更新日: 2023.04.27 その他老後

【基本は1/2!】熟年離婚後の財産分与を徹底解説!

【基本は1/2!】熟年離婚後の財産分与を徹底解説!
離婚した夫婦のうち、約5組に1組が熟年離婚なのをご存じですか? 昭和25年以降、同居期間が20年以上で離婚に至った夫婦は、年々上昇傾向にあり、令和2年には21.55%となっています。
 
熟年離婚をする上で気になるのが財産分与。財産分与とは、夫婦が共同生活を送る中で築いた財産を、公平に分け合う制度です。
 
法務省の「財産分与を中心とした離婚に関する実態調査結果の概要」によると、財産分与の取り決めをしなかった方が62.7%となっています。理由として、55.8%の方が「請求/支払いをする必要がないと思った」と回答しています。
 
熟年離婚する夫婦は、結婚生活が長いため、築いた財産も多く、財産分与でまとまった金額を得られる可能性があります。まとまった金額を得られれば、離婚後の生活設計も立てやすくなるでしょう。
 
今回は、熟年離婚の財産分与で特に焦点となる、年金、持ち家、退職金の3つについてご紹介します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

財産分与の対象になる財産とならない財産

財産分与の対象になる財産と、ならない財産があります。対象になる財産を共有財産、ならない財産を特有財産と言います。具体例を挙げて見ていきましょう。
 

共有財産

共有財産は、婚姻している間に、夫婦の協力で得た財産です。預貯金や株式、建物、土地、貴金属、民間の年金、生命保険などが挙げられます。夫婦のどちらかが名義になっている財産でも、夫婦の協力で築いた財産であれば、財産分与の対象となります。
 
例えば、夫の収入で建物を購入し、夫の単独名義になっている場合でも、妻が家事をして夫を支えていたときは、実質的に夫婦の財産と考えられます。
 

特有財産

特有財産は、財産分与で分けられないものです。例えば、結婚する前から各自が所有していたものが挙げられます。婚姻中に一方が相続や財産で得たもの、一般的に考えて固有の財産とみられる衣類、個人的な借金なども特有財産となります。
 

熟年離婚したときの年金の分け方は2パターン

熟年離婚したときには、年金も財産分与の対象となります。婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割し、2人で分けられます。
 
注意する点は、分割されるのは、厚生年金保険料の納付記録であり、国民年金の部分は分割されない点です。年金の分け方には次の2パターンあります。
 

(1)合意分割

合意分割とは、夫婦からの請求によって厚生年金を分割する方法です。どれくらいの割合で分けるかは、夫婦の話し合いで決められます。
 
もし、まとまらない場合には、裁判所が決めた割合となります。離婚した日の翌日から2年以内が請求期間となります。一日でも過ぎてしまうと請求できないので、気をつけましょう。
 

(2)3号分割

3号分割とは、会社員の妻である専業主婦といった国民年金第3号被保険者の方からの請求で、年金を分割する方法です。夫婦の合意の必要なく、相手方の厚生年金記録を2分の1ずつ分割できます。
 
もし、分割される方が障害厚生年金の受給者で、分割請求の対象となる期間を年金額の基礎としている場合には、認められません。
 

熟年離婚したときの持ち家の財産分与

持ち家も財産分与の対象となります。持ち家をどうするかで財産分与の方法が変わるため、パターンごとに見ていきましょう。
 

持ち家を売却する

1つ目が持ち家を売却するパターンです。夫婦のどちらも住まないときや、住宅よりも現金が必要なときが当てはまります。
 
持ち家の価値は、不動産価格から住宅ローン残高を引いた価格となります。不動産価格が住宅ローン残高を上回っていることをアンダーローンといい、持ち家を売却し、住宅ローンを返済した残高を夫婦で分けます。
 
もし、売却した場合、離婚後に住み続けることはできません。売却のタイミングが適切かはわからないため、損してしまう可能性もあります。
 

一方が持ち家を取得する

2つ目が、一方が持ち家を取得するパターンです。現在の不動産価格を出し、家を取得する代わりに、もう一方に、評価額の半分を現金で分与します。
 
熟年離婚の場合、専業主婦(主夫)だった方が引っ越し先を探すのは難しく、「家に残りたい」と要望することも珍しくはありません。
 

住宅ローンが残っている場合の財産分与

前提として、住宅ローンの残高が評価額を上回るオーバーローンの場合、財産分与の対象にはなりません。まずは鑑定士に依頼し、正確な評価額を出してもらうようにしましょう。
 
持ち家の所有者と住宅ローンの名義人が一致しているときには、所有者が住宅ローンの返済を続ければ、住み続けることができます。
 
持ち家の所有者と住宅ローンの名義人が異なる場合は、持ち家の所有者は、住宅ローンの名義人が支払っているか、監視する必要があります。
 
もし、ローンの支払いが滞った場合、抵当権を持っている金融機関に家を差し押さえられる可能性があるからです。住宅ローンを借り換え、家の所有者に住宅ローンの名義人を変更しておくと安心です。
 
持ち家の財産分与は、不動産価格や住宅ローン残高を把握してから、どうするかを決めるのがいいでしょう。
 

熟年離婚したときの退職金の財産分与

財産分与できる夫婦共有の財産として認められるものに、退職金があります。退職金は、すでに支給されたのか、将来支給される予定なのかによって、財産分与の方法が異なります。
 
すでに支払われていて、自動車や預金など、別の財産に変えている場合には、変えた後の財産を分けることになります。住宅ローンの返済に充てた、生活費として使ったという場合には、財産が消えてしまっているため、財産分与できない可能性が高いです。
 
将来支給される予定の退職金は、退職するときにならないと受給できるかわからないため、請求が難しいと考えられます。
 
例外として、退職金の受給が確実な場合は、財産分与の対象となる可能性があります。金額は支給されるときにならないとわからないため、夫婦でよく話し合うことが大切です。
 

まとめ

基本は1/2で分ける財産分与ですが、当事者の話し合いで割合は変えられます。離婚後の生活を安定させるためにも、財産分与をうまく活用しましょう。
 
新たな気持ちで生活をスタートさせるには、後悔しないよう、よく話し合うことが大切です。持ち家の不動産価格や将来的に退職金が支給される可能性など、今からでも調べられることはあります。請求できる期間も2年と短いため、事前に準備しておきましょう。
 

出典

厚生労働省 人口動態統計特殊報告(令和4年度)
法務省 財産分与
法務省 財産分与を中心とした離婚に関する実態調査結果の概要
裁判所 財産分与請求調停
法務省 年金分割
日本年金機構 離婚時の厚生年金の分割(合意分割制度)
日本年金機構 離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)
法務省 財産分与制度に関する論点の検討
一般社団法人 全国住宅ローン救済・任意売却支援協会ー離婚したら住宅ローンはどうなる? ー
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集