更新日: 2023.04.03 定年・退職
中小企業勤め「中退共」の掛け金が最大額に設定されていた場合、将来受け取る退職金はいくら?
ここでは、中退共制度の概要や、さまざまなメリット、退職金支給額などについて解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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中退共制度の加入条件や加入状況はどうなのか
中退共制度の加入は、業種ごとに以下を満たすことが必要です。「一般業種(製造業・建設業等)_常用従業員数300人以下または資本金・出資金3億円以下」「卸売業_同100人以下または同1億円以下」「サービス業_同100人以下または同5000万円以下」「小売業_同50人以下または同5000万円以下」と、ほとんどの中小企業は加入でき、個人事業主も加入できます。
中退共では原則として従業員全員の加入が条件ですが、次の従業員は加入の必要はありません。「期間雇用従業員」「季節的業務で雇用する従業員」「試用期間中の従業員」「短時間労働者」「休職期間中の者」などです。中退共制度の加入状況は令和5年1月末現在、加入企業数が37万9337所、加入している従業員数は362万3064人で、運用資産額は約5.4兆円に上っています。
中退共制度に加入するメリットとは
それでは、中小企業などが中退共制度に加入するメリットをみてみましょう。
・国が掛け金の一部を助成
中退共制度では、国が掛け金の一部を助成します。一部例外を除き、新規加入の場合、掛け金の2分の1の額(従業員ごと上限5000円)を加入後4ヶ月目から1年間、また、月額1万8000円以下の掛け金を増額変更する場合、増額分の3分の1の額を1年間、国が助成するのです。また、短時間労働者が加入する場合、新規加入時の助成額には上乗せもあります。
・税制上のメリット
掛け金は法人の場合は損金として、また、個人事業の場合は必要経費に算入でき、全額非課税となります。
・幅広い掛け金から選択可能
掛け金月額は、5000~9000円までは1000円刻みで設定される5種類、1~3万円までは2000円刻みの11種類で、合計16種類です。また、パートタイマーなどは、特例として2000円、3000円、4000円でも加入できます。幅広い掛け金区分から無理ない金額を選べ、金額の変更も簡単です。
・退職金納付期間の通算が可能
中退共制度は、納付実績を通算することができます。「前の企業で掛け金を12ヶ月以上納付」「前の企業を退職後、3年以内に中退共制度に加入」などの条件を満たせば、前の企業での掛け金納付を新しい企業での納付に通算することができるのです。また、中退共制度だけではなく、「特定業種退職金共済制度」や「特定退職金共済制度」との通算もできます。
退職金の額はどれくらいになるのか
退職金は基本退職金と付加退職金の合計になります。掛け金の納付月数が11ヶ月以下の場合、退職金は支給されません。
42ヶ月以下の場合は、基本退職金のみの支給ですが、43ヶ月以上納付した場合は基本退職金に加え、付加退職金も加算されます。基本退職金額は、納付月額と納付月数に応じて法令で固定的に定めた金額です。一方、付加退職金は、掛け金の運用状況などに応じて定められる金額です。
それでは、掛け金が最大の3万円で納付した場合、どのくらいの退職金額が支給されるのか、平成14年11月以降の掛け金に適用される金額表で基本退職金をみてみましょう。
納付期間が1年(12ヶ月)では支給額は10万8000円(掛け金総額36万円)と掛け金総額を下回る水準です。2年(24ヶ月)は同72万円(同72万円)と掛け金総額と同水準。
一方、5年(60ヶ月)は同182万4600円(同180万円)、20年(240ヶ月)は同799万9800円(同720万円)と掛け金総額を上回ります。さらに、30年(360ヶ月)では同1263万9300円(同1080万円)、40年(480ヶ月)で同1775万3700円(同1440万円)と、納付期間が長期になるほど有利になることが分かります。
人材確保に大きな頼りになる中退共制度の導入を検討しよう
現在、多くの企業では人材不足の状況が続いており、業界によっては、やむをえず休業せざるをえないところもあります。また、今後は少子高齢化でますます人材確保が難しくなるでしょう。そうしたなか、継続的に人材を確保するためには、従業員の福利厚生面を充実させることは不可欠です。
中小企業は中退共制度を活用することで充実した退職金制度を手軽に導入することができます。国が運用しているので、制度として安心で、さまざまな助成や税制上の優遇が受けられるのもうれしいポイントです。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部