更新日: 2023.02.01 セカンドライフ

老後は「年金と退職金」で足りる? 高齢になると急増する医療費に要注意

老後は「年金と退職金」で足りる? 高齢になると急増する医療費に要注意
老後、収入が限られる一方、医療費の負担が増えてしまう可能性が高くなります。
 
その際、年金と退職金で足りるのでしょうか? また、老後に備えて、どのようなことに注意するべきなのか、考えてみましょう。
飯田道子

執筆者:飯田道子(いいだ みちこ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト

金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。
どの金融機関にも属さない独立系FPです。

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医療費は年齢を重ねるほどかかる傾向にある

年齢を重ねても、自分には毎月年金が支給されるし、退職金もあるから「医療費は気にしなくても大丈夫なのでは?」と考えている人もいるのではないでしょうか。
 
実際に、今まで蓄えてきた預貯金に加え、退職金や支給される年金のみで賄える人もいると思います。また、万が一、病気にかかった場合であっても、病気の種類や症状によっては、思うほど医療費はかからないということもあるかもしれません。
 
とはいえ、年齢を重ねるほどに、医療費はかかる傾向にあることが分かっています。
 
厚生労働省が取りまとめた2020年度の国民医療費の概況によると、年齢を重ねるほどに、医療費がかかっていることが確認できます。具体的には、2020年度の65歳以上の1人あたりの医科診療医療費は54万8400円となっています。このうち70歳以上~75歳未満の1人あたりの医療費は60万6400円、75歳以上の1人あたりの医療費は68万3200円となっています。
 
2020年度の65歳以上の1人あたりの薬局調剤医療費は12万3900円でした。このうち70歳以上~75歳未満の1人あたりの医療費は13万4900円、75歳以上の1人あたりの医療費は14万7100円でした。
 
唯一、年齢と医療費の負担が反比例しているのが歯科診療医療費であり、2020年度の65歳以上の1人あたりの薬局調剤医療費は3万2800円です。このうち70歳以上~75歳未満の1人あたりの医療費は3万3500円、75歳以上の1人あたりの医療費は3万3200円という結果になっています。
 

75歳以上で一定以上の所得がある場合、負担割合は2割に上昇する

今までは75歳以上の後期高齢者の場合、医療費の負担額は1割となっていました。しかしながら、法律が改正され、75歳以上で後期高齢者医療保険の対象の人であっても、所得が多い人の場合、病院等での窓口での負担額は2割へと、2022年10月1日から負担割合が変更されています。
 
窓口で負担割合が2割になるのは、課税所得が28万円以上かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が単身世帯の場合は200万円以上、複数世帯の場合は合計320万円以上の人です。つまり、収入があっても、この金額以下であれば、後期高齢者医療保険の対象ですので、1割負担のままです。
 
なお、現役で働いている人並みに所得がある人の場合、従来と変わらず、負担割合は3割のままです。
 
所得があるとはいえ、今まで1割負担であったのが倍の2割負担になってしまうと、気分的にも負担に感じる人はいるのではないでしょうか。この制度には配慮措置が設けられており、窓口負担割合の引き上げに伴って、2025年9月30日までの間は、1ヶ月の外来医療における負担増加額を3000円までに抑えることになっています(入院の医療費は対象外)。
 
同一の医療機関・薬局等での受診した場合、上限額以上窓口で支払う必要はありませんが、負担増加額が3000円を超えた場合は、それ以降の同月内の受診については1割負担になります。また、そのような場合ではないときには、1ヶ月の負担増を3000円までに抑えるため、後日差額を高額療養費として払い戻すようになっています。
 
ちょっと複雑ですので、詳しくは市区町村の健康保険の窓口などで確認することをおすすめします。
 

楽観視せず、対策を練っておく

現状では、年齢を重ねることで医療費が増え、それを補うために所得を得ている場合には医療費負担が増えるなど、いずれにしても、医療費の負担増は免れない状況になっています。
 
まず、考えておくべきことは、万が一のことを考えて自分が加入している医療保険や保障内容の見直しをすることです。新たに加入が難しい場合には、手元にある預貯金で賄えることができるのかをシミュレーションすることが大切です。
 
ただし、加入できるからといって、新たに高い保険料を支払って、保険契約することは慎重に検討してください。高額な保険料を払える財力があるのなら、医療費負担は預貯金で賄うことができる可能性が高いです。
 
いずれにしても、何とかなると安易に考えることなく、対策を練っておく必要があります。預貯金や保険だけでなく、いかに健康を維持するかを考えることも必要です。規則正しい生活をする、適度な運動も心がけていきましょう。
 

出典

厚生労働省 令和2(2020)年度 国民医療費の概況(令和4年11月30日)
厚生労働省 後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)
 
※医療費の概況は2021年版が出ていますが、速報版で内容が整っていないため、2020年版を使っています。
 
執筆者:飯田道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト

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