更新日: 2023.02.16 介護

元気なうちに考えておきたい。もしも認知症になったらお金の管理、どうすればいい?

元気なうちに考えておきたい。もしも認知症になったらお金の管理、どうすればいい?
「自分が認知症になったら、預貯金や年金、運用している資産の管理はどうなるのだろう」と不安を感じている人は多いでしょう。認知症などによってお金の管理が難しくなった場合に、法的な代理人や家族に管理を託せる制度はさまざまあります。
 
本記事では、認知症になった場合のお金の管理方法を4つ取り上げて、それぞれの特徴をまとめました。ぜひ参考にして、将来に備えて元気なうちに準備しておきましょう。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

認知症患者のお金の管理は成年後見制度の利用が基本

全国銀行協会は2021年2月に、認知判断能力が低下した人の資産に関する取引の基本的な考え方について、次のような指針を発表しています。

・認知判断能力が低下した本人との取引⇒財産保護の観点により、親族などに成年後見制度の利用を促す。
 
・法定代理人(成年後見人など)との取引⇒法定代理人であることを確認した上で取引する。
 
・任意代理人との取引⇒任意代理人の届出がなされている場合は任意代理人と取引する。
 
・無権代理人との取引⇒成年後見制度を利用できない場合などにごく限定的に取引する。基本的には成年後見制度などの利用を促し、成年後見人などが選任された後は、基本的に無権代理人との取引は行わない。

以上を踏まえると、認知症を患った後の銀行預金などの管理方法は、「成年後見制度」の利用が基本の選択肢となるでしょう。
 

成年後見制度とは

成年後見制度とは、認知症などの理由で判断能力が低下した人の保護を目的とする制度です。成年後見制度を利用すると、法的に権限を与えられた成年後見人などが、財産管理や契約締結・取り消しなどの代理やサポートを行うようになります。
 
成年後見制度には、「法定後見制度」「任意後見制度」の2種類があります。

■法定後見制度
本人の認知能力が低下した後に、家庭裁判所が成年後見人等を選任する制度です。認知能力の程度などによって、補助、補佐、後見の3種類があります。
 
■任意後見制度
本人が認知能力のあるうちに成年後見人(任意後見人)を自ら選ぶ制度です。任意後見人は本人の判断能力が不十分になったときに、あらかじめ契約(任意後見契約)で取り決めておいた範囲の事務などを代行します。

将来認知症になったときに自ら備えたい場合は、任意後見制度を利用することになります。
 

お金の管理を託せる制度は成年後見制度以外にもある

認知症になった後に家族などの代理人にお金の管理を託せる手続きは、成年後見制度だけではありません。次のような制度も利用できるため、任意後見制度も含めてどの制度を利用するかを家族と話し合って、手続きしておくとよいでしょう。

・家族信託
・代理出金に対応した信託商品
・銀行の代理人指名手続き・代理人カードの発行

 

家族信託

家族信託とは、老後資金の管理など特定の目的に従って、自分の資産の管理や処分を家族に託す制度です。裁判所が関与しないため、成年後見制度と比べて手続きの負担が軽く、資産運用や処分などが柔軟に行いやすいメリットがあります。
 
家族信託では、委託者(本人)、受託者(家族)、受益者(財産管理で発生した利益を受ける人。本人である場合が多い)の三者間でやり取りが行われます。委託者が託した財産を受託者が管理・運用・処分し、運用や売却などによって生じた利益が受託者から委託者に渡るというのが、基本的な流れです。
 
家族信託の依頼をしたい場合は、弁護士、行政書士、司法書士などの士業に相談するとよいでしょう。
 

代理出金に対応した信託商品

金融機関が取り扱う信託商品の中には、指定した代理人による出金が可能な、認知症対策に特化したものがあります。このような信託商品を契約しておくと、本人が認知症になって取引ができなくなっても家族が代わりにお金を引き出せるようになるため、高額な医療費が発生した場合なども安心です。
 

銀行の代理人指名手続き・代理人カードの発行

銀行の中には、預金者本人があらかじめ申し込むことで、指名した代理人による預金口座や投資口座などの取引ができるところもあります。代理人の範囲は、2親等以内など、身近な親族に限定されている場合が多いようです。
 
認知症を患って自分で取引できなくなった場合に備えて、代理人指名手続きと代理人カードの発行をしておくとよいでしょう。
 

認知症になる前にお金の管理について家族と話し合っておこう

認知症は、誰にでも可能性があるリスクです。認知能力が低下してしまってからだと本人の意思確認が難しいため、家族がお金の管理をするために必要な手続きが煩雑になってしまいます。
 
元気なうちにお金の管理方法について家族間で話し合い、必要な手続きを取っておくことが、お金の管理に関する不安を取り除き、将来の家族の負担軽減につながるでしょう。
 

出典

金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)
法務省 Q1~Q2 成年後見制度について
厚生労働省 成年後見制度とは
一般社団法人 家族信託普及協会 制度の概要 |
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集