更新日: 2023.02.01 定年・退職

このままだと「75歳定年制」もあり得る? 75歳でも退職年金制度は利用できる?

執筆者 : 柘植輝

このままだと「75歳定年制」もあり得る? 75歳でも退職年金制度は利用できる?
年々延びていく平均寿命とともに延び続けているものがあります。それは定年年齢です。今後、定年年齢が今よりも延び、75歳になってしまうことはあり得るのでしょうか。また、75歳で定年退職しても、退職年金制度を利用することはできるのでしょうか。
 
今回は定年年齢と退職年金制度について考えてみます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

定年制度の歴史

今でこそ、再雇用や定年延長などにより、定年は65歳が主流になりつつありますが、かつては55歳が定年とされていた時代もありました。そこから平均寿命や健康寿命の延びに伴い、1986年に60歳を定年とすることが努力義務とされ、1998年には60歳未満の定年が禁止となりました。
 
2012年には希望する労働者全員に対して65歳までの雇用確保が義務とされ、現在は実質的に65歳が定年となっています。
 
また、2021年4月1日からは70歳までの雇用確保が努力義務となり、事業主は定年制を廃止するか定年を70歳以上とすること、あるいは70歳まで業務委託契約を締結するなど何らかの形で希望者が70歳まで働けるように体制を整えることとされました。
 
上記は完全な義務ではなくあくまでも努力義務であり、必ずしも70歳まで働ける環境を整備しなければならないわけではありません。しかし、65歳までの雇用確保が努力義務から義務とされた過去の背景を考えると、いずれ定年が70歳となる日は近いのかもしれません。
 

75歳定年制はあり得る話なのか

定年が現行の65歳、そして70歳を超えて75歳にまで及ぶ可能性があるのか、気にされている方も少なくないでしょう。結論から言うと、75歳定年制はある程度現実的な話だと思われます。
 
2022年4月に、老齢年金の繰下げ受給の上限年齢が70歳から75歳まで引き上げられました。また、厚生年金における原則としての支給開始年齢についても、過去に何度か引き上げられており、以前は60歳からだったものが今では65歳からとなっています。
 
70歳まで働けるように雇用の整備が進みつつある今の段階で、年金の繰下げ受給の上限年齢が75歳までになったことを考えると、将来的には定年も75歳に引き上げられ、年金は75歳から受給となるのもあり得ない話ではないと考えられます。
 
あくまで予想ではあるものの、特に現在20代30代と若い世代においては、いずれ定年が75歳となることも可能性のひとつとして覚悟しておく必要がありそうです。
 

75歳でも退職年金制度は利用できる?

退職年金とは、定年退職した勤務先から年金形式で支払われる退職金のことです。企業によっては、一般的な一括で支払われる退職一時金に代えて、あるいは併用して退職年金を選択し受け取ることができるようになっています。
 
法律上、退職年金には「75歳以上は利用できない」など年齢による制限がないため、75歳で定年退職しても退職年金制度は利用できるでしょう。
 
ただし、退職金制度自体、法律で義務付けられているわけではないため、この制度が存在しない企業も少なくないかと思われます。また、退職金制度のある企業でも退職金は一括で支給し、年金での支給は行っていないということもあります。
 
場合によって、必ずしも退職年金を受け取れるわけではないことにはご留意ください。
 

定年が75歳となるのは十分あり得る話である

過去、定年が引き上げられ、それに応じるかのように年金の受給に関する年齢も引き上げられてきた背景を考えると、現在主流である65歳という定年も徐々に引き上げられ、将来的には75歳が定年となる可能性も十分にあり得ます。
 
とはいえ、退職年金制度にその影響は小さく、該当する企業であれば、定年が75歳となっても基本的には制度を利用できる可能性が高いでしょう。
 
定年年齢を含む労働環境は、世間の流れによって今後も変わっていくことが予想されます。私たち現役世代が将来のライフプランを策定する際は、自身にとって定年を何歳とすることが最適なのかも視野に入れ、柔軟に考えていくことが必要な時代となっているのかもしれません。
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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