「終活」も早めの準備が大事。どんな準備をしておくといい?
配信日: 2023.02.01
それ以降には自分できちんと意思表示ができない可能性があることを踏まえ、自分らしい最期を迎えるため、残された家族や親族に迷惑をかけないようにする準備をしておく必要がありそうです。
執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com
タブー視はNG。早いうちからどんな最期にしたいかを話しておく
「死」について語ることは「縁起でもない」とタブー視する方もいらっしゃいます。
しかしそれは、誰にでも必ず訪れる「別れの時」を見ないふりをしている、向き合わないというケースでもあります。その結果、いざ自分で意思表示ができなくなったときに、本人ではなく家族主体で「どのような最期を迎えるのか」といったことを決められてしまうことになるかもしれません。
1日でも、1時間でも、生物学的に長生きすることが選ばれてしまい、本人の意思に反して、点滴や胃ろうで栄養を摂取することが選ばれてしまうということもあります。
自分の最期をどのようにしたいのか事前に伝えていないと、自分では「そうではない」ということを表現できずに時を刻み続けることになってしまう可能性があります。そうならないうちに、ちょっとした時間で少しずつ、自分の想いを親族にわかってもらうことが大切です。
(出典:厚生労働省「もしものときのために「人生会議」」)
デジタルデータの管理
最近では、重要な個人情報のデジタル化、クラウド化が当たり前になっています。ネット銀行を利用していたり、ネット証券で資産運用をしていたりする場合、ログインIDやパスワードがないと、さまざまな手続きをスムーズに行うことができないケースが多いです。
健康寿命を過ぎて、意思表示がままならなくなってしまった時に、または自分がこの世を去ってしまってから、口座情報などがパスワード管理されていて開けることができない場合、相続の手続きで残された親族から多大な時間と労力を奪ってしまうことになります。
「自分は死んでいるので関係ない」とはなかなか割り切れないものです。家族が亡くなった方の個人情報を探しあぐねている途中で、家族に知られたくないものまで見られてしまうかもしれません。
こういったことにならないように、デジタルデータの整理管理を徹底しておくことも大切です。日常の仕事や雑務が少なくなるタイミングや年末年始などの節目など、年に1度整理しておくとよいでしょう。
葬儀、埋葬やお墓について
生前葬を検討している人もいらっしゃるかもしれません。生前葬とは、自分が生きている間に自分がお別れを言いたい人に対して行うものです。葬儀と違って、自分の好みで自分が費用を出して行いますから、親族に負担をかけることもありませんし、遺体を火葬するまでの時間的制約があるわけではないので、納得のいく形で自分の近しい人にあいさつができます。
また生前葬を行ったとはいえ、自分が亡くなったあとは荼毘に伏す(だびにふす)ことは避けられませんが、簡素に済ませることができるかもしれません。それほど一般化していないので、親族からの合意が得にくい場合もあるかもしれませんが、その際にいざというときの埋葬やお墓についても決めておくとよいでしょう。
葬儀費用や埋葬費など、死後にかかる費用を自身の貯金から出してほしい場合は、その想いとともに口座情報などを家族に伝えておきましょう。また、自分の死後、家族が生活に困らないよう加入している生命保険の保険証券など、重要書類をひとまとめにしておくと、家族が手続きをする際にスムーズに進むでしょう。
親族が少なくなっている今、最期まで自分の面倒を自分でみる時代
昔ならば大勢の親族に囲まれて、当たり前のように先祖代々の墓に入る、これに対して何の疑問も抱きませんでしたが、少子化が進むいま、最期の面倒も自分でみることが求められているのだという認識を持つことが大切です。
遺産相続について、自分の想いを伝えるのがベストでしょうが、相続人の考えと必ずしも一致しないため、思いのほか、混乱を招き、残された遺族間での関係がぎくしゃくしてしまう恐れもあります。相続財産の分割がいつまでたっても決着をみなければ、想定以上の相続税を納付しなければならなくなるという事態に陥る可能性もあります。
こういったことが避けられるように自分の財産の居所を明記し、「自分の関係者が後々不利益を被ったり、不快な想いをしたりしないこと」を提案しておくことが遺族への感謝の気持ちのひとつといえるかもしれません。
出典
厚生労働省 令和3年簡易生命表を公表します
厚生労働省 もしものときのために「人生会議」
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者