更新日: 2023.04.07 セカンドライフ

【制度改正】後期高齢者医療制度の保険料はどう変わる?

執筆者 : 新美昌也

【制度改正】後期高齢者医療制度の保険料はどう変わる?
令和5年2月10日、75歳以上が加入する「後期高齢者医療制度」の保険料引き上げや、「出産育児一時金」の増額などを柱とする健康保険法などの改正案が閣議決定されました。
 
昨年10月に一定以上の所得がある後期高齢者の医療費窓口負担が、1割から2割に引き上げられたばかりですが、改正案によると後期高齢者医療制度の加入者が、所得などに応じて支払う保険料の上限額が2024年度と25年度に段階的に引き上げられます。

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新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

後期高齢者医療制度とは

公的医療保険には、保険者によって、国民健康保険(都道府県や市区町村、国民健康保険組合)、健康保険(健康保険組合や全国健康保険協会)、共済組合(各共済組合)、後期高齢者医療制度(市区町村が加入する後期高齢者医療広域連合)があり、いずれかに加入します。
 
後期高齢者医療制度は、75歳以上の人(65歳から74歳までで一定の障害の状態にあると後期高齢者医療広域連合から認定を受けた人)が加入する公的医療保険です。勤めているかどうかにかかわらず、75歳になるとそれまで加入していた医療保険(国保・健康保険・共済など)から自動的に後期高齢者医療制度へ加入することになります。
 

保険料の仕組み

現行、医療費から窓口で支払う患者負担額(所得に応じて1~3割)を引いた額の約1割を75歳以上の人からの保険料で賄っています。残りの9割のうち、約5割は公費、約4割は現役世代の後期高齢者支援金からなっています。
 
保険料は世帯単位ではなく個人単位でかかります。保険料額は、被保険者全員が均等に負担する「均等割額」と被保険者の前年の所得に応じて負担する「所得割額」の合計額となります。
 
2年に一度、現役世代人口の減少による増加分を高齢者と現役世代で折半するように高齢者負担が見直されています。令和4・5年度(全国平均)の「均等割額」は4万7777円、「所得割率」は9.34%、平均保険料額は被保険者1人当たり年額7万7663円となる見込みです。
 
保険料は、お住まいの市区町村に納めます。保険料の納め方は、公的年金の受給額が年額18万円以上の人は年金からの引き落とし(特別徴収)、それ以外の人は納付書等により納付(普通徴収)します。なお、現行、保険料の賦課限度額は年額66万円となっています。
 

高齢者負担率の見直し

現行、2年に一度、現役世代の人口減少による増加分を高齢者と現役世代で折半するように高齢者負担率を見直しています。しかし、この設定方法は、現役世代の減少のみに着目しているため、制度導入以降、現役世代の負担(後期高齢者医療支援金)が大きく増加しています。
 
具体的には、制度創設時の2008年度と2022年度を比べると、後期高齢者1人当たりの保険料は約1.2倍の増加に対して、現役世代1人当たりの後期高齢者支援金は約1.7倍に増加しています。
 
この傾向は2025年に団塊の世代が後期高齢者になるまで続きます。一方、長期的には、高齢者人口の減少局面においても、高齢者負担率が上昇し続けてしまう構造になっています。
 
そこで、高齢者世代・現役世代それぞれの人口動態に対処できる持続可能な仕組みとするとともに、当面の現役世代の負担上昇を抑制するため、介護保険を参考に、後期高齢者1人当たり保険料と現役世代1人当たり後期高齢者支援金の伸び率が2024年度以降同じになるよう、2022・2023年度は11.72%に高齢者負担率を引き上げます。
 

高齢者の能力に応じた保険料負担の見直し

今回の制度改正による、2024年度からの新たな負担に関して、2024・2025年度の保険料については、年収153万円以上の被保険者を対象に現在1対1となっている均等割総額と所得割総額の比率のうち、所得割率を引き上げます。
 
年収約1000万円を超える人を対象とする賦課限度額(保険料負担の年間上限額)の引き上げは、令和6年度は73万円、令和7年度は80万円と段階的に実施されます。
 
なお、所得割が賦課されない153万未満の低所得者は、制度改正に伴う増加が生じないよう対応します。また、 所得に応じて負担する所得割は、年金収入153万~211万円相当以下の人を対象に、2024年度は制度改正に伴う増加が生じないよう対応します。
 
新制度に移行後は、最終的に後期高齢者の約4割(700万人)が対象になります。
 

後期高齢者1人当たり保険料額(2年間)への影響(収入別)

高齢者の医療費増加に伴い、現役世代の負担が重くなっていることから、今回の法案では、比較的収入が高い高齢者に応分の負担を求めています。
 
厚生労働省の試算によると、2024年度の保険料額は、年収200万円の人は年8万6800円(制度改正影響なし)、年収400万円の人は1万4000円増の年23万1300円、年収1100万円の人は6万円増の73万円(賦課限度額)となっています。
 
また、2025年度の保険料額は、年収200万円の人は3900円増の年9万700円、年収400万円に人は年23万1300円(制度改正影響なし)、年収1100万円の人は7万円増の80万円(賦課限度額)となっています。
 
ちなみに改正がない場合、2024・2025年度の保険料額は、年収200万円の人は年8万6800円、年収400万円の人は年21万7300円、年収1100万円の人は67万円(賦課限度額)となります。
 
〈参考〉2022・2023年度の保険料
年収200万円の人は年8万2100円、年収400万円の人は20万5600円、年収1100万円の人は66万円(賦課限度額)です。今回の制度改正により、いくつか変更点があります。家計に影響のある内容も含まれますので、理解しておきましょう。
 

出典

厚生労働省 後期高齢者医療制度の令和4・5年度の保険料率について
厚生労働省 社会保障審議会(医療保険部会)
厚生労働省 医療保険制度改革について
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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