆者:田邉史
二級ファイナンシャルプランニング技能士