年金では暮らせないシニアの貧困世帯。受けられる給付金や、利用できる支援制度は?
配信日: 2023.03.12 更新日: 2023.03.13
しかし、この2000万円不足の標準モデルは、夫が厚生年金に加入していた人で、夫婦で19万1880円/月の年金収入がある場合です。厚生年金の期間が短い人や低賃金だった人、自営業者などの場合、年金額は上記よりも少なくなりますので、貧困に陥る危険性が高まります。そのとき、利用できる支援制度にはどんなものがあるのでしょうか。
執筆者:宿輪德幸(しゅくわ のりゆき)
CFP(R)認定者、行政書士
宅地建物取引士試験合格者、損害保険代理店特級資格、自動車整備士3級
相続専門の行政書士、FP事務所です。書類の作成だけでなく、FPの知識を生かしトータルなアドバイスをご提供。特に資産活用、相続トラブル予防のため積極的に「民事信託(家族信託)」を取り扱い、長崎県では先駆的存在となっている。
また、離れて住む親御さんの認知症対策、相続対策をご心配の方のために、Web会議室を設置。
資料を画面共有しながら納得がいくまでの面談で、納得のGOALを目指します。
地域の皆様のかかりつけ法律家を目指し奮闘中!!
https://www.shukuwa.com/
単身高齢者のリスク
高齢となり、就業できなくなると資産を増やすことは困難になります。お金が足りないからといってアルバイトをすることもできず、保有資産を取り崩すしかありません。特に、単身となると貧困化のリスクが高まります。
例えば、夫が亡くなって妻の1人暮らしとなったとき、生活費は半分にはなりません。アパートの家賃は、住む人が一人でも二人でも同じです。二人暮らしから単身となったとき、生活費はそれまでの7割程度になることが多いようです。
年金生活者支援給付金
年金生活者支援給付金は、公的年金などや所得が一定金額以下の年金生活者の年金に上乗せして支給される給付金です。年金事務所での申請が必要ですので、受給要件を満たしている場合は、忘れずに手続きをしてください。
年金生活者支援給付金の種類により、要件などは異なります。
【図表1】
対象 | 前年の所得 | その他条件 | 給付額 |
---|---|---|---|
65歳以上の老齢基礎年金受給者 | 公的年金などの収入金額とその他の所得の合計額が88万1200円以下 | 同一世帯の全員が市町村民税非課税。 障害年金・遺族年金などの非課税収入は含まない。 |
月額5020円を基準に、保険料納付済期間などに応じて算出。(※1) |
障害基礎年金受給者 | 472万1000円以下 | 障害年金などの非課税収入は所得に含まない。 扶養親族などの数に応じて増額。 |
障害等級により 2級5020円/月 1級6275円/月 |
遺族基礎年金受給者 | 472万1000円以下 | 遺族年金などの非課税収入は所得に含まない。 扶養親族などの数に応じて増額。 |
5020円/月 2人以上の子が遺族基礎年金を受給している場合、5020円を子の数で割った金額が給付される。 |
※筆者作成
(※1)老齢年金生活者支援給付金額は、次の(1)と(2)の合計額
(1)保険料納付済期間に基づく金額(月額)
= 5020円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
(2)保険料免除期間に基づく金額(月額)
= 1万802円 × 保険料免除期間 / 被保険者月数480月
ただし、前年の年金収入とその他の所得の合計が78万1200円超~88万1200円以下の場合には、(1)に一定割合(※2)を乗じた「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
(※2)一定割合=(88万1200円-前年の年金収入と所得の合計額)÷10万円
例)納付済月数300ヶ月、全額免除月数48ヶ月の場合の老齢年金生活者支援給付金額
5020円×300÷480月=3138円
1万802円×48÷480月=1080円
合計=3138円+1080円=4218円/月
厚生労働省の生活困窮者自立支援制度
高齢者の貧困問題は社会的にも大きな問題となっており、年金生活者支援給付金の他にも住宅や就労などに関する支援制度なども存在します。高齢者が尊厳を保ちながら暮らし続けるためには、これらの制度を利用しなければなりません。
平成27年4月からは、生活困窮者の支援制度が始まり、生活全般にわたる困り事の相談窓口が全国に設置されています。「生活自立支援センター」「自立支援相談窓口」「生活自立相談窓口」・・・など、名称はさまざまですが、全国各地に設置されていますので、どのような支援が受けられるのか相談してみてください。
特に高齢者の場合、つらい状況を我慢してしまう人も多いので、離れて暮らしている場合には家族や周りの方の注意が必要になります。
参考
厚生労働省 年金生活者支援給付金制度について
執筆者:宿輪德幸
CFP(R)認定者、行政書士