更新日: 2019.01.07 介護
親が重い認知症に。「成年後見人」をつけたほうがよいか?
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
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成年後見人制度とは
重度の認知症などにより判断能力が衰え、自分の預金管理なども十分にできない人に対して、それに代わって、財産管理や各種法的な手続きを代行するのが「成年後見人」です。
親族がなる場合と、弁護士や司法書士など第三者がなる場合があります。家庭裁判所が選定し、原則終身その人につき業務を担当します。認知症の人が急増しており、こうした人の財産保護が社会問題になりつつあります。
一方で成年後見人に選定された人が、管理すべき財産を使い込み、逮捕される事件も起こっています。
一人暮らしで、子どもなどの親族が近所にいない人の認知症が進むことで、問題が起こります。金銭の管理が十分できないために、「預金通帳が見当たらない」「何度も同じ支払いを繰り返す」「見知らぬ人にお金を渡した」といったケースが増えては大変です。
こうした場合は、成年後見人が、認知症の人に代わって財産を管理することで、財産が保護されることになります。この制度は、成年後見人が基本ですが、委託者の判断能力の差により、「保佐人」「補助人」という後見人より緩い立場もあります。業務の内容は、基本的には後見人と同じです。
成年後見人制度のメリット
こうした成年後見人制度のメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。
①預貯金など保有財産が長期に保護される。
②後見人が各種の法律業務や諸手続きを代行できる。
③不当に結ばされた契約を解除できる。
一人では通帳の管理、預金の引き出しも出来ませんし、役所へ出す必要な書類も作成できません。また不審な人が訪ねてきて、だまされた契約を結ぶ心配もあります。
その意味では、身寄りのない人や、子どもなどの親族が近くにいない人、さらには子どもが近くにいても、将来遺産相続で揉めそうな人は、制度を利用するメリットはありそうです。
成年後見人制度のデメリット
ではこの制度の問題点はないのでしょうか。この制度のデメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。
①生前贈与など相続税対策ができない。
②親族でも預金の引き出しなど財産移動ができない。
③本人が社会的な地位や役職に就けない。
後見人は本人の財産を減らす行為は、本人にとって望ましいこととは考えませんので、土地や現金の贈与や、親族が通帳やカードで預金を下ろす行為に対しては、「イエス」といってくれません。
ですから、生前贈与や預金の引き出しの余地を残したいと考える場合、成年後見人制度は、逆に障害となりかねません。
選任の方法と後見人の報酬
成年後見人の選定は家庭裁判所が行います。親族などが申請することも可能ですが、申請をした親族を、家庭裁判所が選任するとは限りません。とくに親族間で、相続をめぐるトラブルがありそうな場合は、親族でない第三者を指定するのが一般的です。
一度選定されると、その人が最後まで成年後見人の業務を担当します。かりに親族との相性が悪くても、後見人の差替えは認められません。
成年後見人の報酬は、とくに決まりはありませんが、月額2万円が標準とされています。管理する財産が2千万円、3千万円と額が多くなるにつれ、2万円より高くなります。
また最近では、NPO法人などが、無償で引き受けるケースもあるようです。通常の金額で計算しても、月に2万円だと年額24万円はかかります。それが長期になることもありませので、申請時に考慮しておきましょう。