更新日: 2023.03.04 定年・退職

【失業給付金】64歳と65歳では「約73万円」の差に!? 基本手当と高年齢求職者給付金について解説

【失業給付金】64歳と65歳では「約73万円」の差に!? 基本手当と高年齢求職者給付金について解説
退職する時期によって、受け取れる失業給付の種類が異なります。例えば、64歳で退職すれば基本手当、65歳で退職すれば高年齢求職者給付金です。1年違うだけで受け取れる金額も変わってきます。
 
本記事では基本手当と高年齢求職者給付金について解説し、具体的に給付金にどれくらいの差額が出るのか計算します。
田邉史

執筆者:田邉史(たなべ ふみ)

二級ファイナンシャルプランニング技能士

基本手当について

まず、基本手当から解説します。受給要件や支給額、給付日数について説明します。
 

受給要件は?


 
就職する意思と能力があり、求職活動をしているにもかかわらず就職できない場合に支給される失業給付が基本手当です。
 
離職する日以前の2年間に、雇用保険に通算して12ヶ月以上加入していたことが条件になります。倒産や解雇などにより退職を余儀なくされた「特定受給資格者」と労働契約が更新されなかったために離職した「特定理由離職者」は、離職の日以前の1年間に被保険者期間が6ヶ月以上必要です。
 
以下に該当する人は、基本手当を受け取れません。

・病気やけがをしていてすぐに就職できない
・妊娠や出産、育児ですぐには就職できない
・しばらく休養しようと思っている
・家事に専念するため、すぐには就職できない

 

支給額は?

基本手当で受け取れる1日当たりの金額を「基本手当日額」といいます。原則、離職した日の直近6ヶ月に支払われた賞与以外の賃金の合計を180日で割った金額の50%から80%、60歳から64歳の場合は45%から80%です。賃金が低いほど比率は高くなります。
 
基本手当日額の上限は、図表1のとおり年齢区分ごとに定められています。
 
【図表1】


 
ハローワーク インターネットサービス 基本手当について
 

給付日数は?

給付日数は、年齢や被保険者期間、離職の理由によって異なります。図表2が会社都合、図表3が自己都合の場合です。20年以上勤務した60歳以上65歳未満の人が、会社都合で離職したときは240日、自己都合で離職した場合は150日給付されます。
 
【図表2】(会社都合による離職)


 
ハローワーク インターネットサービス 基本手当の所定給付日数
 
【図表3】(自己都合による離職)

 
ハローワーク インターネットサービス 基本手当の所定給付日数
 

高年齢求職者給付金について

次に、高年齢求職者給付金について解説します。基本手当と同様に受給条件と支給額、受給日数について見ていきましょう。
 

受給条件は?

65歳以上の雇用保険の被保険者で、一定期間ごとに就職と離職を繰り返す短期雇用特例被保険者や日雇労働被保険者ではない人のことを「高齢者被保険者」といいます。この高齢者被保険者が失業したときに、被保険者の期間に応じて基本手当日当額の30日分または50日分を支給されるのが高年齢求職者給付金です。
 
高年齢求職者給付金を受け取るには、ハローワークで高年齢受給資格の決定を受ける必要があります。資格が認められるには、以下の要件を満たさなければいけません。

・働く意思と能力があるのに就職できない状態である
・算定対象期間(原則離職前の1年間)に被保険者期間が通算して6ヶ月以上ある

 

支給額は?

高年齢求職者給付金の基本手当日額は、離職前6ヶ月間に支払われた賃金を基に計算されます。給付額は図表4のとおりです。基本手当とは異なり、失業認定は1回限りで一時金として支給されます。
 
【図表4】


 
ハローワーク インターネットサービス 基本手当について
 

具体的にいくら変わる?

続いて、64歳で退職したときと65歳で退職したときの差額を出してみます。上限額で比較します。
 
まず、基本手当日額は、図表5から64歳時の上限額は7096円、65歳時は29歳以下の表を適用するため6760円です。
 
【図表5】


 
厚生労働省 雇用保険の基本手当(失業給付)を受給される皆さまへ
 
次に、20年以上勤めて自己都合で退職すると仮定します。64歳時の給付日数は図表3より150日のため以下のとおりです。
 
7096円×150日=106万4400円
 
65歳で退職した場合、被保険者期間は1年以上なので図表4より50日分で計算すると、以下のとおりです。
 
6760円×50日分=33万8000円
106万4400円-33万8000円=72万6400円

 
約73万円もの差額が出ました。
 

65歳以上で退職するメリットは?

失業給付だけを比べた場合には、64歳までに退職した方がお得という結果が出ました。しかし、65歳以上で退職するメリットはあります。
 
まず、会社の健康保険に加入し続けられます。保険料は会社が折半してくれ、扶養家族の保険料負担がゼロになります。
 
また、2022年から在職定時改定が導入されました。これまでは65歳以降に会社に勤め厚生年金保険料を支払っていても、厚生年金被保険者の資格を喪失するまでは年金額は増額されませんでした。それが在職定時改定により年金額を毎年計算し直すようになったため、早期に厚生年金が増額されるようになったのです。
 
さらに、働き続けて年金の繰下げ受給をすれば年金が増額されます。75歳まで繰り下げれば、最大84%年金が増額されるのです。
 

まとめ

いつ退職するかは人それぞれです。しかし、退職時期を決める際には失業給付以外にも年金制度や健康保険、健康状態も考慮した方が良いかもしれません。
 
ぜひさまざまな要素を検討した上で、自分のライフスタイルに合った最適な退職時期を選択してください。
 

出典

ハローワーク インターネットサービス 基本手当について
ハローワーク インターネットサービス 基本手当の所定給付日数
厚生労働省 雇用保険の基本手当(失業給付)を受給される皆さまへ
厚生労働省 年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました
 
執筆者:田邉史
二級ファイナンシャルプランニング技能士

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