更新日: 2023.03.25 その他老後

75歳の親が倒れた…「入院費」はどれくらいかかる? 利用できる「3つの制度」を紹介

75歳の親が倒れた…「入院費」はどれくらいかかる? 利用できる「3つの制度」を紹介
高齢になると、急な病気やけがで入院するリスクが高まります。そのため、「親にもしものことがあったとき、入院費はいくらくらいになるだろうか」と気になっている人も多いかもしれません。
 
本記事では、「75歳の親が倒れた」というようなとき、入院費はどれくらいかかるのか、そして医療費の負担を軽減する制度にどのようなものがあるか、分かりやすく解説していきます。
辻本剛士

執筆者:辻本剛士(つじもと つよし)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、宅地建物取引士、証券外務員2種

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1日当たりの入院費用の平均は2万700円

公益財団法人生命保険文化センターの調査によると、入院費用のうち1日当たりの自己負担額は平均2万700円となっています。最も多かったのが「1万円~1万5000円未満」の23.3%、2番目は「2万円~3万円未満」で16.0%です。
 
【図表1】


 
公益財団法人生命保険文化センター 1日当たりの入院費用(自己負担額)はどれくらい?
 
「5000円未満」から「1万円~1万5000円未満」までを合わせると約60%を占めていることから、大半の場合は入院費が1万5000円以内に収まっていることが分かります。
 

平均入院日数は「5~7日」

次に、平均入院日数をみていきます。同じく生命保険文化センターの「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査《速報版》」によると、入院経験がある人の入院日数は平均 17.7 日でした。最も多かったのが「5~7日」が27.5%、2番目は「8~14日」が24.1%となっています。
 
【図表2】


 
公益財団法人生命保険文化センター 2022(令和4)年度 生活保障に関する調査《速報版》
 
「5日未満」と「5~7日」で約50%を占めていることから、約半数の人が1週間未満で退院していることが見て取れます。
 

医療費負担を軽減するために知っておきたい公的医療制度

仮に入院費を中央値の1万5000円、入院日数も中央値の7日とした場合、総額10万5000円という金額になります。75歳のように高齢となれば入院がさらに長期化し、費用がさらに膨らむケースも珍しくないでしょう。
 
突発的に発生した高額費用を支払うのが難しいという場合もあるかもしれません。そこでここからは、医療費負担を軽減するために活用できる制度にどのようなものがあるか、紹介していきます。
 

高額療養費制度

高額療養費制度とは、病院や薬局の窓口で支払った費用が1ヶ月(月の初めから終わりまで)で自己負担の上限額を超えた場合に、超過した分が返ってくる制度です。自己負担の上限額は、図表3のように年齢や所得で異なります。
 
【図表3】


 
厚生労働省 高齢者医療制度
 
健康保険に加入していれば、病気やけがで治療を受けた場合、基本的に医療費は1~3割が自己負担です。通院や入院が重なるなどの理由で、1ヶ月に要した医療費が自己負担の上限額を超えることがあります。この超えた部分を後日、健康保険組合などの保険者に申請し、返金してもらうのが高額療養費制度の仕組みです。
 
例えば、75歳のAさんは、「負担割合2割」、「1ヶ月の医療費(手術入院)が100万円」だとします。
 
Aさんの負担額は2割なので自己負担額は20万円です。この場合、Aさんの上限額は5万7600円なので、戻ってくる金額は「20万円-5万7600円」、つまり14万2400円が高額療養費制度によって戻ってきます。
 

限度額適用認定証

「限度額適用認定証」とは、あらかじめ「限度額適用認定証」の交付を受け、医療機関に提示することにより、窓口での支払いが自己負担の上限額までとなる制度です。
 
先ほど触れたとおり、高額療養費制度は自己負担の上限額を超えた部分が戻ってくるとはいえ、いったんは医療費を支払う必要があるため、一時的に経済的な負担が増えてしまいます。
 
「限度額適用認定証」を提示すれば、基本的に医療費の支払いは限度額上限までとなるため、「治療費が高額になるのでは」などと心配をせず受診することができるでしょう。
 

高額医療費貸付制度

「高額医療費貸付制度」は、高額療養費支給額の8~9割相当を無利子で貸付してくれる制度です。
 
急なけがや入院により手続きが間に合わず、限度額認定証の活用ができない場合には、いったん医療費の全額を支払わなければなりません。この制度を活用すれば、貸付金を医療費の返済に充てられるため、一時的に経済負担を軽減できます。
 
全国健康保険協会に加入している場合は「高額療養費貸付借用書」や「医療費請求書」などの必要書類を管轄支部に提出して受理されれば、貸付を受けることができます。その後は、高額療養費として戻ってきた給付金を返済に充てることになります。
 

公的医療制度を知り、もしものときに備えよう

本記事では、「75歳の親が倒れた」というようなとき、医療費負担が軽減できる制度について解説しました。高額療養費制度、限度額適用認定証、高額医療費貸付制度をうまく活用することで、医療費負担を最小限に抑えることができるかもしれません。
 
もしものときに備えて、本記事で紹介したポイントを踏まえ、少しでも安心して治療を受けられるよう、それぞれの制度の基本的な仕組みについて、しっかり理解しておきましょう。
 

出典

公益財団法人生命保険文化センター 1日あたりの入院費用(自己負担額)はどれくらい?
公益財団法人生命保険文化センター 2022(令和4)年度 生活保障に関する調査《速報版》
厚生労働省 高齢者医療制度 医療費の自己負担について
全国健康保険協会 医療費が高額になりそうなとき(限度額適用認定)
全国健康保険協会 高額医療費貸付制度
 
執筆者:辻本剛士
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、宅地建物取引士、証券外務員2種

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