更新日: 2019.01.10 介護
親の介護で争族発生!介護をすれば財産は多くもらえるはず?
もし、将来ご自身が介護状態になったことで、子どもたちが争いをはじめたら?
そんな悲しい状況にならないための、ヒントをお伝えします。
Text:一橋香織(ひとつばし かおり)
相続診断士事務所
笑顔相続サロン代表、全国相続診断士会会長、東京相続診断士会会長
アフィリエイティッドファイナンシャルプランナー【AFP】、2級ファイナンシャルプランニング技能士【国家資格】 、相続診断士、終活カウンセラー上級、家族信託コーディネーター
外資系金融機関を経てFPに転身。頼れるマネードクターとしてこれまで2000件以上の 相続・お金の悩みを解決した実績を持つ。講演・メディア出演(朝日テレビ「たけしのTVタックル」TBSテレビ「Nスタ」「ビビット」など)多数。
日本初のシステムノート型システムダイアリー㈱の『エンディングノート』監修。著書「家族に迷惑をかけたくなければ相続の準備は今すぐしなさい」PHP出版はアマゾン相続部門1位・丸善本店ビジネス部門で1位を獲得する。近著『終活・相続の便利帳』枻出版社。笑顔相続を普及するため専門家を育成する『笑顔相続塾』を主宰。連絡先:https://egao-souzoku.com/
親を介護すれば寄与分は認められるのか?
争族の現場でよく繰り広げられる『私は親の介護を長年してきたから、他の兄弟より沢山の財産を相続する権利があるはず』というセリフ。
親と同居し、お嫁さんなどが介護をしているケースではそういいたくなる気持ちもわかります。ただ、残念なことに介護をしても財産が多くもらえるわけではないのです。
民法では、「寄与分」といって親の事業に大きく貢献したり、親の病気の看護や介護をするなど、亡くなった人の財産を増やし、維持することに特別な貢献をした相続人には、貢献度合いに応じて多めに財産をもらうことが認められています。(民法904条の2)
その一方で、「直系の血族、兄弟姉妹はお互いに扶養する義務があり、家庭裁判所は、特別の事情があると認めたときには、三親等内の血族や姻族に対して、扶養の義務を負わせることができる」(民法877条)とも規定されています。
要するに、財産を多めにもらえる「寄与分」が認められるのは、通常の扶養の範囲を超え、介護で会社を辞めるなど、よほど大きく貢献しなくてはいけないということです。
そして、認められたとしてもいくらもらえるかは定かではありませんし、相続分に大きな差が生まれるわけではありません。
そのことが原因で、介護している子どもと介護をしていない子どもとの間で争族が勃発することは想像に難くないでしょう。
相続を争族にしないためにしておきたい準備
では、黙って争族になるのを放っておけばいいのでしょうか?いえいえ、親だからこそできる準備・元気だからこそできる準備があります。
まず、当たり前のようでできていない対策に親子間での話し合いがあります。日本人は「臭い物には蓋」的な発想で、問題を先送りする方が多いのですが、介護の問題や相続の問題はツケを後世に遺すだけで何もいいことはありません。
遺された配偶者や子どもたちが自分亡きあとで争わないためには、日頃から誰に何をどういう理由で相続させたいと思っているかをしっかりと話し合い、伝える義務があると思います。
例えば、「長男は長年、自分たちと同居をし、嫁が献身的に介護をしてくれている。兄弟への愛情に差はないが、貢献してくれたことに対する感謝の気持ちを少し多めに財産を分けることで表したい。
そのことで兄弟が争うことなく、想いを理解して欲しい」
など。親が自分の想いをしっかりと元気なうちに伝えることで争いの芽を摘み取っていくことはとても大切です。
その上で、想いを法的にもきちんとした形で子どもたちに守らせたいのであれば『公正証書遺言』を準備し、誰に何を相続させるのか・させたいのかを記しましょう。
もちろん、長男の嫁などに財産を残したい場合も遺言は有効な手段の一つとなります。
40年ぶりの民法改正で「寄与分」見直しか?
平成30年通常国会に提出される予定の相続法改正案で、相続人でない親族にも寄与分に応じて相続財産を取得する権利を認めることが検討されています。
これまで、相続人である息子の嫁や内縁の妻に財産を残す場合は、前述の公正証書遺言などの遺言を作成する方法がとられてきました。
しかし、この法案が成立すると遺言がなくても寄与分が認められ財産を取得することができるようになります。
まだ、詳細については決定されていませんが、今後どのような展開になるのか注目したいですね。
人生100年時代といわれる昨今、揉めないための相続対策に介護問題は欠かせない項目となりそうです。
Text:一橋 香織(ひとつばし かおり)
相続診断士事務所 笑顔相続サロン代表、全国相続診断士会会長、東京相続診断士会会長