老後の収入は年金だけ。家賃いくらぐらいなら大丈夫?

配信日: 2023.02.01

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老後の収入は年金だけ。家賃いくらぐらいなら大丈夫?
老後の収入は年金だけという方も多いことと思います。一般に、老後は現役のころと比べて、収入が少なくなります。ですから、それに伴い、支出も抑えたいところです。
 
賃貸住宅にお住まいの方は、老後も家賃を支払い続けることになります。いくらぐらいなら支払い続けることができるのか、気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。本記事では、そのような方のために、家賃がいくらくらいなら大丈夫かについて、解説していきます。
中村将士

執筆者:中村将士(なかむら まさし)

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

家賃負担率は手取り収入の30%が目安

家賃負担率(手取り収入に対する家賃の割合)は、一般に、30%が目安とされています。これは、現役でも老後でも違いはありません。
 
日本年金機構の「令和4年4月分からの年金額等について」によると、令和4年4月分からの年金額は、以下のとおりです。
 

・国民年金(老齢基礎年金)のみを受け取る場合:月額6万4816円(満額)
・厚生年金(老齢厚生年金)を受け取る場合(※):月額21万9593円

※夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額。基礎年金は満額。

 
ここから、老後を夫婦2人で過ごすとした場合の収入を、以下のように仮定します。
 

・2人とも老齢基礎年金のみを受け取る場合(※):月額12万9632円(年額155万5584円)
・1人が老齢基礎年金・老齢厚生年金を受け取り、1人が老齢基礎年金を受け取る場合(※):月額21万9593円(年額263万5116円)

※以下では便宜上、2人とも老齢基礎年金のみを受け取る場合を「ケース1」、1人が老齢基礎年金・老齢厚生年金を受け取り、1人が老齢基礎年金を受け取る場合を「ケース2」とします。

 
手取り率(収入に対する手取り収入の割合)を90%と仮定すると、ケース1の手取り収入は約11万6000円(月額)、ケース2の手取り収入は約19万7000円(月額)となります。老後の家賃を、家賃負担率30%として計算すると、ケース1では3万4800円、ケース2では5万9100円となります。
 

家計調査から見た家賃負担率は22%程度

総務省統計局の「2021年家計調査(家計収支編、2人以上の世帯、(高齢者のいる世帯)世帯主の就業状態別)」によると、「65歳以上の者がいる世帯(世帯主が65歳以上、無職世帯)」の1ヶ月間の実収入は24万7768円、実支出は26万247円となっています。
 
実収入のうち、年金収入に相当する「公的年金給付」は、20万179円となっています。この金額は、先のケース2で算出した手取り収入に近いものとなっています。
 
実支出のうち、家賃に相当する「家賃地代」は、3500円となっています。この金額が非常に小さいのは、この調査の対象者の「持家率」が影響していると考えられます。
 
持家率は集計総数2438世帯のうち91.6%であり、家賃地代を支払っている世帯はわずか7.7%(188世帯)です(残りの0.7%については不明)。そこで、家賃地代3500円を、家賃地代を支払っている世帯のみの平均金額として計算し直す必要があります。すると、家賃地代は約4万5000円となります。
 
上記の年金収入20万179円と家賃地代4万5000円から家賃負担率を計算すると、家賃負担率は約22.48%となります。これだけを見ると、家賃が4万5000円程度であれば、目安となる家賃負担率30%を下回っているため、大丈夫な気がします。
 
しかし、家計調査の収支(実収入-実支出)が赤字である点には注意が必要です。つまり、家賃が4万5000円であっても、それで家計が大丈夫とは言い切れず、老後の貯蓄残高や支出のコントロールは、ある程度は必要であるということです。
 

まとめ

本記事では、老後の収入が年金だけの方が賃貸住宅に住み続けるために、どのくらいの家賃であれば家賃を支払い続けられるのかについて、解説をしました。
 
一般に、家賃負担率は手取り収入の30%が目安とされています。ただし、この数値はあくまで目安です。そこで、総務省統計局の「2021年家計調査」を参考に、実際、65歳以上の方がいる世帯(世帯主が65歳以上、無職世帯)は、どれくらい家賃の負担をしているのかを算出しました。そこで算出した平均家賃は月額4万5000円であり、家賃負担率は約22%となりました。
 
しかし、家計調査を見ると、その世帯の収支は赤字であり、預貯金を取り崩しながら生活していることが推察されます。つまり、預貯金の多寡により、支払い続けられる家賃は異なるということになります。
 
本記事で参考にした家計調査は、あくまで平均値であり、あなたの家計と異なる部分もあるでしょう。受け取れる年金額については「ねんきん定期便」である程度把握することが可能です。
 
老後の支出については、現在の支出を基に、仮定することができます。そこから、いくらであれば家賃を払い続けられるのかを試算してみましょう。その際、家賃負担率を参考にしていただけると良いかもしれません。
 

出典

日本年金機構 「令和4年4月分からの年金額等について」
総務省統計局 「2021年家計調査(家計収支編、2人以上の世帯、(高齢者のいる世帯)世帯主の就業状態別)」
 
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
 

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